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増加する「非一条校」とその人気をどうとらえるか

近年、中学受験が過熱し、首都圏などでは受験者が増加傾向にあります。さらにここ数年は地方にもその熱気が伝播しており、地方都市の中学校受験も増えつつあります。

それに合わせて、いわゆる「非一条校」(学校教育法第一条に該当しない学校)が増加し、そこへ通う選択をする生徒も増えています。

今回はこうした「非一条校」に関する内容をまとめたいと思います。

「非一条校」とは何か

先述のように、「非一条校」とは学校教育法の第一条の規定に基づかない学校のことです。

第一条 この法律で、学校とは、幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする。

学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条、「第1章 総則」

つまり、初等教育を行う機関であっても、文科省の規定するカリキュラムや基準を見たしていないものは「学校」とは認められない、ということです。

仮に、こうした学校に子供を通わせた場合、そのままでは「子に教育を受けさせる義務」を果たしていないと見なされます。

当然ながら、そうした「学校」に通う子供は履修すべきカリキュラムを修得していないとされるため、上級学校への進学をすることができません。

また、各種補助金が国庫から支出されないため、自己負担額が非常に高額になります。

以上のことから、通学をさせることを決心するには、非常にリスクの大きい制度ではありますが、一方でメリットもあります。

それは「一条校」と呼ばれる日本の教育機関にはない自由度の高さです。

現在、小中高生などの義務教育機関や中等教育機関に通う時期に通学する非一条校には大別すると二種類存在します。

その二つとは「インターナショナルスクール」と「フリースクール」です。

インターナショナルスクール

インターナショナルスクールに関して、その存在自体を知らないという人は少ないでしょう。

その多くは英語で授業を行い、高等部までを修了すると国際バカロレア資格(以下IB)という海外の大学進学資格を取得することが可能です。

インターナショナルスクールには一条校と非一条校が混在しています。

一条校の場合は日本国内の小中高の卒業資格が得られますし、IB認定を受けていれば国内、海外の大学の両方を進学先として検討することができます。

一方で非一条校の場合は国内の教育機関の卒業資格が得られないため、国内の進学や就職をする場合に問題となるケースが存在します。

インターナショナルスクールの多くは原籍校(児童生徒がもともと在籍していた学校)と連携をとっており、多くの自治体では原籍校への成績や活動状況の報告により、出席扱いをすることができます。
(履歴書上は一度も通っていない原籍校の名前を書く必要があるということです。)

高校の場合、インターナショナルスクールが一条校でない場合は通信制高校などに在籍する形を取ることも可能です。場合によっては提携している学校が存在することもあるようです。

ちなみに、類似の形態の学校として「ナショナルスクール」(民族学校)があります。

非一条校の民族学校としては朝鮮学校などが上げられますが、それ以外にも中華学校などが存在します。

フリースクール

もう一つが、不登校の生徒などを対象としたフリースクールです。

こちらは原則は非一条校で、インターナショナルスクール同様に原籍校とのやり取りを通じて出席を担保できるという制度が利用できるところも多いようです。

以前はこうしたフリースクールが存在するために不登校を助長している、といった論調で批判されるケースもあったようです。

しかし不登校が3%になろうとする時代において、ようやく市民権を得つつあります。

近年はこうしたフリースクール的な要素を含みつつ、様々な要因で周囲とのギャップを感じる子供や、公教育とは異なる指向性を持つ教育を受けさせたいと考える世帯が通わせる「オルタナティブスクール」と呼ばれる施設も増加しています。

高校においては、N高校などの広域通信制やゼロ高校などの非一条校でありながら一条校と連携できる仕組みが10年近く前から一般化していましたが、小中学校でもそうした制度の整備が進みつつあるようです。

7割しかターゲットにできない前提とするべき

東京都の私立中学進学率は25%と言われています。これは公立学校とは異なる教育や体験をさせたいという割合です。

私立中学校の数が少ない地方ではこの割合は当然下がりますが、潜在的に、あるいは経済的要因を除外すればこれぐらいの割合の人達は公立学校ではない選択をする、ということでしょう。

また、中学校の不登校率が4%を超えていることを考慮すると、全体の約3割は公立学校では対応の難しい層が最低でも3割は存在するということになります。

これまで、教育現場はそうした3割へのケアのために疲弊してきました。そもそもの公教育のせいで設計自体が、マイノリティを全て対応するために考慮されてはいないからです。

かつては「7割に合わせよ」と指導することが社会的に許容されていましたし、それを強要するだけの権威が教員に存在しました。

それを受け入れられなくなった社会において、こうした非一条校の存在は不可欠ですし、志望者が増加するのも必然でしょう。

非一条校をいつまで「認可外」の取り扱いとするか

非一条校の課題は、補助金を受けていないために通わせるための費用負担が大きいことです。

インターナショナルスクールならばまだしも、フリースクールの費用負担は所得の低い家庭においては大きな問題となります。

こうした非一条校に対してどのように国庫補助を導入していくかは検討していく必要があるでしょう。

特に、最近は東京都のアウトリーチ事業への委託に関わる助成金などの問題も顕在化しており、透明性をいかに保つかは非常に重要です。

また、補助を受けたことでその独自性を失うことも懸念されるため、どこまで自由性を担保しつつ、補助を充実させていくかというバランスが課題となるでしょう。

とはいえ、もはや一定数の支持を受け、現実に学校として機能している機関を「認可外」のまま放置することはあまりに無責任でしょう。

社会全体でこうした非一条校の扱いをもっと議論する必要があるのではないでしょうか。


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