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教育実習におけるハラスメントの問題は教育業界の体質が影響している可能性がある

先日、高知県において教育実習生が実習先の高校で担当教員からハラスメントを受けたことで記者会見を行った件が報道されていました。

ハラスメント被害を訴えたのは22歳の女子大学生で、高知市内の県立高校において教育実習を行っているときに繰り返しハラスメントに当たる言動を受けたということのようです。

詳しいハラスメントの内容

ハラスメントは具体的には以下のようなものが行われたということです。

  • 作成した指導案を助言も無いまま何度もやり直しを指示された

  • 1日の実習時間が13時間に及ぶ日があった

  • 帰宅後も深夜まで作業を行わざるを得ない日が続いた

  • 「自己評価が高すぎる。新入社員として来ていたら3日でくびを切る。帰れ」

  • 「帰れといったら帰るのか。俺は面倒を見たくない。勝手にしろ」

  • 「周りにちやほやされて裸の王様になっている」

これだけを読むと正直なところ、常軌を逸した言動と言っても過言ではないでしょう。

もちろん、これは被害にあった学生の主張であり、どこまでが正確かというのは不明ですが、このレベルの叱責であれば十分にハラスメントと言えるでしょう。

教育業界と教育実習という仕組みがハラスメントを生みやすい環境となっている

そもそも教育実習という制度はハラスメントを生みやすい環境となっています。

実習生の単位取得の可否は指導教官の胸先三寸な上に、生徒の前で教員としてふるまうことを求められるため、どうしても指導教官は厳しく指導をします。

また、そもそも教員自身が労働時間に関してルーズなケースが多く、時間外にかかる準備をするように指示をすることも多々あります。

それに加えて、労働者ではないため労働法規に守られていないこと、大学側も次年度以降の実習生の受け入れ先と揉めたくないという事情もあり、実習生は非常に弱い立場であることも原因となっています。

さらに、教員にならない、採用試験を受けないならば実習を受け入れないといった考えの現場教員も少なくなく、そうした現場の空気感も影響している可能性はあるでしょう。

ハラスメント耐性の無い人間が向いていないという現実

現在の教員はかつてのような権威を失いました。

その結果、正しい、真っ当な指導を行ったとしても、保護者や生徒から様々なクレームを受けることがあります。

そうした場合に管理職はそうしたトラブルでも防波堤とならないことも多く、加えて部活動や不要に思える書類業務など、時間内に終えることができないほどの業務量を抱えています。

心の病や諸事情により教員の休職、退職は増加しており、ハラスメント耐性の無い人はもたない職場であるのも事実です。

今回の件に関して言えば、当然ながらハラスメントを行った側が100%悪いのは間違いありません。

しかし、一方でこうした実習中のハラスメントに対して耐性のある、悪く言えば鈍感な人間でなければ教員が務まらないという事情も、こうしたハラスメントを助長している可能性はあるでしょう。
(もちろんハラスメントを正当化することはできませんが)

教育実習という制度そのものを見直す時期

現状において、教員免許を取得するためには必ず教育実習を必要です。
(高校工業などの例外はあります)

そして、この実習は内諾を1年以上前に申し込み、その上で事前の研修や説明会に参加をしなければなりません。

これがハードルになり、教員免許を諦める社会人も多いようです。

また、実習先で教員の働き方を見て幻滅し、教員志望から民間や行政職に切り替える学生も少なくありません。

こうした状況を考慮すると、現行の教育実習制度はすでに制度疲労を起こしているようにも見えるのです。

もちろん、今回の事件に関しては仮に事実とすれば担当教員に責任があるのは間違いありません。

しかし、教育業界全体の体質そのものがこうした実習生へのハラスメントを許容しているということを、教育業界に関わる全ての人間が反省すべきこととも思うのです。

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