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むしろ「学歴社会」は加速させるべき

「日本は学歴社会である」と世間一般で言われています。

実際、大学の進学率はすでに50%を超えていて、現役世代の2人に1人は学士の時代になるのもそう遠い未来ではないため、確かに「学歴社会」化しているように見えます。

そんな中、「学歴社会」に対する批判は根強いものがあります。

学歴では人間の能力は測れない、偏差値のような数字で輪切りをすることは非人道的だ、などの批判はリアル、ネットを問わず目にする機会も少なくありません。

学歴社会の国内外の状況を踏まえて考察していきたいと思います。

欧米こそ「超・学歴社会」

欧米は実力主義で、学歴のような本質とは異なる試験の点数で人間を測ったりしない、という幻想を抱く人は多いようです。

そうした言葉を面談中に生徒や保護者からはよく聞きますし、場合によっては同業者から聞いた経験もあります。

しかし、実際には欧米諸国の多くは日本よりもはるかに学歴重視の社会です。

アメリカの場合、有名大学である一部を除けば大学へ入学をすることはそれほど難しくありません。

試験の内容も日本の高校生の標準的な学力があれば困ることがないレベルの問題です。(英語は国語と読み替えてください)

その代わり、大学を卒業するにはかなりの努力を要します、また在学中の経験やGPA(成績)、インターンシップなどが全て就職評価に繋がります。

アメリカでは新卒一括採用は存在しないため、経験者や専門知識、学位を持たない人を採用することがほとんどありません。

学位や専門性を持たない学生は評価されないという意味では非常に厳しい学歴社会と言えます。

ヨーロッパを見ると、ドイツは極端な学歴社会です。

ホワイトカラーの職業に就く場合には中等教育学校であるギムナジウムに進学し、大学を目指します。

逆に言えば、小学校の段階で将来の職業選択の幅がある程度決まるほど厳しい区別が存在します。

フランスでも知的階級の人はグランゼコールという養成機関に行く必要があり、たたき上げの出世という道はほとんどないようです。

日本における学位の軽視

一方で日本における学位はこれまで軽視される傾向がありました。

大学で何を学んだか、よりもどの大学に入学できたか、という大学入試というシステムのシグナリング効果に寄った判断基準を社会が認めていました。

かつては外交官などは外交官試験に合格して、東大中退をするようなケースもあったようです。

たたき上げで大企業の代表になった話は数多く聞きますし、そもそも大学院に行かなくとも専門就職ができた時代があったことは驚きです。

現在においても、多くの企業も学歴フィルターである程度の選別を行っていますし、文学部と経済学部と法学部の卒業生が全く同じ部署、職種に就くことも珍しいことではありません。

こうした日本の社会システムは大卒、学士、修士、博士という「学歴」を重視する「学歴社会」ではなく、どの大学を卒業(入学)したかという「学校歴」を重視する「学校歴社会」という方が自然でしょう。

国際化と専門性の低さが社会の停滞の原因

日本社会の成長が停滞してもう20年とも30年ともいわれています。

こうした状況の原因の一つとして、国際化によって幅広い知識無くして対応が難しくなり、一つの会社や業界でたたき上げで知識やノウハウを身に着けた人が戦力になりにくくなったことが考えられます。

また、博士などの高度な専門性を持つ人材を冷遇した結果、研究力や分析力などが国際競争についていけなくなったことも原因でしょう。

こうした危機的状況から脱する方法こそが、更なる「学歴社会」への移行ではないかと私は考えています。

大学院への進学率の向上と学び直し

大学入試でのシグナリング効果を重視せず、大学で何を学び、何を経験したかを重視する姿勢や、高度な専門性を持つ人材の育成のために大学院への進学率を向上させ、修士や博士の価値を高めることが必要でしょう。

また、社会に出た人々が再度学び直しをすることの機会を増やし、ハードルを下げることで日本全体の専門人材の母数を増やしていくことも同時に行うべきでしょう。

大学入試という狭い競争におけるシグナリング頼みで人材の有用性を判断せず、しっかりと専門性を持った人を評価する習慣を根付かせない限り、技術の流出(時すでに遅しですが)などを防ぐこともままならないでしょう。

だからこそ高大接続であり、推薦・総合型選抜

そうした時代だからこそ、高大接続によって大学での学ぶ姿勢や内容を高校生の身近なものとする必要があるでしょう。

また、点数を競うだけの一般入試だけでなく、大学で何をいかに学ぶかという意欲やマッチングを確認する入試形態の多様化に一定の効果があると思います。

ペーパーテストでの能力測定は一定の効果があります。しかし、それだけでは「学校歴」の重視から逃れることは難しいでしょう。

だからこそペーパーテスト以外の入試の比重が高くすることで、何を学んだか、学位を取得したかという「学歴」を重視する方向へ軸足を移すための準備が進んでいるように私は感じるのです。

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