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千葉の新規採用教員の奨学金肩代わり政策を文科省が許せば、小規模県の衰退を加速させる


全国的な教員不足

教員不足が全国的に問題になるなか、各地の自治体、教育委員会は様々な方法を駆使して採用試験の受験生確保に躍起になっています。

例えば6月に試験を前倒しにしたり、大学3年時に受験を可能にするなどの手法が実際に行われているようです。また、いまだに教員の遣り甲斐アピールの広報活動を行っているところもあると聞きます。

正直な話、これらの手法は教員不足に対し本質的な解決をもたらすものではないでしょう。現在の教員不足は試験が受けにくいからでも、教員のやりがいが少ないからでもありません。

働き方改革が進む昨今の他業種と比較して、あまりにもお金にならない時間外労働が多いこと、やりがい搾取体制となって労務管理が適正に行われていないことが主な原因です。

ここを改善しない限り、本質的に教員採用試験の受験者が増加することはないでしょう。また、教育学部以外の教員免許取得者も減少しており、そもそも免許取得を考える全体のパイ自体も縮小している状況において、採用段階の小手先だけの工夫で改善するとは到底言えないでしょう。

そんな中、千葉県が打って出たのが「奨学金肩代わり」です。

「奨学金肩代わり」

千葉県と千葉市の教育委員会は新規採用教員の奨学金を肩代わりして支払うというニュースが話題になっています。

 対象は県内の公立小中学校と特別支援学校に2024年度、新規採用された教員のうち、日本学生支援機構から無利子の第一種奨学金を借りている人です。

対象となるのは2024年度に新規採用をされた教員で、10年間に渡って300万円ほどを肩代わりするということのようです。

300万円の返済額は学生支援機構の第2種(有利子)の奨学金の場合、月額で6万円程度に相当すると考えられ、この制度を利用すれば国立大学ならばほぼ無料で通学することができる計算になります。

教員の取り合いに過ぎない

この政策そのものに対して私は否定するつもりはありません。かつては学校教員の採用者は一律で奨学金の返済を免除する制度も存在していました。

残念ながら私が大学に入るころにはその制度は中止されましたが、かつてのそれと同じであれば、貧しい家庭で学問で身を立てるために教員になるという進路設計も可能となるでしょう。

しかし今回の千葉県のものに関しては正直賛成をできません。なぜならばこれは財政的に余裕のある自治体が優先的にこの制度を採用することで、教員の志望者数に大きな格差がつく可能性があるからです。

首都圏や愛知、京阪神などの規模の大きな自治体であればこうした政策は可能かもしれませんが、人口100万人を切る県などではおそらく難しいでしょう。

これが各自治体で導入されれば、裕福な自治体とそうでない自治体とで大きな教育格差がつくことは間違いありません。

教育は国家政策

日本では戦前の反省からか、教育が自治体単位で管理される傾向があります。もちろんそれが小回りの利く教育行政の実現に繋がった側面もありますが、現状を見る限りではそこがボトルネックとなり大きな改革ができない状況にあるように見えます。

教育は国民国家を支える人材の育成を目的とする国家運営の根幹にかかわる事業であり、少なくとも行政サイドが都道府県によって教育環境を大きく変えるような政策を打つべきではありません。

その意味で今回の千葉県の政策に関しては国が介入する、千葉県の肩代わり策を差し止めるか、あるいは一律で全国で実施するかすべきだと思うのです。

これを許せば、人口規模が大きい広域自治体への人口集中を加速させることになり、地方の衰退、ひいては国土の荒廃を招く可能性すらあるのではないでしょうか。

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