生徒に教員の勤務時間を伝えることの重要性

以前、働き方改革に関しての私見を書きました。

日本社会全体が生産性の向上やライフワークバランスの調整、働き方改革の推進という方向に進む中で、遅まきながら学校教員の世界もその動きが進みつつあります。

とはいえ、依然として無休での働かせ放題システムである給特法の改正は進まず、公立学校の教員は長時間労働に励んでいます。

部活動の地域移行は中学校から進むようですが、こちらも道半ばといったところでしょう。

私学においては労基法の順守が原則ではあるものの、公立学校に習えの姿勢を取る法人は少なくない状況です。
(私学の場合、本気で労基署は動けば摘発できるはずですが)

生徒や保護者は教員の勤務時間を知らない

社会全体の空気感は変わりつつありますが、まだ労働問題に意識の高い人たちが中心での動きのようです。

管理職、あるいは現場教員の中にも旧態依然とした昭和的価値観の人がいることは改善を要するところかもしれません。

それと同じくらい問題なのが、生徒や保護者の意識です。

彼らの多くが未だ教員の勤務時間を認識しておらず、放課後や土日に正規の賃金が残業代として支給されていると考えています。

そのため、悪意無く勤務時間外に連絡をしたり、業務に関わることを依頼ししたりしているのです。

生徒に対し、勤務時間の周知を行う

私は担任クラスの生徒や、授業で行くクラスに対して必ず自分の勤務時間を伝えています。

「面倒な教員」と思う人もいるのでしょうが、あえて口にするようにしています。

また、残って質問をしたい場合などは、必ず事前にアポをとるようお願いしています。

この取り組みは2年ほど前から徹底するようになったのですが、その結果時間外の連絡は激減しました。

私の場合私学に勤務していて、放課後の課外授業は手当がつくためその分の残業代として課外手当も出ますが、それが無い日は残業代が発生しないことも教えています。

どうやら保護者にも伝わっているようで、保護者からも時間外の電話はほとんどないですし、掛け直しも勤務時間内に掛けてもらえるようになりました。

労働基準法を守ることは自分を守ること

この取り組みは、当然自分自身のためというのが第一です。

しかし、それだけではありません。

労働者としての自覚や、社会における規範やモラル意識の向上を生徒へ促す効果を期待してのものでもあります。

労働者と雇用主はどうしても利害が対立します。日本ではそのあたりのことがうやむやにされがちでした。

また、子供に対し労働問題などを教えることに対する教員の忌避感も強かったのではないでしょうか。
(逆に、一部の急進的な組合員などは熱心過ぎて生徒側が引いてしまいがち)

次の世代への負のスパイラルを断ち切る

日本全体での労働問題として捉える部分も大きいのですが、教育業界においての労基法の有名無実化はより深刻です。

実際、教員免許取得者も、教員志望者も右肩下がりです。その原因の一つにブラック労働問題があります。

現代の若者は給料の額面よりも、労働待遇や福利厚生、職場環境を重視します。

教育業界が若者にとっても入りやすい環境にするためにも、大人が労働法規や労働者の権利行使に関心を抱くポーズを取り、高校生のときから考える必要があるのではないでしょうか。

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