タブレットを使った授業は学力低下を招くのか?
紙への回帰
The Guardianからの引用記事らしいのですが、スウェーデンのLotta Edholm教育相が中心となり、紙の教科書を用い、手書きのノートを取って教育を受ける重要性が強調されているというニュースが話題になっていました。
行き過ぎたデジタル教育
日本ではようやく定着しつつあるGIGAスクールによるICT教育ですが、いまだに反対の声も多いのが実情です。
特にデジタルアレルギーの強い高齢教員などの利用率は低いようです。
これには他の職業のように業務命令で利用を強制されないため、ということも理由にあるようです。
そんな中、時代を逆行させ反デジタル派の後押しとなるような記事ですが、果たしてどの程度の信ぴょう性があるのでしょうか。
試験の信ぴょう性
そもそも今回のスウェーデンで問題になった国際的な試験、「Progress in International Reading Literacy Study」は国際読書力調査と訳され、「PIRLS」 という略称で知られています。
試験の内容は「読書」に関する調査であり、これが学力に因果関係が強いということから国際的に5年ごとに調査が行われています。
その内容に関しては新潟大学教育学部の足立先生が詳しく書かれています。
初等教育段階における国際読書力調査PIRLSの 特徴 一 他の国際テス ト・国内テス トとの比較から 一足立幸子
この調査を読む限りでは、読書への姿勢などを含む読書環境などについて、学校や家庭など複数の環境で調査する、とあります。
内容をざっと見た限りでもこの試験によって「読書」への姿勢や「読書」力を見ることは可能のように見えますが、一方であくまでも「紙」ベースでの読書を想定しているような内容に見えます。
つまり「読書」以外の活字であるネットの文章などは対象にしておらず、必然的にタブレットを持った子供が低く評価されるように感じます。
試験の形式による差
試験にどのような手法を用いるかと、普段の学習でどのような手段を用いるかには強い相関性が存在します。
当然ながら普段から紙と鉛筆を使った学習であればペーパー形式の試験に有利になりますし、CBT方式の試験に関しては不利になるでしょう。
そして逆に普段からタブレットを使った学習をしているのならばCBT方式は得意でしょうし、ペーパーを苦手とするはずです。
このことからも分かるのは、結局のところ試験の形式に合わせた学習が最も費用対効果が高いのは必然的であるということです。
現代の大学入試の問題もここに存在します。
中高と普段はタブレットを利用しているにも関わらず、試験の本番は完全なペーパー形式である、ということであればその対応や慣れに時間を要します。
結果として受験対応を意識した学校においてはタブレットなどの端末利用が停滞するするということになるでしょう。
CBT形式への移行は必然
現代社会においてコンピュータを利用しない職業の方が少ないのが実際のところです。
そうであれば、ある一定の発達段階において紙と鉛筆の試験から卒業をする必要があるでしょう、
言うまでもなく、手書きで字を練習したり紙に書いたりすること自体を私は否定するわけではありません。
明らかに現代社会において優先性の下がった手法を試験で課すことで、教育現場全体をその形式に合わさせてしまう状況が決して好ましいものではないのではないか、と考えているだけです。
大学入試の一斉的なCBT方式の実現、これが現在の学校現場においてICTを普及させる最も強力な起爆剤になるのではないでしょうか。
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