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生徒が「成人」になる日、準備はできていますか?

平成30年に民法改正が行われ、令和4年の4月1日より施行されます。

これに伴い成人年齢が満18歳に引き下げられますが、学校現場はその準備ができているのでしょうか。

文科省は関係各所に「事務連絡」という形で対応に関して周知をしているようです。

事務手続き上の問題

おそらく、最も直接的に影響があるのは事務手続きでしょう。

授業料や教材費、その他諸費などの費用が原則は本人が支払い義務を負うことになります。

通常は入学時の学費負担者が保護者に設定してあるでしょうから、実質的には何も変わらないのですが。

ただ、新たな購入物品など新規契約や分納などの手続など今までは保護者が対応していたものについて、本人が責任を負うことになるでしょう。

とはいえ、この点に関しては高校生本人が経済力を持つことは少なく、一部の例外を除いては事務的な煩雑さが増えるだけではないかと思います。

生徒指導や進路指導上の問題

それよりも深刻なのは、生徒指導や進路指導に関してです。

生徒指導上の問題は複数存在しますが、第一に考えられるのが学籍などの取り扱いです。

成人した生徒は退学や転学などを自身の権利において決定することが出来ます。

つまり、学校への不満から安易に自主退学をしたり、転学先を見つけて手続きをしたりすることが可能になるのです。

文科省の出した事務連絡によると

(4)成年年齢に達した生徒に対する生徒指導及び進路指導
高等学校等における生徒指導については、上記1を踏まえ、生徒が成年年齢に達しているか否かにかかわらず、一人一人の生徒の人格を尊重し、個性の伸長を図りながら、社会的資質や行動力を高めることを目指して行うことが必要である。
(中略)
生徒が成年年齢に達しているか否かにかかわらず、父母等との連携の下で生徒指導を行うことが必要である。
(中略)
生徒が成年年齢に達しているか否かにかかわらず、生徒指導及び進路指導について父母等の協力が得られるよう、各高等学校等においては、日頃から父母等の理解を得ることが重要であること。

成年年齢に達した生徒に係る在学中の手続等に関する留意事項について(事務連絡),
文部科学省,令和元年12月17日

上記のように父母等の「連携」や「理解」が強調されていますが、現実には法的拘束力を持ちません。当然、成人の決定が優先されます。
(むしろ、優先されない方が異常です)

また、運転免許の取得などにも問題が発生します。原則、法律上可能な権利を合理的な理由無しに禁止することは校則では出来ません。

さらに、結婚についても考える必要があります。成人は本人の意思で婚姻が可能になります。既婚者高校生の取り扱いの準備ができている高校はどれほどあるのでしょうか。

仮に反社会勢力に所属する人物との婚姻を結ぼうとしている成人生徒にどのような指導をするでしょうか。

また、保護者に知らせてほしくないという要望にはどう応えるべきでしょうか。

今までは未成年の保護という観点から保護者への連絡が容易でしたが、これも難しくなります。

校内での暴力事件や窃盗事件などが発生した場合はどうでしょうか。現在は学校内での処分にとどめているようなケースも、成人の刑事事件となれば学校が取り扱える範疇を超えています。
(そもそも未成年であっても学校が扱う問題ではないと個人的には思いますが)

加えて、進路指導に関しても問題が頻発します。

成人に関して、進学先の決定などは父母等の許可を得る必要はありません。

本人が望む進路と父母の意見の食い違いなどが発生した場合は、本人の意思で入学を強行することも可能になります。

個別対応を原則

結局、考え出すと切りがないほどに、現在の学校では想定していないことが頻発するはずです。

したがって、個別対応を行うしかない、というのが学校現場の実状でしょう。

予測不可能なため、その場での判断を適宜行うことしか出来ないのです。

ただ、教員の意識改革は間違いなく急務です。

成人を生徒として受け入れていた高等学校は、一部の通信制や定時制の学校を除いて殆ど無いはずです。

生徒が未成年ではない、ということに対する準備を学校組織全体として万全にするのは難しく、場当たり的な対応を迫られることになるでしょう。

そうであれば、せめて教員一人ひとりは知識的にも精神的にも準備をしていたいところです。

というわけで、私はこの記事を書きました。準備の一環ということで…

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