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教員不足問題はなぜ今になって顕在化したか

昨今は教員不足がマスコミなどに取り上げられ話題になっています。

しかし、実際には5年以上前からこうした傾向は危惧されていました。

産休代替の教員が見つからない、精神疾患の休職件数の増加など現実には教員不足は現場レベルでは問題となっていたのです。

ところがそうしたことは社会問題としては認識されず、マスコミなどでも話題になることはほとんどありませんでした。

そうした状況に関する詳しい解説をする記事があったので紹介したいと思います。

教員不足の4段階

リンク先では現在の教員不足に関する理由に関しての調査が書かれています。

この調査は慶応義塾大学の佐久間亜紀教授と元小学校教員の島﨑直人さんの研究調査ということです。

具体的には以下の4段階によります。

  1. 正規教員の定数に対して、正規教員が不足している状態

  2. 正規教員不足の穴を埋めるため、フルタイムの臨時教員を雇っても穴が埋めきれないという状態

  3. 穴埋めの担い手をフルタイムからパートタイムの非常勤教員まで広げても確保しきれないという状態

  4. 教員不足により授業ができない状態

団塊の世代が定年退職を迎えた15年ほど前から、実はほとんどの自治体が第1段階にありましたが、この状態では生徒の日々の生活では教員不足が見えない状況でした。

彼らからすれば毎日先生が授業をするという状態は維持されていたからです。

この10年ほどで第2段階に移行し、フルタイムで働く教員が正規、非正規を問わず不足した結果、非常勤の教員や退職教員の再雇用者が大きく増加しました。

生徒目線では兼業教員や高齢教員が増え、学校によっては若い先生がほとんどいないという状況が目に付くようになったようです。

そしてここ5年ほどで働き方改革などの労働問題と結びつく形で第3、4段階へ移って社会問題として教員不足が顕在化したということになります。

こうした動きを加速させたのが自治体や教育委員会の正規採用の抑制です。

自治体や教育委員会はどうして正規採用を絞り続けたのか

では実際には正規職員がすでに不足していたにも関わらずどうして自治体や教育委員会は採用数を絞っていたのでしょうか。

この原因こそが2001年度に法改正が行われた、義務教育費国庫負担制度です。

それまでは正規職員の給与の半分を国庫負担という制度でした。法改正後は、国庫負担は3分の1、さらに国庫負担の対象を非常勤職員にも広げました。

その結果、財政基盤の弱い都道府県は非常勤の採用を増やすことになりました。

折しも少人数指導やTTなどが増加する時期と重なったことで、教員不足の種が毎年蒔かれ続けていたことに多くの人が気づかなかった、あるいは目をそらしていたのです。

末期状態になって初めて

現在、多くの自治体では第4段階に入っていると言われています。

教頭が臨時担任をしていたり、教科によっては自習が続くクラスもあると聞きます。

こうして生徒に目に見える実害が出た段階でようやくマスコミはニュースとし始めました。

しかしここまで教員に対してネガティブなイメージがついた段階で新卒教員が増えることはないでしょう。

そもそも教職課程を選択する学生の動向を考えると、今すぐに改革が行われたとして最低でも3、4年の期間が必要です。

まして現在のスピード感であれば押して知るべしでしょう。

マスコミだけの責任ではない

この顕在化が遅れた責任はマスコミだけではありません。

現場の教員がこうした問題に対し、無理やり対処してきてしまったから、という事情もあります。

生徒の為という美辞麗句に酔いしれるのではなく、一社会人としてこの問題に向き合う必要性が教員に問われているのかもしれません。

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