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私立医学部志望者が医専予備校に行くべき4つの理由

私の勤務校には例年、医学部(医学科)を志望する生徒がいます。

その多くは国公立大学の医学部を志望です。そうした家庭の場合、私立医学部は選択肢に入っていないことがほとんどです。

学費の負担などを考慮すると、九州の平均的な所得では6年間で3千万円以上の学費は現実的ではないからです。

しかし、中には家業が医療機関などであるという理由で私立大学の医学部を目指す生徒も存在します。

私立医学部の対応は学校では難しい

そうした生徒や保護者に対し、私は必ず以下の様なアドバイスをします。

「学校では国公立大学を中心とした、共通テスト+2次試験の標準的な学力の養成を目指しています。私立大学の医学部はこの標準からは多少ずれた入試内容が多く、入試の時期や形式も複雑なので学校ではきめ細やかな対応は難しいのが実状です。そのため、医学部専門の予備校を併用することをお勧めします。特に、医学部に特化した予備校が最適です。」

なぜ一般的な予備校ではなく、医学部専門予備校なのか

上記のように、学校では個別の入試対策が難しいことは言うまでもありません。

しかし、実は一般的な予備校、いわゆる三大予備校と呼ばれる河合塾、代々木ゼミナール、駿台予備校であっても正課のコースでは私立大学の医学部への対策は難しいのです。

その理由と、予備校業界の動きについても触れていきたいと思います。

まずは主な理由は以下の4点です。

  1. 入試の何度や問題傾向が大学によってさまざま

  2. 入試日程が他の私立大学とずれる

  3. 情報、受験スケジュールの組み方

  4. 二次試験(面接)の対応や補欠合格の存在

1.入試の難易度や問題傾向が大学によってさまざま

まずは、私立大学の医学部といっても、その難易度も様々です。

例えば御三家と言われる慶應義塾、東京慈恵会医科、日本医科は国立大学の医学部に匹敵するレベルの難度です。

実際、慶應の場合は国立を蹴って進学するケースが多く見られるぐらいです。

しかも単純に受験の難易度と問題の難易度が比例しないことが多いのも特徴です。

難しい問題が多いが得点率は低い大学、比較的解きやすいが高得点を要求される大学、英語や生物の内容が医療分野の知識を問う大学、トリアージ方式で複数教科を同一時間内に解き分ける大学など入試方式や問題傾向が全く異なります。

そのため、自分がどの大学を受験するか、併願校はどこにするか、どのように対策をするかをオーダーメードで決めていく必要があります。

その結果、いわゆるマスプロ型の大手予備校やフランチャイズ映像授業予備校では十分なサポートを受けにくい状況です。

2.入試日程が他の私立大学とずれる

受験の日程が他の私立大学とずれるのも特徴的です。

多くの私立医学部は1月の後半から入試がスタートします。本格的に私立医学部を志望する場合、共通テストを受験する余裕はありません。

また、筆記試験の合格しても2次試験の面接が2月に実施されます。

この日程のズレが対策講義や直前講座のスケジュールと噛み合わないことが多く、ミスマッチを起こすことが多々あります。

3.情報、受験スケジュールの組み方

前述の2次試験の面接などの日程も含めて受験スケジュールを個別に作るのも私大医学部受験の特徴です。

地方の私大(北は岩手、南は福岡まで)と関東、関西圏の移動や宿泊も考慮したスケジュール組みは、本人、保護者、チューターとしっかり相談を行う必要があります。

これも大手の予備校では難しいことの一つです。

4.二次試験(面接)の対応や補欠合格の存在

さらに、面接内容も大学によって色合いが異なります。圧迫面接型や多浪を排除するといった情報は極めて重要です。

また、補欠合格の歩留まりや発表時期なども各大学で異なります。

以上のような状況を考えると、専門家のアドバイスを入れる方が的確、適切であることは明らかで、医学部専門予備校で相談を行うべきでしょう。

予備校業界の業務提携の動き

私立大学医学部の受験需要は高まりつつあります。

映像授業で講師が余るようになり、浪人生が減少する中で顧客数の確保を考えると富裕層が中心で客単価の高い医学部受験層は予備校業界にとって重要な位置にあります。

つい最近までは、独立型の中小の医学部専門予備校が中心でしたが、大手予備校と提携するところが出てきています。

大手の名前が入ることでのネームバリューの強さと、医専独自のノウハウや情報網の共有を目的にしているようです。

例えば、メディカルラボは河合塾と提携して、全国展開を勧めています。

また、プロメディカスは駿台と提携を行っています。

医学部専門予備校の特徴は、個別(少人数)授業とチューターとの受験戦略の構築です。引き換えに、授業料などが高額になります。また既卒生の場合は寮に入るケースも多いようです。

国公立の医学部の場合

国公立の医学部の場合、難易度としては超難関と呼ばれるレベルです。

しかし、九州内の国立医学部の場合は他学部の入試と比較して極端に問題が難しい傾向は少ないため、個別の対策を行うこと自体のメリットは少ないように感じます。

その分、可能な限りの先取りや学習量の確保が必要ではありますが、他の学部や旧帝大などの延長線上にある分、シンプルではあります。
(決して簡単ではない、むしろ難しい)

ただ、近畿地区などに多い単科の医科大(滋賀医科、奈良県立、和歌山県立など)の場合は入試問題が特徴的なこともあり、このような大学を志望する場合は、個別に対策をできる環境を探すことも選択肢に入れるべきかもしれません。

医学部対策は教員としても面白い

教員として、様々な大学の受験指導や面談を行う中でも、医学部への進学指導は非常に面白いものの一つです。

各大学で配点に大きく差があり、面接での内容などからも志望者に求める動機や素質を垣間見ることが出来ます。

私は国公立大学の医学部進学に関しては何度もサポートする機会があったため、個人的にはある程度ノウハウが自身の中に蓄積されています。

しかし、それでも私立大学の医学部指導は時間的にも難しいと感じます。

ですから、「餅は餅屋」ということで…

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