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農家が時間をかけて取り組むべきこと

カイゼンは設備投資とは違う。

設備投資だと、導入で時間あたり作業量1ha→2haに効率UP!みたいなことが起こるけど、カイゼンだと、時間あたり作業量1ha→1.05haだったりする。「んじゃダメじゃん!」となってしまうのだけど、カイゼンが染み付いていくと、小さなカイゼンが積み上がっていき、1ha→1.05ha→1.1ha→…と、とどまることを知らない。トゥモローネバーノーズだ。
設備投資だと、導入以後の伸び代がないので、どこかの地点で設備投資をカイゼンが追い抜くってことも、あり得るのだと思う。

設備投資は、お金があればすぐ追いついたり追い抜いたりできちゃうけど、カイゼンは、一朝一夕で身につくものではないので、お金があっても追いついたり追い抜いたりしづらい。中小企業とか日本の多くの農業経営など、小さな経営は、お金があっても追いつけない所にガンガン経営資源(てか時間)を投資すべき、というのがボクの意見だ。

今回、トヨタ自動車さんの個別カイゼンに申し込んだのだけど、その主旨は「トヨタさん、お願いだから、なんかめっちゃ良いカイゼンツールを召喚してくれ」ではない。「たけもと農場のカイゼンのループを加速させる」だ。事実、第1弾で来てもらって実装した受注管理ポストも、社内の感触は「うーん、使いやすいかコレ?」が第一印象だったりする。「なんかめっちゃ良いカイゼンツール」とは程遠い印象で、現在は小慣れてきて使い勝手良い面も実感してきつつあるものの、今もなお「なんかめっちゃ良いカイゼンツール」と紹介するには、物足りない。


ただ、本来の主旨は「カイゼンのループを加速させる」なので、それについては、大いに影響を与えてくれた。「かんばん」と呼ばれるA4三つ折りを裁断したようなサイズ感の紙(受注内容が記してある)と、それを入れるポストによる運用で、情報の受け渡しをスムーズにしようという取り組みなのだが、かんばんに記す内容や配置、運用ルールは何度も書き換えられ、フィードバックも集め、そのフィードバックにあった小さな課題の解決もいくつも着手できた。短期間のうちに。

個別カイゼンで来てもらうには、それなりにフィーが発生しているので、たけもと農場としては明確に投資し、それを回収せねばというスタンスを社内に示した。「これはカイゼンに取り組むぞっていう意思表示であって、こんだけ払うんだから、文句言っておしまいではなく、ちゃんとカイゼンし、作業もラクになり、やって良かったに繋げんなんよ。」
と。


2回目は半月後に来られるというので、この半月の間は、結構な負荷をかけた。
・作業は途中で止めてあーだこーだ文句を言い
・コッチの都合で手を止めさせてヒアリングを幾度と行い
・フィードバックを投稿するように、再三言ったり
たけもと農場らしからぬ、ストレスの多い職場環境だったと思う。

ストレスフルな中、みんなの協力のおかげで、
フィードバックは44件が集まり、
ボクのいない所でもカイゼンの議論が進み
3回の訪問でカタチに出来れば〜という最初の見積もりは、
2回目の前半で落ち着きそうな勢いだ。

たけもと農場では、ボクはじめ、メンバーの多くが、カイゼンが染みいてきて、小集団活動などのカイゼン活動を促さずとも、息をするようにカイゼンするような雰囲気になりつつある。
ただ、社歴の浅い西くん(...は元々それに近い感覚持って入社したので、ほぼクリア)やハルちゃんについては、言ってること・してることは理解してきたけど、身についてはいなくて、今まさにステップアップさせたい段にいる。

使いづらい→ガマン
ミスする→気をつける
忘れる→覚えておくよう頑張る


みたいな、個人の努力や根性に頼るのではなく、
仕組みやツールによって、作業はラクになり、品質はよくなるということを、実感し実践するように、上司としては促さなければいけない。

トヨタは「なぜ?を5回繰り返す」という格言もあるほど、
トヨタ自動車の人たちの議論を見てるととかなりしつこい(大変敬意を表した上で、こんな表現にしてあります)。ボクが「こうするんだよ!」とばかりにウチの社員に「なぜ」を強要するのが真の指導ではないけど、この半月の間には、「なんで?」「なんで?」をしつこく問いたりもした。
作業一つ一つに対して、「なぜその作業が必要なのですか?」と問われたら、「そう指示されたからです」とか「やっておいた方がなんだかんだ安心」なんて回答ではなく、「この作業によって、お客さんのクレームが減るようになったからです」という回答ができるよう磨き上げていくことで、「品質は工程で作り上げる」という、これまたトヨタ格言に行き着くことができる。

取り組んだ小カイゼンは以下の通り

1)デスクカッター(かんばんを切る工程)の配置を動線上におく
2)納品書を置くトレーを用意する(ポストにはサイズ的に入らないので)
3)PCデスクの配置を変える
4)ポストを置く場所を確保する
5)精米指示にかんばんをポストするタイミングを決める
6)複数銘柄の注文の書き方をルール化する
7)かんばんに入出力するエクセルの扱いルール決め
8)荷造り一覧表をリニューアルさせる
9)急ぎ注文のものは色を変えて分かりやすくする
10)出荷終わった後のかんばんを留めるステープラーを針なしにする(エコ)
11)定期お届け米は別途わかりやすいように管理する

漠然と書くと「内容薄っ」てなるし、個別具体的に書くと「何ソレ...??」となり易いけど、一つ一つの解説は、気が向いたらやります(行けたら行く、のヤツです)。

「ご指導に」来てもらうと陥りやすいのは、
◯完全体のものを受け取ったという錯覚
◯それを遵守することが目的化してしまい、本来の目的である「作業も楽になり、経営にもプラスになるカイゼン」にベクトルが向かない。
◯受け取ったものを良いか悪いかでしかジャッジしない
なので、そうじゃなくて、
①受け取ったものを自分たちらしいカラーにカスタマイズする
②目的を見失わない
③カイゼンに終わりなし
とマインドセットしたい。

①トヨタ自動車は、新しい設備を導入した場合は、最初に特別部隊によって自分たちの使いやすいようにカスタマイズして、配置されるらしい。
「ここに取っ手がある方が安全だ」
「これの横に治具(じぐ)を配置しよう」
ラクをするためでなく、ラクになるよう、工夫した現場にするためだ。

②カイゼンツールを入れる目的は
「これにしろと言われたから、ルールを守るよう徹底する」ではない。
「作業もラクになり、経営にもプラスになる」だ。思ったような成果が見れない場合は、そのツールが良い悪いだけの判断ではなく、そのツールをどう使いこなすかを考えなければいけない。
来月、トヨタ自動車の方達が来たときに見せる景色は、
「よしよし、前に設置した通りツールを守ってるな」
では、ないのだ。
「この項目が以前と変わっているのは何故?」
「運用してみたら、こう項目を変えた方が流れがスムーズだったからです」
「ラクしてるだけじゃない?」
「変えたことで、ミスも起こりづらくなったし、現場での定着も良いので」
みたいなやりとりができるようにしたい。

トヨタ自動車さんはカイゼンのエキスパートだけど、
たけもと農場の経営については、トヨタ自動車さんよりボクたちの方がよくわかっている。あるべき姿を再三議論しながら、目的にベクトルを向かわせたい。

③カイゼンに終わりなし。
「ここはこうしたら良いんじゃない?」を連日言ってたりすると、
「はぁ〜果てしね〜😩」となってしまう。
だけど、カイゼンをし続けることで、息をするようにカイゼンできる風土が生まれると実感している。
ドラゴンボールでいう、精神と時の部屋で悟空と悟飯が常にスーパーサイヤ人でいられるように訓練したようなカンジ。
一見、ツラい無限ループにも見えるけれど、カイゼンする→よくなる→モチベーションもあがる→またカイゼンするのサイクルをカラダが覚えると、成長の無限ループに変えることができる。

カイゼンしようぜ!的な文言は、読み聞きした時点では胃もたれするかもしれない(経験あり)なので、読後感は胃もたれかもしれないけど、頭のどこかにこの意識が植え付けられて、潜在意識の中で育ってくれることを願ってます。

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