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読書ログ 『問題発見プロフェッショナル 「構想力と分析力」』

どんな本?

有名な「問題解決プロフェッショナル」の第2弾。アナリストとして構造化と分析の技術を棚卸ししたいと思い購入。図や事例を多く交えるなど骨太な内容ながら説明が明快で、問題発見の手順を体系的に落とし込むことができた。問題解決の本は世の中に溢れているけれど、ビジネスで重要なのはそもそも「どの問題を解くべきか・解かないべきか」「どの問題を解けばゴールに近づけるか」を見極める問題発見力。その技術をここまでわかりやすく一般化した本は他にないと思うので、アナリストに限らずおすすめ。
特に問題の構造化・具体化の部分にTake awayがあったので、以下にまとめる

【個人的整理】
〜「前提を疑え!」とよく言われるが、なぜ疑う必要があるのか?何をどうやって疑えばいいのか??〜

  • ビジネスの仮説は目の前の事象×一般論(大前提)で演繹的に立てられる

  • 大前提は複数の事象から帰納的に導かれる事が多い

  • ここを間違うと仮説のロジックが破綻してしまう

  • だから、大前提における帰納法のロジックの質が古さや主観などによって落ちてないかを確認すべし(これが前提を疑えって話)

  • つまり、「何をどう疑えばいいの?」と思った時には、「前提の基となっているロジックに古さや思い込みがないかを疑え!」と言われていると思えばいい

  • 大半の人は一般論・大前提の構造にまで触れないで行動を起こすが、VUCAの時代においてはこの大前提のロジックが劣化していることが多いので、ここの帰納のロジックを疑うことで人と違った効果的な行動をとれることが多い

おすすめ度

★★★★☆(ある程度ベース知識がある状態で読むと思考が深まる)

こんな人におすすめ

  • 目の前の大きな仕事の進め方で困っている人

  • いわゆる問題解決系の本を読んだことがある人

  • 戦略や企画を立てる仕事をしている人

学びメモ

問題発見が問題解決のクオリティを上げる

  • 問題とは「あるべき姿」と「現状」のギャップであり、「解決策」とはギャップを埋める処方箋である

  • よくあるのは「あるべき姿」が見えないために問題を発見できていない例。なんとなく「うまくいかない」「これが問題だ・・・」と言った後に「で、あなたはどうしたいの?」と聞かれると答えに窮する人が多い。これはつまり「あるべき姿」を見失っているので、埋めるべきギャップ=とくべき問題も見失っている状態。発見できていない問題を解決することはできない。

  • 仕事上の問題解決が難しいのは、問題は立場や環境によって変化し、皆が共通の認識を持てているわけではないため。

ここには、企業の問題がなかなか解決しない最大の理由がある。ビジネスを取り巻く状況の複雑さと部門や役職等の立場の違いから、「問題がどこからどのように発生するのか、その構造やメカニズムの解明が難しい」ことに加え、全社的に「問題が具体的レベルで共有化されない」ため、解決に向けて取り組み課題を一本化できないわけだ。

本書 20ページ
  • 良いリーダーとは、「あるべき姿」を大胆に描く人。絵を描けるから解くべき問題がはっきりし、組織が迷わずに良い方向へ進める。

    • ★ふと今、超尊敬する元上司から「とにかく絵を描けるようになれ!」と言われたことを思い出した。リーダーシップと問題解決力はつながっているし、特にこの時代は「あるべき姿」を示して問題を発見してあげられる力が重宝される

問題発見ができない典型的パターン

  • 「あるべき姿」を的確に描けない

    • あるべき姿をイメージできていないパターンと、イメージできているが間違っているパターンがある

    • あるべき姿が先入観によって歪んでいると、そこから導き出される問題も歪むので注意

    • あるべき姿は、自発的に得られるものだけではない。例えば消費者の嗜好が変われば、小売店のあるべき姿も変わる。

  • 「現状」の認識・分析力が低く、正確な把握ができていない

    • Will×Skillの不足によるものが大きい。Willは「現実を直視する意識」のことで、Skillは「現実を把握する分析スキル」のこと。

    • あるべき姿へのこだわりが強く、逆に現状が見えなくなることもある

    • 現状を直視できない理由は主に以下の通り

      • あるべき姿が強すぎて、足りていない現状(および問題)を隠蔽したくなる

      • 「問題が起こるはずない」など現状を見るフィルターが曇っている

      • 近い将来の現状を見ようとせずに、問題から回避してしまう(「今の今はまだ平気だから・・」などといって将来生じうる問題を先送りにするケース

      • 人間はそもそも問題を回避したがる動物である

  • 「ギャップ」の生じている構造の解明が甘く、問題の本質を具体化・優先順位づけできていない

    • ★これが一番大事な気がしてて、問題の構造化が甘いときは「全体こうなってそうだけどここの理解が曖昧」というパターン(無知の知パターン)と、「全体はこうなっているからこう解決すればOK!と思い込んでるが実は水面下に気づかない構造がある」というパターン(無知の無知パターン)があると思うのだが、肌感ではビジネス上の問題解決は大抵後者で、しかも後者については気付く方法がほぼないのが厄介。自分が驕っているかいないかとかそういう問題ではなくて、知らないものには気付けない。でも全部知るには時間がない。でもどこまで知れば進んでいいかもわからない、という状況になりやすい。自分はとにかく人に聞いて、手を動かして、また人に聞いて、見えてない構造がわかって手戻りして、だんだん構造がわかってきて、じゃあこうすればいいじゃんと思いつく、みたいな流れが多い。何が言いたいかというと、問題の構造を自分の努力だけで把握するのは極めてまれで、把握するためにはほぼ確実に手戻りが発生する、ということを理解した上で、把握のためにさっさと周りの人に聞きまくろう、ということ。

  • 実行可能な解決策から逆順で短絡的に問題を捉えてしまう

    • 要は「ゼロベース」で考え、「やるべきこと」と「できること」を分けて考える、ということだと思う。

    • ★周りの頭のいい人は大抵この分け方がうまい印象

    • ★自己学習もそうで、簡単そうな解決策に向きがちだが(1日1ページ読む英語本とか)、結局効果がなかったりする。現状とあるべき姿を正しく把握するのが先で、その解決策が実行可能か否かは後から決める(実行不可能であればあるべき姿を変える必要も出てくる)

ミッドライフクライシス

  • スーパーなどが筋の良いコンセプトやビジネスモデルで成功しても、世の中の構造変化によって途中で息切れして低迷すること

  • 成功におかされると、低迷しても「どうやって昔みたいに輝くか」という思考にしかなれない。そうではなく、昔と同じ形では輝けないことを認め(現状の正確な把握)、どうすれば今の状況下で輝けるかを考える

    • ★自分も32歳ならではの魅力と限界を追求しないと、いつまでも「夢を追う子供みたいな人」で終わってしまうかもしれない。少なくとも今の自分は可愛く努力して偉い人に気に入られる、みたいなパターンでまだ過ごしてしまっている

戦略的問題発見の4スキル

  • 観察力:事実をもとに現状を客観的かつ正確に把握する力

  • 判断力:ビジネスの責任当事者として主観も含め選択・判断・決定する力

  • 分解力:具体的レベルにまで論理的に分解・分析する力

  • 統合力:限られた現状認識・把握から全体像を組み立て、構造化・構想する力

問題発見・解決サイクルの落とし穴

  • いつの間にか目的が忘れられてしまう

    • 問題を特定し解決策に落とし込み、その行動が定常・反復化すると、いつの間にか本来の目的が忘れられてしまう

    • ★これは誰もが経験するあるある。いつも「あるべき姿」「現実」「ギャップ(=問題)」「問題の構造」「解決策」の構造を意識しないと、手段が目的化しやすい。

  • 立場や利害の違いを意識できていない

    • 組織のヒエラルキーや部門の障壁によって、同じ問題も違った形に見えてしまう。中間管理職の最も重要な目線は、社長の目と顧客の目を自由に使いこなせることである。

    • 自分と違う視点を複数持つことが重要

    • ★今の自分は転職したてで、各ポジションの人がどういう利害関係でどういうものの見方をしているかがわかっていないので、思い込みで的外れな資料作りをしてしまうことがある

    • ★細谷さんの具体と抽象の話と同じ。

問題の本質の構造化、そのための分析

  • 問題の分解・分析のために、本書では「拡がり」「深さ」「重さ」という3つの視点を提唱している

  • 「拡がり」によって問題の全体構造を掴み、ギャップを生み出す重要原因を見出す

  • 「深さ」を捉え、重要原因がどういうメカニズムで生じているのかを科学する

  • 「重み」づけを行い、有限な資源の中で取り組むべき問題の優先順位をつける

仮説思考と分析力は車の両輪

  • 現状分析から仮説を作り、その仮説を分析によって検証する「仮説ー検証のサイクル」はあらゆる分析の基本である

  • チャートなどを使って全体像を把握する。そして、必ず「その意味合い、So What」も併せて引き出す。

  • 何かを主張するには「雨に備えて傘を持っていく」という仮説(=現時点の結論)を最初に置いて、それを証明する検証結果(空が曇っている、降雨確率は90%だ、気圧の低下が示されている、など)を次に置くことで、主張の中で仮説と検証を回すことができる。そうした提案書は、ページ数も少なく、メッセージが正確に伝わってくる

  • 言い換えると、「あるべき姿を構想する」ことと、「現実を直視する」ことは車の両輪である

拡がりからギャップを生む要因を見出す

  • 問題を特定するためには、大きく以下の2ステップ。

    • 広く現状を眺める。どのメガネをかけて眺めるかは非常に大事だし、複数のメガネを持っておく必要がある。眺めるために、MECE、トレンド分析、+ー差異分析、散布図、コスト・バリュー分析などのフレームワークがある

    • ギャップの要因を特定し、それが生まれている要因の仮説を立てる

深さを捉え、問題を構造的に把握・具体化する

  • 結果として表面化しているFactの本質を探るために、「深い」分析が必要。「深い」とは、Factの起きている構造を論理的に示すこと。

  • 論理的に構造を押さえるのは容易なことではない。とはいえ難しいと諦めては解決策は見えない。だからこそ困難ではあっても、結果として現れている数字に非常につながりの深い問題や解決策を模索しなければ、出口は見えてこない。

  • 問題特定のロジックの明確化のメリット

    • 問題の真因に迫り、具体的なアクションを取れるようになる

    • 後から「こう考えてここが問題だと思った」と振り返り、改善することができる

  • なぜなぜ分析をしているといつの間にか「なぜ?」が「すると?」に変わってしまうことがよくあるので注意

  • ロジックと屁理屈は違う。因果関係の強い、筋の良いロジックが必要。ロジックは時代によっても変化するので注意。

  • 良いロジックを思いつくには「これってなんでこうなるんだろう?」と考えて思考を深めることと、「このアクションとるとその結果どうなる?という因果を想像して答え合わせする」ことで思考回路を鍛える必要がある

  • 冒頭の演繹と帰納の話。大前提を導く帰納の精度は超大事。

重みづけによって取り組む問題の優先順位を決める

これを解決するとどれだけのビジネスインパクトがあるか?を考えた上で取り組む問題や、問題の真因を選ぶ


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