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読書ログ『自分の意見で生きていこう』

どんな本?

ちきりん氏4部作の最終章にして、マッキンゼー出身の彼女が自分のスタンスをとることの重要性を説いた本。「思考」「発信」「議論」に関するエッセンスがたくさん詰まっており、非常に納得感が強い。
特に「会議の生産性が低い」「意思決定の時間がかかる」と言った組織に有効。決まらない会議がなぜ決まらないか、が本書をよくとクリアになる。すべての組織の構成員に読んでもらいたい本。すでに何人かの友人に勧めてしまった。

この本を読んだ一番の収穫は、イライラしたり、すねたり、承認されないことを恐れなくなったことだと思う。
全ては個々人の「意見」なので正解などなく、尊重されなければならない、と思うと、不思議と「論破」とか「イチャモンへの対抗」みたいな思いが来て、「ナイス意見!」と思える優しい世界が見えてきた気がする。

意見に正解などない

・正解のない問題にあるのは「意見」だけ。文字通り正誤などない。

・世の中において重要なのは正解のない問題にポジションを取り、意思決定をすること。正解のある問題の答えは、調べればわかる。

・「間違った意見」など存在しないのだが、「間違った意見をいうのが怖いから発言しない」という人は多い。
→意見を否定されたときは「正解などないのだ!」と自信満々に突き返せばいい。こういうマインドを持つだけでも、意見を言える社員(特に若手)は増えると思う。

意見と反応の違い

・「賛成・反対」などのポジションを取るのが意見で、取ってる風で取っていないのが反応。
反応の例:「それは〇〇次第だよね」「こういう観点もあるよね」

・意見言ってるつもりで反応しかしていない人は非常に多い。

・特に今は”1億総反応時代”。SNSでいいねがワンタップでできる。つまりエネルギーをかけずに反応できてしまう。

・往々にして、反応は「批判的なもの」になりやすい。その方が知的に見えるから。というか究極批判的な反応は無思考でできてしまう。「そう?そうとも言えませんよね?」などと言えばいい。要するに、意見にしか価値がない!意見を言わないプロは無価値!!

・自分の意見を表明する人には「あの人と働きたい」と思う人がたくさん集まる。その理由は、「意見を言うことで人格が伝わり、ファンができるから」。ファンはキャラクターにつく。
→そういう人は発信がうまいのではなく、意見を言語化するのがうまい。

・なぜ意見風の反応が生まれるかというとこの2点

①自分の意見に自信が持てないから
②誰にも反論されたくない、という保身的な気持ちがあるから

どちらも「意見に正解などない」というマインドで乗り切れる。

・「間違っているかもしれないけど、私はこう思います」と言う人がいるが、もっと自信を持つべき。自分の考えに自信を持つにはよく考えること!→毒にも薬にもならない反応をする人は非常に多い(自分もしていることがあるかも)。これを罪と思わないといけないし、あまりに反応が多いと「何を決めないといけないのか」「意見を持てない要因は何か」をきちんと考えないといけない。これがファシリの要諦だと思う。
→俗に言う「評論家」と言う人は反応はするけど意見を言わない人のことだと思う。たちが悪いのは「意見を言った気になっている」こと。みんなで意識して直していかないといけない。
→往々にして、反応は「批判的なもの」になりやすい。その方がかっこいいから。
→批判的な反応にいちいち拗ねたり心を動かされないことを意識したい。「それってどっちですか?スタンスは?」と聞き返してやればいい。
→自分の意見にしたがって行動しないと、環境や人のせいにして(他責になって)幸せになれない

・この本屈指の名フレーズ

もし尊敬する人が異なる意見だとわかると「不安になる」のであれば、それはまだ、自分の意見に自信がもてていない証拠です。そういう場合は、もっともっと考えて、「私の意見は絶対にコレだ!他の人がなんと言おうと、私はこうすべきだと思っている!」と言えるレベルまで考え尽くします。自分の意見に自信が持てないのは、「知識が乏しいから」でも「アタマが悪いから」でもなく、「考え尽くしていないから」です。

議論とは

・議論とは、複数人がそれぞれ「自分の意見」を表明し、それらを全員で比較したり深堀して、どの意見を採用すべきか、さらに良い意見を見出せないかと検討すること。

・コミュニティ(組織)とは、「それぞれ自分の意見をもつ人が集まり、その意見を他者に伝え、話し合いを通じて進むべき道を決めていく」という形で運営される。コミュニティはそうする人、そうできる人を「仲間」と認める。ゆえに、「賛成です」「好きにしていいよ」という反応は一見協力的に見えるが、考えていない可能性が高いので組織の構成員からの真の信頼は得られない。意見を求める側が求めているのは「摩擦を起こさないこと」ではなく「しっかり考え、自分の意見を言ってもらうこと」。「反応はするけど、自分の意見がない人」は、「議論する価値のない人」として扱われる

・「他人の意見を否定するなら、まず自分の意見を明確にするのが礼儀だろう」「意見を表明した人に質問したいなら、まずは自分の意見を明確にするのがマナー」

SNS時代のマインドセット

・インターネットの普及により、承認欲求が肥大化(SNSで成功事例が上がってくるので「俺も」と思ってしまう)

・しかし、自我が確立していないのに広い範囲での承認を求めても、思うように反応は得られない

・まずは自我を確立させるため「発言者がどんな人か、伝わってくる発信」をすること。有益で役立つ情報を発信しなくても良い。
→というか、一般人が無理して有益で役立つ情報を発信しようとする方がイタいとも思う。例えばYoutrustは意識高い系がポエムをいう場と化しつつあると思う。

・色々なところで発信するのではなく一つの場所に集約すると、そこを見るだけでその人の人となりが伝わりやすくなる

・SNSではリアル社会と同じマナーを心がける。面と向かって「センスない」とは絶対言わないはずなのに、なぜかSNS上では平気で本人に言ってしまう
→今まではnoteなどを書いても反応がなくて寂しくなりすぐやめていた(しかも、自分の強みと掛け合わせて「人の役に立ちそうな情報」を無理やり捻り出すようなやり方をしていた!)。しかしこの本を読んで以降、「単に自分の考えをアウトプットしたものを公開するだけ。書きためておいていつか誰かに見られたらいいし、見られなくても自分のためになるから全然OK」というマインドセットに変わることができ、1ヶ月経たずに15件以上の記事を書くことができた。
→身近な人がSNSで支持を集めていると「俺だって」と思ってしまいがちだが、これは貧相な考え方だと思う。こう言う勝ち負け意識があると「無理してそれっぽいこと言うダサいやつ」に近づいていく。バズった人はその人なりの魅力がきちんと発信されているわけであって、自分もまずはそこから始めないといけない。

行きづらさからの脱却

・答え合わせに時間を浪費しないこと。

・「誰かに背中を押してもらいたい人」と「自分がやると決めたらやる人」がいる。どちらもあっていいが、前者は「答え合わせが必要な人」である。答え合わせのために時間を浪費するのはもったいないし、間違いを恐れて行動しないのはもっともったいない。
→自分は前者。yokoyanとかkurita-sanは後者。

・みんなが「良い」と言っていても自分はいまいちだと思ったら、そう言えばいい。「自分が良さに気づかなかったんだ」と卑屈になる必要はない。他人の意見と同じかどうかを気にしないのは、D&Iの観点でも重要

・むしろ「周りの人と違う」のは大きな価値。だって、「オピニオンリーダー」と呼ばれる人は周りの意見と違うから!人は他人と違う意見を臆さず言えるオピニオンリーダーを尊敬し、時には「心酔」するほど憧れる。
→自分が落合博満を心から尊敬している理由もそれだ!

・自分が心から「好きだ」「心地よい」「楽しい」と思える生き方や分野を選び、選んだ理由についてはしっかり考え尽くす。そうすれば「自分は絶対にこういう人生が送りたかった!」と断言できて幸せ!

・ちきりん流の、承認欲求充足のためのステップ

見聞きしたことへの自分の意見を明確にする
→それらを束にし自分がどんな人間かを自分で理解する(自我の確立)
→ありのままの自分を肯定する(自己承認)
→これらの意見の束を開示し、自分という人格を外部からも承認してもらう(承認欲求の充足)

意見をもつこと=リーダーシップ

・日本人の多くは「専門家でもないのに意見を言うのは無責任」「知識がないので意見は言えない」と考えるが、欧米では幅広い分野に意見が言える人が尊敬され、一人一人もそうできるようにするのが当たり前。

・新入社員が「間違いを恐れて」意見を言えない職場では、自分の意見を表明しない癖(=自分の意見が何であるか考えない癖)がついてしまう。

ダメな議論の例

部長:「こんな事業案が出てきているのだが、みんなの意見を聞かせてほしい」

自分:「私は賛成です。今の事業だけではジリ貧になるのは明らかです。この事業案はそれなりの投資が必要ですが、当社の資金力と技術力から考えれば、成功する可能性は十分にあると思います」

メンバーA「成功する可能性はどのくらいの確率だと思いますか?何かデータに基づいて、高いと判断したのでしょうか?」

メンバーB「今の事業がジリ貧といいいますが、現事業が売上高全体に占める割合は高く、そう簡単に切り捨てていいか悩みますね」

メンバーC「投資はどのくらい必要になるんでしょうね。資金は銀行から借りるのでしょうか?それとも今ある余裕資金で?大きな借金をするのはリスクが高いですよね」

→この場合、A、B、Cは皆スタンスをとっていない。反応しているだけなので、議論にならない。当然何も決まらず、時間だけが浪費されていく。
→前述の通り、「批判的な反応」は簡単で知的に見えるので横行する。すると意見を言った側がしんどくなり「意見を言うこと」自体をやめてしまう構図が出来やすい。
→よく「でも実際にこのパターンもあるよね」みたいな例外を出す人がいるが、例外があることは「当たり前」なので示すことになんの意味もない。だから賛成なのか反対なのか(so what)が重要。
→「こう言う状況ではこうなるし、そうでなければこうなる」は情報サマっているだけ。意見ではない。

<もし外資系だとこんなツッコミが入る>
A→質問の前に自分の意見を言ってください。あなたは新規事業に賛成?反対?
B→悩ましいから会議をしているのですよ。それぞれが意見を出して、決めないと仕事は進みませんからね。で、あなたの意見は賛成?反対?
C→余裕資金でまかなえるなら賛成、と言うことでOK?

共感できたフレーズ

・ちきりん氏が発信を続けられたのは「自分で自分という人間を理解したい」から。「自我の確立のため」

・「自分の意見を明確にするには、しっかり考える必要がある」

・意見を言う人の多くは「反応しかしない人」にイチャモンをつけられ消耗しがち。でも、めげずに意見を出し続けていれば、必ず評価は高まる。
→「めげない」「すねない」のは本当に素晴らしい能力だと思う。変革したいからこそ、イチャモンを気にしないようにする!

・どんな職業であれ、「正解のないことについて、自分の意見が言える人」には大きな価値がある。
→やりたいことは見つからなくても、これだけは心に留めて仕事する。

・意見表明力は「リアルな議論」によって磨かれる。ゆえに「意見を言い合え、議論できる仲間」がいることが不可欠。
→Tib、副業などの効能もここにある。他流試合が大事なのは、緊張感を持って議論できるからだと思う。ツーカーで反応言い合うだけでも議論っぽくなる場所では思考力は身につかない。

・本当は「意見を言う」なんて意識が高いことでもなんでもなく、ごく当たり前のことだが、日本人は小さい頃から意見を表明する訓練を受けていないため、意見を言うだけで「意識が高い」などと揶揄される。
→「意見を言う=組織やチームのためになる!」みたいな優しい世界を作っていきたい。

・意見がないときは「この情報さえあれば自分の意見は明確になる」と言うポイントをクリアにする
→これは座右の銘である「無知の知」の考え方と一致する。

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