読書ログ『イノベーション・オブ・ライフ』(原題:How Will You Measure Your Life?)
どんな本?
『イノベーションのジレンマ』のクリステンセン教授がより良い人生の送り方を説いた本。本著は「死ぬまでずっと幸福」という自分の人生の目的を達成するための指針を与えてくれ、「なんとなく惰性で良さそうな方向に生きていく」ことに警鐘を鳴らしてくれる。
特に印象的な教えを噛み砕いてまとめてみると、こんな感じ。
新しい気づきはそれほど多くなかった気もするが、これは教授の考え方をインスパイアした本が世に溢れているだけかも知れず、これらの源流となる考え方に触れられたことは良かったのかもしれない(さらに源流はドラッカー?)。
将来の幸せのために今から投資することは本当に大事なことだと思うし、前から「人生の目的のためにこの時期にお金を使うことを厭わない」という考え方(例えば友達と過ごす時間が何より楽しいからホームパーティできる広い家に頑張って住むとか。)を標榜していただけに、さらにドライブしていきたいという気持ちになった。
おすすめ度
★★★★☆
こんな人におすすめ
・今の仕事にワクワクしきれていない人
・ずっと同じ会社やコミュニティで安定した日々を送っている人
・自分の市場価値が気になり、転職を考えている人
印象的な部分のメモ
人生には経験を通して学ぶことが許されない状況が多々ある
いい伴侶になるために何度も結婚したり、子育てをマスターするために末っ子が大きくなるまで待つことはできない。そんな時理論を学ぶことが役に立つ。
もっと言うと、「この理論役に立つな〜」だけだと絶対実践しないので、真似できそうなところをあえて真似して自分の中でフィードバックを得るのが大事。特に「これって共感できないけど騙されたと思ってやってみよう」がいいのではないか。共感できるものばかりやってるようでは、自分の思考の枠からは抜けられない。
困ったことに、あなたが仕事で最も重要だと思うことは、あなたを本当に幸せにしてくれることと一致しない場合が多い
「モチベーション理論」によると、人のモチベーションの源泉には「衛生要因」と「動機付け要因」がある。衛生要因はステータス、職の安定、給料、作業条件などがある。一方で動機付け要因はやりがい、他者による評価、責任、自己成長などを指す。私たちの心を深く満足させるのは動機付け要因だが、多くの場合は衛生要因を主な判断基準としてキャリアを選んでしまう(意見:動機付け要因も重視するが、少なくとも衛生要因を過剰に重視してしまうことが多いのだと思う。)。そうすると、「仕事からはワクワクしないな、、でも条件いいからこのままでいいや」みたいな事になる。
自分も「何かを成し遂げようとすること」「会社や他者から必要とされること」「仲間と1つのものを作り上げて他者から喜ばれること」こそが自分を満足させる感覚がある。それがもしできるのなら、衛生要因はある程度整っていれば十分なのかもしれない(特に自分は比較的裕福なので金銭面での心配はあまりない)。そして、他者貢献ができるのはきっと「自分がこれを成し遂げたい」と思えることでしかないので、これをきちんと言語化し、あっと驚く方法で実現しにいくことをしたい。
創発的戦略と意図的戦略のバランスを取る
他流試合は自分の視野を広げるだけでなく戦略の創発性を高める効果もあるのだと理解。自分がよくやる「こういう状態になりたいから、こういう戦略を立てた。これが成り立つためには要は何が言えればいいのか?」と考えることがあるが、これは明確に「発見志向計画法(Discovery-driven planning:DDF)として体系化されている。
仮定を立てて尤もらしく膨らませるのは重要だが、「どこまでが仮説で、それがどれくらい楽観的で、すなわちこれをこうやって検証しなければならない」などをちゃんと言語化しておかないと、何が仮説で何がFactなのかわからなくなって迷宮入りすることがよくある。「仮説やネガティブ要素を正直に伝えた上で、それでもこうだからやりたい」と説得するのが正しいビジネスプランニングだし、偽って稟議を通したとしても自分が苦しいだけである。
「人生の窓を開けておく」ことが本当に重要で、常に「私は何をしたいんだ?」と思いながら現状を疑いつつ、いろんな新しいことを試さないと予測不可能な成長はできない。自分が座右の銘を「犬も歩けば棒に当たる」と言っていたのも似た考えに基づいている。
資源配分プロセスは意識して管理しなければ、脳と心にもともと備わった「デフォルト」基準に沿って、勝手に資源を振り分けてしまう
P.80の本書屈指の教えで、「Comfort Zoneにとどまるな」と言う名言の本質はここにあると思う。企業も人間も「今すぐ目に見える成果を生む活動に無意識に資源を配分する」という悪癖がある。これはバイアスとしてしょうがないので、いかに意識して点検して行動を修正するかで人としての豊かさすら変わってくると思う。私たちが自分の戦略に対して行う投資が積もり積もって人生になる。ゲームや動画に溺れるのも「インスタントに楽しいことに資源を配分してしまっている」証拠。勉強を頑張れる(≒学歴が高い)人は、将来の向けて嬉々として今の時間を差し出せる(もしかしたら勉強から得る学び自体が楽しみの1つかもしれないけど)と言う点で、会社も自分も変革していける資質があると言えるのかもしれない。
もっと言うと「将来を見据えて勉強やインプットを欠かさない」ことは「バイアスに囚われずに資源配分を調整する」訓練になっているのかもしれない。
達成動機の高い人の気持ちを一番手っ取り早く満たす方法は「キャリア」
人生はキャリアが全てではないが、少なくとも目の前の人生の幸せを左右するドライバーの筆頭は「キャリア」なので、多くの人はキャリアを良くするための行動にリソースを割くことになる。しかし、家族や友人関係という「ゆるぎない幸せ」の方が長期的に見たら絶対に大事。それを理解した上で日々行動すべき。
気づいた時に動き始めたのでは遅い
ブロックバスターの例もこれ。いかに「先見の明」を持てるか。もっというと「短期的にはいいと思いきれないことにいかに挑戦的に投資するか」という姿勢を持つことの重要性が増しているということ。
(これが本書後半では「成功している企業は限界費用と限界利益のバランスが取れる範囲でしか投資できないので、全費用をかけて大きなリターンを取りに行く(しかない)捨て身のベンチャーに負ける」というロジックで説明されている)
これは家族計画にも言えることで、仕事に没頭した結果60になって子供もおらず夫婦関係もいまいち、という人生をそこで悔やんでも遅い。これは恐ろしいこと。特に自分は夏休みの宿題を8/28くらいからやるタイプなので、「人生取り返しのつかないことになっていた」ということが起こってしまいうる。ビジネスは確かにエキサイティングだけど、「仕事がうまくいくと楽しいし、そうでないと辛い」というのは果たして楽しい人生なのか?とも思ってしまう。そういう意味では「やりたい仕事をやるために転職しようとしたけど、今転職してしまうとお世話になった人たちに対して後ろめたくなるし、“あいつともっと働きたかった“とも思ってもらえなくなるから、一旦辞めるのをやめよう」と決断した自分は正解だったのではないかと思えてくる。
人生の投資を後回しにするリスク
人生も仕事も「必要になるずっと前から投資しておくこと」がめちゃめちゃ大切。もっといろんな領域に時間やお金を分散投資していきたいところ。せめて金遣いだけは大胆にいきたい(一方で、人生の目的に影響しないような大胆な金の使い方、例えば競馬などはシャットダウンした。)。
「言葉のダンス」(くだけた感じで思ったことを口にし、していることやしたいことをあれこれ話すこと)を他人に浴びせるほど認知能力が高められる
これは1on1や自分の思考を自由にアウトプットするこのnoteが認知能力を高めることを示唆している!同時に、自分は「認知能力を高めて豊かな人になりたい(豊かな人だと思われたい)」のだということがよくわかった。
18歳から35歳までの白人男性だからという理由で特定の製品を買う人はいない
詳しくはジョブ理論の本に譲りたいが、カテゴリ分けによるマーケティングを批判する考え方。カテゴリは意思決定と相関こそすれ、直接の動機にはなり得ない。→非常に納得感のある例。
同じミルクシェイクでも「朝の口寂しいドライブを解消したいジョブ」のために買う人もいれば、「子供の希望を簡単に叶えるためのジョブ」のために買う人もいる。これらに共通の解決策は存在しないので、それぞれのジョブを見極めないと戦略は決められない。
戦略的に幸せな人生を送るには、人生の目的を明確化しないといけない
人生の目的を作り邁進していくには、
の3つが必要。ただし、これを達成するためのHowはアジャイルに変えていくのでOK(創発性)。クリステンセン氏も人生の目的を十分に理解するのに何年もかかった。→考え続けよう!あと、②を愚直に実践するのが本当に難しいから注意。ほっとくと道を外れると思って覚悟して臨み続けた方がいい。
最後に
イノベーションのジレンマが起こるのは、「自分が駆逐される可能性」を低く見積りすぎるからなのだとわかった。これを十分適切に見積もりさえすれば、期待値的に考えても「大胆な投資」を選ぶことができる。
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