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老健に新規・再入居の方が入居された際、初期評価(嚥下評価)の進め方


以前にも似た記事を書かせて頂きました。

ここ1~2年で新卒から老健に務められるSTさんから嚥下評価の進め方や嚥下評価の仕方をDMでご相談を受ける事が増えました。

1つの記事に盛り沢山の内容と思いましたが、長文になり読みにくくかったのでいくつかに分けて掲載したいと考えています。


前回の記事はどちらかと言うと、病院経験者向けに書いたものでした。

前回の内容と重複する内容もあるかと思いますが、今回は1人職場に就職した新卒STさんも使える新規・再入居の方が入居された際の嚥下評価の進め方をお話したいと思います。


1アセスメントや病院から情報収集

(1)新規入居の場合

病院から来ているし、嚥下評価は要らないよね、大丈夫だよねと安心される方がいるかと思いますが、必ずしもSTがどの病院にいるとは限りません。

入院されていた病院ではNSや栄養士さん、PT、OTが嚥下を見ている事もしばしばです。その人の嚥下機能に合った食形態や水分のトロミの量、姿勢等が調整されていない事もあります。

必ず入居したらすぐに嚥下評価に入りましょう。


また、入居されると分かった時点でアセスメントに目を通し、全体像を掴みましょう。

先ずは原疾患を知り、入院直後から退院に至るまでの経過も確認してみましょう。仮に嚥下障害を示唆する疾患を持っていなくても、廃用により密かに嚥下機能が低下している可能性もあり得ますので、入院直後から退院に至るまでの経過を大まかに知る事は大事です。

また、食事中の姿勢の確認も必須です。

再入居の場合も同様に何等かの理由があって入院されます。全身状態の改善の為に多くはベット上で過ごす事が多く、ADLが低下した状態で戻られる方も少なくありません。

ADLの低下に伴って、嚥下機能も低下した状態で戻られる方もいます。

入居時は自分で食べられていた、この食形態を食べられていたから大丈夫ではなく、入院後も同じ設定でも可能なのかどうかを評価をしましょう。



離床して食事を食べられている方もいるのですが、全身状態が不安定な方や整形疾患のような可動域制限がある方ですとベット上で食べられている方もいます。その場合ベット上やリクライニング車椅子と記載されている事があります。

STだけで姿勢や食事動作の評価は可能ですが、状態によっては評価が難しいケースもあります。アセスメントの段階でリクライニング車椅子やベット上の記載があった場合は、担当のPTOTに一緒に見て貰えないか相談してみましょう。

病院にて、普段の食事量や食事が進まなかった時の対応方法が書かれている事があり、今後の対応に役立ちますので必ずチェックしましょう。


血液データが掲載されているのですが、反映されていない事もあり、基準値より低いとすぐに判断しないように気を付けましょう。


また、アセスメントには書いていない情報もある為、出来るだけ早めに相談員さんに知りたい情報をお話しましょう。その上で病院に確認を取って頂けないか打診しましょう。

私の場合は直前に確認して頂く事に加え、入居日前後にご家族様が契約に来られる為、自宅での様子も聞いて頂いています。

病前の食生活を聞いて頂いています。食事中のむせ、窒息の有無、食事ペースはどうか、普段の食事量、好んでいた食べていた物、家ではどんな食事形態を食べていたかを相談員さんを通してお願いしています。

アセスメントを通して、全体像を掴んだら今後入居したらどうなっていくか同時に予測しましょう。


2.評価の流れ

情報収集をし終えたら、簡単な嚥下のスクリーニングを行いましょう。

入居後すぐに昼食にあたることが多く、最初に水飲みテストを行います。

大野木先生の改定水飲みテスト(変法を用いて)を実施しています。


注意点として、本来の水飲みテストは軽度の方に使うスクリーニングになります。中~重度の方には従来の改定水飲みテストを使用していました。

限られた時間の中で評価をするにはと考えた時に大野木先生の本に出合いました。コップ飲みから口からの取り込み、口腔内保持、分割嚥下が見れる事が魅力的だと感じ大野木先生の方法を取り入れています。

大野木先生変法の改定水飲みテストをしながら、同時に頸部聴診も行っています。

時間に余裕があり、意思疎通が取れる方であれば、同時にスクリーニングテストを行いましょう。指示理解はどの程度可能か、発声は可能か、構音の歪みや開鼻声の有無、顔面麻痺はないのか、咳払いは出来るのかも簡単なスクリーニングされると総合的に評価をする上で重要な鍵になります。

水分の評価をした後に、食事場面の観察もした上で嚥下機能の評価を行っています。出来れば、食事場面を見る際も観察だけでなく、頸部聴診をさせて貰えないか声を掛けてみましょう。

頸部聴診もしながら食,事場面の観察が出来ないなという方もいると思います。

効率良く、少しでも評価の精度を高める為に自分なりの嚥下5期に見られる症状をリストアップして嚥下チェック表を作ってみましょう。チェックをする事でどの期が保たれていて、どの点が問題なのかを明らかにしやすいです。


入居の時間帯によってはおやつの時間と重複する事もあります。その場合はおやつの時間を使ってフードテストを行います。おやつの内容がフードテストに使えるゼリーやプリンである事が多く代用しています。また、人によって蒸しパンやケーキといった軟らかいおやつを食べられるレベルの方もいる為、その場合は食べられる可能性のあるおやつで評価をします。

頸部聴診をする理由として、目には見えない事が起きている事が嚥下の怖さだと思います。頸部聴診も活用する事も小さな変化に気付く為にとても大事なものになります。

頸部聴診の判定制度は80%以上の確率で判断出来ると言われています。

(大宿先生の「頸部聴診法と実際と病態別摂食・嚥下リハビリテーション」にに掲載されています。)嚥下病態について判定する場合は、限られた異常音で判断する為、特異度に比べて感度は低くなります。確実かつ正確に評価する事が難しかったとしても、病態を予測する為の手掛かりが転がっていると思っています。また、頸部聴診の後に外部でVEVFをした際に答え合わせになると考えています。


3.食事形態の変更について

数年老健に務めて感じた事として・・

どんなに全身状態が整っていても、入居から2~3日で入院中の食形態を急に変更しないよう気をつけましょう。

理由として入院時に全量食べられていた記載があったとしても全身状態の不安定さがあり、全身状態の不安定さに伴い、食事量を確保出来ていないケースを見掛けるようになりました。

この理由として病院の稼働率を上げる関係で、ベットコントロールが施され、全身状態が安定しないまま退院するケースが増えています

病院側も出来るだけ安定した状態を整えて、退所先の施設に送りたいと考えられながらの決断だと思います。今後、コロナ禍もあり入院期間に応じて、早めに退所になる方が増える事が予想されると考えます。施設側もそういった状況に対応できるよう、我々も対策を練る必要があると思います。

アセスメントに書いていない事が起きる事もあり、当施設では入居から1~2週間は入院中の食形態のまま様子を見ています。

ある程度期間を設けて様子を見た上で、全身状態を見ながら、食事量、体重、(可能であれば血液データもあると望ましい)の変化を見て入居から2週間後前後に今後の食事の方針を検討していきましょう。

介護保険報酬の改定に伴い、他職種と集まって会議を行う所が殆どかと思います。何か変更する際は、STの判断だけでなく、他職種とも話し合った上で食事形態を上記に書いた通り、決めていく事が望ましいと思われます。

STだけの判断だけですと、責任に対するプレッシャーが強くなってしまう事や状態が悪くなった際にSTのせいと言われてしまう事があります。皆で嚥下を見ているという意識を持って頂く為に、他職種を巻き込んで他職種と相談して決める習慣を付けましょう。


上記に書いた通り、1つの記事にはまとめきれなかった為、また出来上がり次第随時更新します。




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