老健での嚥下評価・嚥下評価の進め方


(1)老健での現状


老健に老健にVEVF無いんだ・・私VEVF無しで評価出来ない。

それって評価出来ているの?心配です。

VEVFがあるから嚥下状態の確認が出来るのに・・

心配される方いますよね。

そうなのです・・

病院では定期的にVEVFで見る機会が多い所が殆どかと思います。

しかし、老健ではVEVFが完備されている所もありますが、環境が整っていない事がしばしばです。


(2)VEVFが無い場所で行える嚥下評価とは・・

私自身、実習や養成校で携わる事が少なく、座学での嚥下障害しか知りませんでした。演習はありましたが、あくまでスクリーニング時の対応しか扱って頂けなかったのでSTになってから初めて食事介助をしました。

座学の知識しか知らないので、臨床場面で評価を求められると全くと言って分かりませんでした・・典型的な嚥下障害には気付けるのですが、進行性や認知症特有の嚥下障害は何それ・・習っていないから分かりません・・お手上げ状態でした。嚥下が分からない・・どうしようか

全然知識が臨床に繋がらず、不安を抱えながら文献を探しました。そこで大野木先生と大宿先生の本に出会いました。


どれもこれも目から鱗で、真似から始めようとお二人の評価方法と考え方や評価の仕方を元に取り入れる事にしました。

特にその中で大野木先生の嚥下評価の仕方は老健で1人STとして業務をこなす上で実践的でした。先ずは大野木先生の嚥下評価を取り入れました。


基本的には頸部聴診と触診を駆使しました。

簡単な嚥下のスクリーニング、RSST、改定水飲みテスト、フードテスト、食事場面の観察を元に評価を行うようにしました。

傍から見たらこんなで嚥下の評価をしているのだろうかと思われていたような気がします。

頸部聴診の判定制度は80%以上の確率で判断出来ると言われています。(大宿先生の「頸部聴診法と実際と病態別摂食・嚥下リハビリテーションにに掲載されています。)嚥下病態について判定する場合は、限られた異常音で判断する為、特異度に比べて感度は低くなります。確実かつ正確に評価する事が難しかったとしても、病態を予測する為の手掛かりが転がっていると思っています。また、頸部聴診の後に外部でVEVFをした際に答え合わせになると考えています。



↑今は中古本でしか取り扱っていませんが・・同じく大宿先生の「食べて直す!頸部聴診法と摂食嚥下リハ実践ノートにも頸部聴診法の実際が書かれています。


(3)嚥下評価をした上でSTはどう立ち回ったら良いのか?

前回の老健でのSTの働き方にも書きましたが、老健ではSTへ嚥下の需要が高く、嚥下のコーディネーター的役割を求められます。主に食事形態の管理や評価をし、ST的な視点のアドバイスが多職種から日々の現場でお願いされます。

上記に書いた嚥下評価方法を用いて、新規入居の評価やフロアからご相談を受け、対応するようにしています。というのも・・過去に携わったSTの先輩方の殆どが自分で何とかしようと抱え込んでいました。

私もその影響を受けて24時間全力で、1人1人の状態把握に努めようと試みた時期がありました。ケア記録を必死で追ったり、情報収集するのですが・・ここに力を注いでしまうと心がもたなくなり、全力疾走を止める事にしました。

ふと思い返すと、STばかり奮闘しているのでは?1人で燃え上がっていないだろうか。空回りして何も状況は動かないという事に気が付きました。また同時に、嚥下機能だけでなく、姿勢や食事動作、栄養面といった総合的視点で判断する事が大事だと言う事に気付かされました。

特に食形態や水分のトロミの調整は、生活期ならではの判断に困るケースが多く存在します。機能的には能力はあっても、先行期の要因ですぐにトロミを外していいのか、食事介助の見極めが難しいのです。

STなのに即判断が出来ない、対応が出来ない、予測が出来ない、分からないと言うのは弱音なんじゃないかと殻に閉じこもっていました。

他職種に「あのST信頼出来ない、不安だ」と言われるのでは不安でした。


思い切って食事形態を上げる時や一部介助から見守り、水分のトロミの解除の判断に悩む旨を話すようにしました。

他職種の協力がある事で達成出来る事が多く、自分で判断が難しい時は他職種にも相談して決めるようにしました。思いの外、小さな事から情報を発信するようになり、日々他愛ない事でも報告や相談を頂けるようになりました。周囲を巻き込んでアプローチする事で嚥下の知識や技術が徐々に浸透されていくように感じました。

嚥下障害がある方の中にこれまで通りの水分や食事形態を楽しみたい方もいます。他職種と話し合い、ご家族にその旨を伝え、日常生活上では誤嚥リスク承知の上で検討する事があります。水分トロミを付けたり、食事形態を急に下げる対応はせずQOLに沿って対応させて頂く事もあります。


STの数が増えているとは言え、老健に常勤STが勤務する所は少なく、STが不在時に対応に困るケースもあります。嚥下に興味を持って下さっている絶好のチャンスだと思い、STが不在時に出来る対応方法を伝えました。正直言って完全とはまだまだ言えませんが、利用者さんがいつもと違う様子に気付いて、対応して下さるようになりました(今後もアップデートが必要です)

特にST1人だと業務負担の事も考えマニュアル化が難しい面がありますが、徐々にそういったマニュアルを検討していっても良いのではないでしょうか。


最後に

この度も最後まで読んで頂きどうもありがとうございます。

また、Twitterでこれまで発信した内容をnoteに綴っていきたいと思っています。

今後ともnoteでも宜しくお願い致します。



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