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リモートワークでは教えてくれない、広告代理店マンの御礼メールの書き方

飲み会が終わったら御礼メールを送る。

一緒に飲み会に参加した面々が、役職者に続々と御礼メールを送る様子を見て「うわ、だるいな」と思いながら、ブービーかビリくらいのタイミングで、しぶしぶ残念な御礼メールを送るのが20代前半の私でした。

翌日に御礼メールを書かなければいけないような飲み会に参加するのが本当に嫌で、適当に嘘をついて宴会に参加しないこともありました。(その節はすいません)

そんな私も広告業界に身をおいて10年経つと、そのときの状況に応じた御礼メールを送れるようになりました。Evernoteの「御礼メール」ノートブックには、あらゆる場面に対応できる御礼メールのテンプレートが詰まっています。

多くの広告代理店ではリモートワークが続いており、さらに宴会自粛の中、新人はこの手の指導を受ける機会がないのではないか?と思い、筆をとることにしました。

御礼メールとは何か

例えばコチラが大型案件のチーム新年会の例です。

新年会に招待して頂き、誠にありがとうございます。
今回も笑顔が満ち溢れた会で、とても楽しむことが出来ました。

途中、私のつたないお話に耳を傾けて下さり
ありがとうございました。(恐縮です)

●●さんから「必勝」=「必笑」という目標とメッセージを
確かに受け取りました。それを胸に、地に足をつけて日々の業務に
粛々と取り組んで参る次第です。

私はこのような御礼メールを送ったあと、主催者の自席に伺って、直接一言感謝を伝えまるでを御礼1セットにしています。相手によってはメッセンジャーなど使い分け、そういう場合は文章を崩したり短くします。送るタイミングも帰りの電車か、翌日かも調整します。

「御礼メールは大丈夫だよ」といってくれる人には、直接自席に伺い挨拶。もし不在だったら「お席にご不在でしたので」と軽めの御礼メッセージを送ります。

なぜ送るのか?

御礼メールや挨拶の目的は媚びを売ることではありません。これは持論ですが「損をしないため」のウェイトが大きく、「稀に少しだけ得をするから」習慣に取り入れています。例えば御礼の所作を徹底していると、

「お前は育ちがいいな」
「そういうところ本当にしっかりしている」
「またいこうな」


と言われたりします。これが損をせずに、得をした状態です。こういうところを押さえておくと「余計なところで損をしない」のです。そういう所作を見て大きい仕事を任せてもらうキッカケになることもあります。

私が損をしないために徹底する理由として、実務から離れてマネジメント層・経営層になるほど「平社員を飲み会の所作で判断する」様子を何度も見てきたからです。若い頃は、それを起点に評価されたと感じた苦い思い出もあります。

当時は根に持ち悔いたものですが「周りの評判」と「飲みの場の会話」でその人の仕事ぶりが分かるという理論も、今ではわかります。また、自責の論理で考えればこうも考えられます。

・自分の評判をコントロールできていない
・飲みの場で”だめだこいつ”と思われる言動をしてしまった
・普通に仕事の評価が高くなく、自己評価と乖離があった

いろんな要素が絡むので、いつどれに当てはまるのかは知る由もありませんが、自分の及び知らないところで「損をしない」ための要素のひとつに、礼節が関わってくるのは確かだと思います。

見える情報だけで判断しないこと

似たり寄ったりの御礼メールが団子が重なるように送られているのを見ていると「この程度の内容でいいんだ」と思うかもしれません。また、一定の割合で送っていない人が居ることに気が付いて「忙しいし今回はいいか」と後回しにして、そのまま忘れることもあるでしょう。

しかし、本気度の高い人はちゃっかりTOで情熱的な文章を送っていたりします。御礼メールを全員返信で送る同盟ルールなんてありません。全ての御礼メールで気を張る必要はないんですけど、社内向けでも社外向けでもあなたの勝負所や、ヒットを打たなければいけない場面があるはずです。

私が思うのは「社内で御礼メールを書く習慣がない人は、取引先やパートナーに対しても、肝心な時に感謝ができない」傾向にあるいうことです。これはメールを送る、送らないの100:0の話に限らず「引き続きお付き合いしたいと思われる言動が出来るか」という意味も含みます。

このnoteは御礼メールを起点に語りますが、「引き続きお付き合いしたいと思われる」なら手段はなんでも良いです。例えば圧倒的な成果を上げ続けるとかでも。私はそう思ってもらう手段は複数できましたが、今でも効率的かつ汎用的に機能する手段は御礼メール(メッセージ)だと考えています。

どんなときに送るか?

慣れないうちは「誰」という起点から「役職者に送るもの」と判断しがちですが、私は「何に感謝するか」に焦点を当てています。

【受動的】
・ご馳走になった(飲み会、喫茶店)
・祝ってくれた(誕生日、歓送迎会、達成会)
・助けてくれた(仕事、事務作業、悩みごと、調整事)
・忙しいなか、足を運んで参加してくれた
・有益なアドバイスをくれた

【能動的】
・もっと交流したい
・もっと指導してほしい
・もともと話したいことがあった
・自分の野心を買ってくれそう

このあたりのいずれか、または複数ヒットすれば送る理由になります。「誰」ベースにすると、役職が上のほうを見がちですが、感謝すべきことに焦点をあてると「誰」はあまり関係なくなってきます。

一番丁寧な形が飲み会後の御礼メールですが、感謝を伝える機会は色んなタイミングであるので、関係性に合わせてメッセンジャーや口頭など「ライトな形」で感謝を伝えるのは全然アリです。

やらない理由より、やる理由

余談ですが、ときどき「飲み会は会社のお金で開催されたんですよね?」「なので主催者に”ご馳走様”って言う必要あります?」といった屁理屈にパラメータを振った一休さんみたいなことを言う人がいます。

役職者が会社のお金で飲み会を開くにも

・事前申請
・事後処理
・経費で開催する必要性の説明
・仮払い(建て替え)
・経理や承認者に小言を言われる

などのいずれか、または複数の項目を必ず踏んでいます。その背景を知ろうが知るまいが「ご馳走様です」「ありがとうございます」に込めて、「感謝・御礼」として良いと、私は考えています。

書き方

何度も御礼をメールを書いていると、御礼メールには構文があることに気づきます。テンプレっぽくありつつも、相手に感謝を伝えながら、オリジナルの内容も含み、気持ちよくフェードアウトしていくような内容の構文です。

冒頭で紹介した、この例文で解説したいと思います。(この例文自体が良いとは限りませんし、考え方を学ぶ材料だと思ってください)

新年会に招待して頂き、誠にありがとうございます。
今回も笑顔が満ち溢れた会で、とても楽しむことが出来ました。

途中、私のつたないお話に耳を傾けて下さり
ありがとうございました。(恐縮です)

●●さんから「必勝」=「必笑」という目標とメッセージを
確かに受け取りました。それを胸に、地に足をつけて日々の業務に
粛々と取り組んで参る次第です。

1,挨拶と感謝

まずは冒頭で感謝を述べます。

新年会に招待して頂き、誠にありがとうございます。
今回も笑顔が満ち溢れた会で、とても楽しむことが出来ました。

この部分では「新年会に招待して貰ったこと」に感謝しています。小規模の会なら「ご馳走様でした」という言葉を置くのですが、大規模であったことと、主催しているのはシニアな人なので「あなたが開催された会は今回も素敵でした」というメッセージのほうが、貰ったほうが嬉しいと考えました。

2,独自 or 汎用

御礼をする相手との独自のコミュニケーションについて触れます。もしそういった接点がなかった場合は汎用的な内容にしますが、事前に御礼することまで頭に入っていると、その会の最中に「御礼する相手と何か1つ接点作っておく」という意識が生まれます。

途中、私のつたないお話に耳を傾けて下さり
ありがとうございました。(恐縮です)

ここでは「話を聞いてくれた」ことに感謝しています。末尾に「恐縮です」と重ねるのは自分特有の癖なのですが、謙虚に深く伝える目的で使います。

これは余談ですが「御礼されまくってる」ようなベテランと接すると「その時計いいね」とか「その靴いいね」など、気持ちの良い話題のフックを複数持ち、さらにその話をびっくりするらい具体的かつ面白く広げるというプロのフリートークに直面することがあります。その会話の尺も本当にちょうどよく終わる。見習おうと感じる発見があったりします。

3,ハイライト

その人へのメッセージを入れます。

●●さんから「必勝」=「必笑」という目標とメッセージを
確かに受け取りました。
それを胸に、地に足をつけて日々の業務に
粛々と取り組んで参る次第です。

「何が必笑を確かに受け取りましたじゃ!」と自分に突っ込みいれたくなるのですが、それはさておき。このブロックでは話を聞いてもらったときに貰ったアドバイスの内容を拾っています。

ここで相手に伝えたいのは「あなたの話をちゃんと聞いていましたよ」「翌日になりましたけど、覚えています」ということです。意外と相手は誰に何を話したか覚えています。もしアドバイスを貰ったのにテンプレ御礼メールを送信したならば、次回から私の話を聞いてくれる機会は減り、今後真剣にアドバイスしてくれることは無いでしょう。

4,前向きな自己完結

ハイライトと被るのですが、分けて解説します。

●●さんから「必勝」=「必笑」という目標とメッセージを
確かに受け取りました。それを胸に、地に足をつけて日々の業務に
粛々と取り組んで参る次第です。

ハイライトから、前向きな自己完結に結びつけています。結局は普段の日常仕事に戻る当たり前のことですが、それっぽく言っています。ときどき「勢いやテンションで重い宣言をしてしまう人」を見かけます。昔の私がその1人なんですが、それが継続して形になった人をあまり知らないので、本気でそれをする気がないなら、やめたほうがいいでしょう。

もう1つ気を付けたいのが「またよろしくお願いします」「楽しみにしています」など「無意識に相手にボールを投げ返す」締め方をするケースです。これは相手からすれば平均点以下の返しなのではないかと思います。関係性と書き方次第では「上から言ってるの?」と捉えられかねません。

意図して「企画を見てほしい」「〇〇の件でお話を聞いてほしいことが」「実は気になっているお店があって…」など具体的で前向きな話を盛り込むなら良いと思います。このアクティブ度合いが好まれるかは相手、関係性、頻度、タイミングを選びますが。

社交辞令で「またお願いします」と書くくらいであれば、前向きな自己完結で終わらせたほうが気持ちが良いのではないか、というのが持論です。このあたりはそれに至る会話の内容や、言い方ひとつなところはあります。

まとめ

「独自」パートのネタ作りと調理法でセンスが出ますが、この構文で書けば、意識していない人と比べて埋もれる文章にならないはずです。これを読んだ人は、まず平均点をとる打席を重ねながら、重要な時に能動的に仕掛けていつかチャンスを得られると良いなという想いで書きました。

ただですね、リモートワークは未だに残り、宴会は自粛の世の中です。「オンライン飲み会」で御礼メールを送るかと言ったら、私はまだそういった機会に遭遇しておらず、送る機会はありません。

そんな環境なのになぜ話したかというと、今思えば御礼メールというのは礼節を学ぶ良い機会だったからです。若手は「社長とオンラインでランチ」みたいな話も聞くので、機会はあれども、例年より継続的に行う機会は少なそうだからです。

礼節というのはいろんな所作に反映され、社会人として生きていくうえで普遍的なスキルなので「磨いていくべきもの」と覚えておくと、いつか少しだけ得をするかもしれません。

https://twitter.com/shohatano

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