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ゆとり世代と小さな宇宙人

最近、「がん、じ、て(頑張って)」と仕事に送り出してくれるようになった我が家の小さな宇宙人。実は、カカに内緒で、トトとの秘密の交信にはまっている。二人だけの、拙くて温かい、至福の時間。

だいたい交信が始まるのは、17時前後。仕事中のトトに、カカの携帯から電話が鳴る。トトは会議中であろうと、「これは急用!!」という表情を本気で作り、迷わず席を立つ。
なぜなら、これを逃すと、次いつかかってくるか本当に読めないからだ。

トト「もしもーし」。

こうめ「うーーあっ おーい」。

受話器の向こうの宇宙人は、言葉にならない声で、嬉々として呼びかけてくる。

トト「またかけてきたの?」
こうめ「うーん」
トト「誰と喋ってるかわかる?」
こうめ「トトーととー えっ! トートーーー」

携帯はやはり最強のおもちゃなのだろう。トトやカカが操作をし始めると、一目散に走ってくる。できるだけ、携帯は見せたくないと思い、隠れてやろうとするのだが、もう一個どこかに目がついてるのか?と思うくらいすぐに見つかる。それでも、携帯を渡して操作させることだけは、避けていた。

しかし、1ヶ月ほど前だろうか。
突然、交信が始まった。こうめがいつのまにか、ロックという難問さえも解いていたのだ。

カカの携帯は、気を抜くと、我々の死角になるソファーの裏に、拉致される。すぐに気づいて、取り押さえるのだが、そのわずかな時間、地道にロックの解除法を研究していたとみられるている。

読めないながら、漢字で登録されたトトのフルネームも認識。そのボタンを押すと、トトにつながることも独自の研究からものにしていた。

最初は、すぐにカカに報告した。
やめさせなきゃと思っていたからだ。
しかし、カカの包囲網をかいくぐり、交信を試み続ける小さな宇宙人を思い浮かべると、ニヤニヤしてしまった。
4度目の交信から、通報することを、やめた。

この交信も、昨日で20回になった。手馴れたもので、カカが洗濯や洗い物をする間に、
交信をしてくる。
カカが気づきそうになると、
「バッバーイ!」とすぐに交信を終える。

時には、
「カカ 寝んねー」と、
カカがうたた寝をしていることを
報告してくれるようになった。

「びりだーい びりだーい」と、
最初は理解できなかった暗号も会話を続けると公園ですべり台をして、
カカと遊んできたという報告だった。

自宅と仕事場。完全な別世界として切り離してきた空間が、拙い秘密の交信のおかげでつながり始めている。

「しー、カカ寝んねできなくなるから、
ありさんの小さい声で話そう」

「うーん・・ トト!!」

「しーー!」

いつまで続くか分からない交信を
1日でも長く続けたい。
トトは今日も会議の最中に携帯をいじる、
「ゆとり世代」を演じている。

#エッセイ #子育て #育児 #パパの子育て #携帯 #家族 #大人になったものだ










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