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ファイブ・ウェイ・ポジショニング〜フィットネスクラブ・スポーツジム 業界編〜

先日、noteで「ファイブ・ウェイ・ポジショニング」の本のまとめを書きました。

今回は、特定の業界のファイブ・ウェイ・ポジショニングに関してまとめてみたいと思います。

その業界は、フィットネスクラブ・スポーツジムです。

背景としては以下の3点です。

(客観)
・新型コロナウイルス環境下で、伸びた企業とそうではない企業がわかりやすい
・日本の人口の5%以下しかまだ浸透しておらず、超高齢社会や体験価値重視など、健康や運動への興味関心や日常生活での比重は増え、マーケットサイズが大きくなると期待されるため
(主観)
・自らが、この1年で一番通い、トレーニングにも励んだ

このような観点から、フィットネスクラブ・スポーツジム業界を選びました。

フィットネスクラブ・スポーツジム業界の現状

まず、フィットネスクラブ・スポーツジムの現状を整理します。
この1年は、新型コロナウイルスの影響もあり、大きなダメージを受けました。
市場規模が3割超減少したとも言われています。

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(参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000296.000043465.html

帝国データバンクが保有する企業データベースを基にフィットネス事業者の業績を調査した結果、通期予想を含めて2020年度業績が判明した約500社のうち、7割超で前年度から売上減少となることが分かった。このうち、減収となった企業の売り上げ減少幅は平均で20%を超えており、前年度から半減以上となった企業もある。
フィットネスクラブの苦戦が続いている。帝国データバンクの調査では、昨年度(2020年4月~21年3月)に発生したフィットネス(スポーツジム)事業者の倒産や廃業が累計26件に上った。19年度の23件を上回って過去10年で最多となり、過去20年間ではリーマン・ショック直後で需要が大きく後退した2008年度の29件に迫る。
(参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000296.000043465.html )

クラスターが発生したわけではないものの、都内を中心に大手のフィットネスクラブ・スポーツジムでは休業の措置をとった企業も多く、非常に苦しい状況です。

さらに、大手のような総合型フィットネスクラブ・スポーツジムになればなるほど、施設や人件費などの固定費が非常に重く、さらに厳しい状況で、閉店した施設も多くありました。

一方で、ANYTIME FITNESS(エニタイムフィットネス)のように、休業せずに運営していました。

この判断は協会に加盟しているかどうかによっても異なるようです。

とはいえ、日本は、海外に比べてフィットネスクラブやスポーツジムに通っている割合はまだまだ低い状況です。

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(参考:http://ke.kabupro.jp/tsp/20201216/140120201214434537.pdf)

フィットネスクラブ・スポーツジムに該当するカテゴリーの企業の売上ランキングは以下の通りです。

1位:コナミHD (634億円)
2位:セントラルスポーツ (542億円)
3位:ルネサンス (460億円)
4位:ティップネス(日本テレビHD) (377億円)
5位:カーブス(コシダカHD) (279億円)
6位:RIZAP株式会社 (275億円)
7位:東祥 (201億円)
8位:東急不動産HD (179億円)
9位:野村不動産HD (170億円)
10位:バローHD (131億円)
(参考:https://gyokai-search.com/4-club-uriage.html](https://gyokai-search.com/4-club-uriage.html)

フィットネス業界の カオスマップ

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(参考:https://newscast.jp/news/1283027)
左上の総合型フィットネスクラブの顔ぶれはここ数年変わりませんが、それ以外に関しては、非常に入れ替わりが激しい印象があります。また、なかなか定着してこなかったという印象がありますが、ここ数年でカテゴリーの確立から、カテゴリー内のプレイヤーの安定期に移りつつある状況です。

2020年に上場したエニタイムフィットネスを運営する株式会社Fast Fitness Japanの成長可能性に関する説明資料の中にはフィットネスクラブのポジショニングを現した資料があります。

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参考:http://ke.kabupro.jp/tsp/20201216/140120201214434537.pdf

今回、取り上げる企業の簡単なご紹介

ティップネス

・企業名:日本テレビホールディングス株式会社
・店舗数:170店舗(総合型60店舗、24時間ジム110店舗)、受託施設(指定管理含む) 14施設 (※2021年6月1日時点)
・売上:377億円
・特徴:ジムだけではなく、スタジオやサウナ、お風呂、プールなど数多くの施設を展開する総合型フィットネスクラブ

カーブス

・企業名:株式会社カーブスホールディングス
・店舗数:国内店舗数1,988店舗(直営75店舗、FC1,913店舗). (2021年5月末時点)
・売上:250億円(2020年8月期)
・特徴:30分のサーキットトレーニングを中心に展開する女性専用の施設

ライザップ(ボディメイク)

・企業名:RIZAPグループ
・店舗数:123店舗(2021年6月)
・会員数:16万人(2021年6月)
・売上:275億円(2020年3月期)
※ボディメイクだけではなく、GOLFなども含む。
・特徴:短期間で結果にコミットすることを目的とするパーソナルトレーニングジム

エニタイムフィットネス

・企業名:株式会社Fast Fitness Japan
・店舗数:872店舗(直営店152、FC店720)(2020年12月末)
・会員数:55万人(2020年12月末)
・売上:111億円(2021年3月)
・特徴:24時間運営・スタッフも最小限で、マシントレーニングを中心に展開するスポーツクラブ

フィットネスクラブ・スポーツジム業界のファイブ・ウェイ・ポジショニング

<ティップネス>

第一の要素_「商品」
■ジム〜サウナ、温泉までの総合的な施設
・トレーニングや運動のためだけではなく、リラックスなどへのニーズも加味した総合的な施設提供
■スタジオ
・エクササイズやストレッチなどニーズにあわせたスタジオエクササイズを準備。
■プール
・小学生〜高齢者まで幅広いターゲットへの価値提供として、プールの設備を準備
・プール教室などを行うことで、通常のスポーツジムでは取り込みづらい子どもをはじめ、家族へのアプローチが可能になる。
■商品やサプリなどのグッズ販売や体験
・自宅でも使えるトレーニンググッズやサプリメントの販売
・靴やウェアなどの販売
・メーカーなどによる試供品の提供やプレゼント、利用体験などの実施
第二の要素_「サービス」
■ターゲットやニーズに合わせた多様な料金プラン
・通いたい時間帯や回数に合わせた料金プランを設定
■インストラクターやスタッフのサポート
・使い方などのレクチャー
・コミュニケーション
■パーソナルトレーニング
・パーソナルトレーナーによる個別指導
■オンラインサービス「torcia(トルチャ)」の提供
・自宅でもトレーニングを促進し、習慣化


<カーブス>

第一の要素_「経験価値」
■3つのMによる気軽な運動
・「No Men」
男性の目を気にせずに運動でき、スタッフも全員女性
・「No Make-up」
メイクする手間が要らず、手軽に通える&化粧が落ちるほどの汗はかかない
・「No Mirror」
自分の体型を気にせず、運動に集中できる
※カーブスという名前が「女性の曲線美」から名付けられた。
■モチベーションの維持による継続率UP
・同じ境遇であるため、仲間意識が働きやすい
・インストラクターがファーストネームで呼び、一人一人に合わせた指導とコミュニケーションを実施
第二の要素_「アクセス」
■住宅街をメインとした立地
・ターゲット層である50代主婦が、週2〜3回通いやすい。
■営業時間を平日や日中に集中
・ターゲット層が活動しやすい時間帯
・休日は閉店
■入店〜運動までの流れが、「摩擦レス」
・入店後から運動まで、そのまますぐに取り組むことができる配置。
■手の届きやすい月額会員費
・月々5,700円〜


<ライザップ(ボディメイク)>

第一の要素_「経験価値」
■短期間で変化できる
今までも取り組んできたが、結果的に変化がなかった人たちが、ライザップで「結果」が出る
■「変われる」という自信
トレーナーと二人三脚で、短期間でコミットすることによって、結果がでるので、「やればできる」という自信を持つことができる
■顧客にあわせた完全カスタマイズ
・トレーニング内容
・食事指導
・モチベーション維持のコミュニケーション
第二の要素_「サービス」
■全額返金保証制度
・他のジムにはない制度
■強制力による成功コミット
・甘えやサボりを防ぐための仕掛けと仕組みをパーソナルトレーナーが提供する
■顧客に合わせたトータルサポート
・トレーニングメニューや食事サポート


<エニタイムフィットネス>

第一の要素_「アクセス」
■24時間年中無休
・いつでも空いているため、行きたいタイミングでジムに行ける
■全国相互利用可能
・全国どのエリアでも利用可能
・全国に900店舗以上
■来店〜トレーニング開始まで最短で実施可能
・土足で利用可能
・来店からマシンまで最短経路で設計
第二の要素_「経験価値」
■トレーニングのみに集中できる環境
・最新の機材
・清潔感のある環境
・スタッフとの最低限のコミュニケーションで、トレーニングに集中できる
・トレーニング意欲の高い属性の会員が多く、類似している人が多く、仲間意識が持ちやすい。
■ブランド力
・グローバル展開していることに対する安心感
・エニタイムフィットネスでトレーニングをしているという自尊心

まとめ

フィットネスクラブ・スポーツジムといえども、多種多様なポジショニングをとっています。

個人的には、今回ご紹介したティップネスをはじめ、総合型スポーツクラブは、今までのビジネスモデルだと踊り場にきている印象があります。

総合型スポーツクラブに求められるニーズが変化してきている印象です。

例えば、以下のニーズや役割があるのではないか?と実際に通っている中で、会員の方をみている中で感じます。

・サウナや温泉、銭湯というリラックス目的
・ジムエリアのみを好きな時に利用したいというニーズ
・コミュニティとしての役割(仲間づくりや会話をしたい)
・スクールやパーソナルトレーナーなど、個人に特化したカスタマイズ性の高いニーズ

一箇所の施設内で展開するのか、複数のタッチポイントを設けるのかといった違いはあるものの、JR東日本スポーツ株式会社が運営するJeXer(ジェクサー)は多様なニーズを拾いにいくサービスを展開し、価格プランなどもさまざまなものを展開している印象です。

※「eスポーツ」まで展開しているのは驚きです。

私個人の生活にも欠かせないものとなっておりますので、今後も注目していきたいと思います。

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