ヒプノシスマイクにハマって小説を書こうとしたが挫折した話

きっかけは、私がぽつりとつぶやいたひとつのツイートだった。

「二次元キャラは年を取らないから、ヒプノシスマイクのキャラクターがおじいちゃんになったところは見られないんだなあ……」

これを見た友人(私をヒプノシスマイク沼にハマらせた張本人、以下Aとする)がLINEを送ってきた。

「そういうときの二次創作やんけ!」
「いや、私はお話を考えるのが苦手なんだよね」
「じゃあオレが原案やるから小説書いてよ!」
「よしわかった、じゃあさっそく打ち合わせだ」

話は早かった。ZOOM会議を録画しながら、設定を詰めていくことにした。このとき私は開口一番、「先に言っておきたいんだけど、絶対けんかしたくない!」と言った。人と共同でなにかをやるとき、仕事なんかもそうだが、けんかみたいになってしまうことは少なくないからだ。それだけは絶対に避けたかった。

「どうする? 誰を主人公にする?」「盧笙先生がいいな。校長先生になって、定年退職してて」「そこへかつての教え子がなにか相談しに来て」「いいね、そんで簓に相談して解決したりして」などと話はどんどん進んだ。「私は関東弁で書くから、あとでセリフだけ関西弁に変えて」とかも決めた(Aは関西出身者である)。

しかし途中で「我々は老人ではないから、老人の行動が想像できない」と気づいてしまい、設定を『今から10年後のヒプノシスマイクの世界』へガラッと変えた。打ち合わせは盛り上がり、細かい設定がどんどん出来ていった。とても楽しかった。
「とにかく、楽しんでやろう。しんどくなったらやめよう」
ふたりで、そう決めた。けんかにはならないだろうな、と思った。

数回打ち合わせをし、プロットはすべて揃った。あとは書くだけだ。

しかし。3時間ほどで600字くらい書いたものの、続きが全然書けない。私はもともと、「自分のこと」しか書けない人間である。小説を書いたことがないわけではない。が、5年ほど前、単著を出すために書いた原稿が最後だった。おじいちゃん俳優についての本だったので、「おじいちゃん俳優とご飯を食べるだけの短編」を何本か書いたのだ。いわゆる夢小説であるが、そのときの私はそれが夢小説であることを知らなかったため、誇らしげに人に見せたりしていた。今思うと本当に恥ずかしい(ちなみに、完成原稿から小説部分はばっさりカットした)。

おそるおそるAに「ちょっと書けたんだけど」と言って見せた。Aはめちゃくちゃ褒めてくれた。ノセるのがうまい人だなあと思った、ありがたかった。そしてもうちょっとだけ書き足したところで、私は別の趣味のために小説を書く時間が取れなくなってしまった。

そうなるともうだめだった。まったく書く気になれない。1ヶ月ほど放置し、今に至る。これはもう無理だな、と思った。それでも、打ち合わせは楽しかったし、誰かと何かを作っていくことは有意義であったと思う。

最後に、供養の意味も込めて、書いたぶんだけを載せておくことにする。

タイトル未定・10年後の躑躅森盧笙

梅雨の夕暮れ、急に気温が下がってきた。職員室には盧笙以外、もう誰も残っていなかった。テストの採点中、息抜きにと眼鏡を外し天井を見つめていた彼は、いつの間にか眠ってしまっていたようだった。

 ひとりの生徒が近づいてくる。二年生の男子だ。生徒は思い切って声をかける。

「……先生、盧笙先生」

 その声に驚いて目を覚ました盧笙は、つとめて冷静にこたえる。

「なんだ、まだ居たのか。早く帰りなさい」
「先生、夏の全国大会に出たいんです!」
「全国?」

 今のヒプノシスマイクは機能が弱まり、一般的に使われる安全な道具となっていた。争いが終わるまでに十年の月日が流れていた。今や、ラップバトルは「競技」としてひろく楽しまれるようになっていた。盧笙が顧問をしているラップ部は弱小で、部員も三人しかいなかった。

「サポートメンバーもいないよ。三人だけで戦い抜くには……」
「だから、夜まで練習したいんです。先生、顧問でしょう?」

 おとなしい印象だった生徒が本気の声をあげていることに気づいた盧笙は、胸元にさげていた眼鏡をかけなおす。

「そうか、そうだな。すまなかったね。じゃあ、部室に行こうか」

〜練習風景(将来のことについて相談を受けアドバイスをする)〜

 セミの鳴き声が響き、太陽は真上にあった。中部以西地区大会の会場となった体育館には、多くの観客が集まっている。緊張した面持ちの生徒たちを励ますため、盧笙はいつもより大きな声で言った。

「よし、いくぞ! 君たちならやれる!」

〜結局負ける 相手方はナゴヤの強豪校→優勝〜
〜でもバンドの結束は強まって敵とも仲良くなる〜

「やっぱり強かったですね」
「当たり前だ、優勝候補だぞ」
「でも、最初の方は僕たちがリードしてたよね」

 大敗を喫したわりに、すっきりとした表情で生徒たちははしゃいでいた。達成感があったのだろう。

 盧笙は少し目を細め、相手チーム顧問を見た。そこにいたのは、どこかで見覚えのあるようなブタのキーホルダーを腰に下げた、長髪の先生だった。

「十四君?!」
「盧笙さん、お久しぶりです! いい試合でしたね!」

 にこにこと愛嬌たっぷりに近づいてくる十四に、盧笙は少し困ったような顔をして応える。

「いいもなにも、ウチはボロ負けだったじゃないか……」
「いえ、本当にいい試合でしたよ。このあと、近くのファミレスでお疲れ様会をするんですが、盧笙先生たちも一緒にどうですか?」
 
 盧笙の生徒たちはずいぶん嬉しそうだった。十四の生徒たちも乗り気のようだ。断る理由などない。

〜後輩芸人と打ち上げ中の簓と鉢合わせる(一瞬あれ?となる。事前に、目を細める描写を2〜3回いれておく)〜
〜本物のササラや!と大盛り上がり〜
〜今日は俺のおごりやー!楽しい感じで終わる〜
〜もうすぐ秋が来る 月が綺麗だろう〜
〜月に関するウンチクとか名言とか うまいこと言って終わりたい〜
〜一番手になれないやつでも悪くないよ、という話〜

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