妊産婦に纏わる労働法事情

妊産婦に関する法律体系を少し纏めてみることにする。

労働基準法

まず、労働基準法第六章の二では「妊産婦等」として、妊婦たちの労働基準を定めている。64-68条が該当する条文だ。

「妊産婦」とは法律において「妊娠中の女性及び産後一年を経過しない女性」のことを指す。第64条では、まず妊産婦の就業制限として坑内業務と危険有害業務の就業制限を定める。

第六十四条の二 使用者は、次の各号に掲げる女性を当該各号に定める業務に就かせてはならない。
一 妊娠中の女性及び坑内で行われる業務に従事しない旨を使用者に申し出た産後一年を経過しない女性 坑内で行われるすべての業務
二 前号に掲げる女性以外の満十八歳以上の女性 坑内で行われる業務のうち人力により行われる掘削の業務その他の女性に有害な業務として厚生労働省令で定めるもの
第六十四条の三 使用者は、妊娠中の女性及び産後一年を経過しない女性(以下「妊産婦」という。)を、重量物を取り扱う業務、有害ガスを発散する場所における業務その他妊産婦の妊娠、出産、哺ほ育等に有害な業務に就かせてはならない。


次に、65条はいわゆる「産前産後休業」に関する取り決めだ。産前6週・産後8週の根拠となる条文になる。

第六十五条 使用者は、六週間(多胎妊娠の場合にあつては、十四週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。
○2 使用者は、産後八週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後六週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。
○3 使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない。

「多胎妊娠」とは2人以上の赤ちゃんを同時に妊娠すること、要は双子だ。双子の場合は、前14週が認められている。そして、3項にある通り、本人から希望があった場合には、他の軽易な業務に転換させることは使用者の義務である。

続く66条では、

第六十六条 使用者は、妊産婦が請求した場合においては、第三十二条の二第一項、第三十二条の四第一項及び第三十二条の五第一項の規定にかかわらず、一週間について第三十二条第一項の労働時間、一日について同条第二項の労働時間を超えて労働させてはならない
○2 使用者は、妊産婦が請求した場合においては、第三十三条第一項及び第三項並びに第三十六条第一項の規定にかかわらず、時間外労働をさせてはならず、又は休日に労働させてはならない。
○3 使用者は、妊産婦が請求した場合においては、深夜業をさせてはならない

32条とは、残業規定の基本となる「休憩時間を除き一週間について四十時間、一日について八時間を超えて、労働させてはならない」というもの。要するにこの条文では、妊産婦の残業を禁止している。

67条は、「育児時間」と言う規定だ。仮にいわゆる育休を取らずに出産後、すぐに復帰した場合、休憩時間にプラスして、一日に30分×2の「育児時間」が認められる。


第六十七条 生後満一年に達しない生児を育てる女性は、第三十四条の休憩時間のほか、一日二回各々少なくとも三十分、その生児を育てるための時間を請求することができる
○2 使用者は、前項の育児時間中は、その女性を使用してはならない。

最後に、68条は厳密には妊産婦とは関係ない女性労働者に対する定めだが、いわゆる「生理休暇」についてのものだ。

第六十八条 使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない


ところで、注意すべきは、育休・産休の65条も生理休暇の68条も、「就業させてはならない」と言うだけであって、給料を払わなければならないとは書いていない点である。これらが、いわゆる有給休暇に当たるかどうかは、各社の就業規則による。19条において、以下の様に定めて、育休・産休を理由に解雇されることはないが、

第十九条 使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。

民法の定めに従って、職務を提供できなくなった妊産婦に給料を請求する権利は無くなる。

民法
第五百三十六条 前二条に規定する場合を除き、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を有しない。

育児介護休業法(第2章育児休業、第4章子の看護休暇)

本法とその施行規則については厚生労働省のHP「育児介護休業法のあらまし」のP17『第2 育児・介護休業法の解説』で概要を確認することが出来る。
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000355354.pdf

Ⅱ 育児休業制度
Ⅱ-1 育児休業の対象となる労働者(第2条、第5条第1項、第5項、第6条第1項)
○ この法律の「育児休業」をすることができるのは、原則として1歳に満たない子を養育する男女労働者です。
○ 日々雇い入れられる者は除かれます。
○ 期間を定めて雇用される者は、次のいずれにも該当すれば育児休業をすることができます。
① 同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていること
② 子が1歳6か月に達する日までに、労働契約(更新される場合には、更新後の契約)の期間が満了することが明らかでないこと
○ 労使協定で定められた一定の労働者も育児休業をすることはできません。Ⅱ-2 育児休業の申出 (第5条)
○ この法律の育児休業は、労働者の事業主に対する申出を要件としています。
○ 育児休業の申出は、一定の時期に一定の方法によって行わなければなりません。
○ 申出の回数は、特別の事情がない限り1人の子につき1回であり、申し出ることのできる休業は連続した一まとまりの期間の休業です。
○ ただし、子の出生8週間以内の期間内にされた最初の育児休業については、特別な事情がなくても再度の取得が可能です(育児休業の再度取得の特例、いわゆる「パパ休暇」)。
○ 事業主は、育児休業の申出がなされたときは、育児休業開始予定日及び育児休業終了予定日等を労働者に速やかに通知しなければなりません。
・・・
(3) 育児休業の申出は、次に掲げる事項を事業主に申し出ることによって行わなければなりません(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則(以下「則」といいます。)第7条)。事業主が適当と認める場合には、ファックス又は電子メール等(※1)によることも可能です。育児休業の申出期限については、Ⅱ-6(34、35 ページ)を参照してください。
(注:①~④は必ず明らかにしなければならない事項、⑤~⑩は特定の場合に明らかにしなければならない事項です。)
① 申出の年月日
② 労働者の氏名
③ 申出に係る子の氏名、生年月日及び労働者との続柄等(子が出生していない場合は、出産予定者の氏名、出産予定日及び労働者との続柄)(※2)
④ 休業を開始しようとする日及び休業を終了しようとする日
⑤ 申出に係る子以外に1歳未満の子を有する場合には、その子の氏名、生年月日及び労働者との続柄(※2)
⑥ 申出に係る子が養子である場合には、養子縁組の効力発生日
⑦ 一度休業した後に再度の申出を行う場合、休業開始日までの期間が短い申出の場合又は一度撤回した後に再度の申出を行う場合には、それぞれの申出が許される事情
⑧ 1歳までの育児休業をしている労働者が、1歳6か月まで又は2歳までの育児休業の申出を行う場合には、申出が許される事情
⑨ 配偶者が1歳までの育児休業をしている労働者が、1歳6か月まで又は2歳までの育児休業の申出を行う場合には、配偶者が育児休業をしていること及び申出が許される事情
⑩ 特別の事情(34 ページ参照)があり、休業を開始しようとする日の1週間前に育児休業開始日を指定する場合は、その申出が許される事実
⑪ 育児休業申出を撤回した後に、特別の事情があり、再度育児休業を申し出る場合は、その申出が許される事実
⑫ パパ・ママ育休プラスの特例により 1 歳に達する日の翌日以後の育児休業をする場合には、労働者の育児休業の開始予定日が、配偶者がしている育児休業期間の初日以後である事実
(4) 事業主は、労働者に対して申出に係る子の出生等を証明する書類の提出を求めることができます(則第7条第7項)。
(例)・妊娠の事実:医師が交付する当該事実についての診断書
・出生の事実:官公署が発行する出生届受理証明書
・出産予定日の事実:医師が交付する当該事実についての診断書
・養子縁組の事実 :官公署が発行する養子縁組届受理証明
・特別養子縁組の監護期間にあること:事件が係属している家庭裁判所等が発行する事件係属証明書
・養子縁組里親に委託されていること:委託措置決定通知書
・養育里親であること:児童相談所長が発行する証明書

Ⅱ-3 事業主の義務 (第6条第1項、第2項)
○ 事業主は、要件を満たした労働者の育児休業の申出を拒むことはできません。
○ ただし、次のような労働者について育児休業をすることができないこととする労使協定があるときは、事業主は育児休業の申出を拒むことができ、拒まれた労働者は育児休業をすることができません。
① その事業主に継続して雇用された期間が1年に満たない労働者
② その他育児休業をすることができないとすることについて合理的な理由があると認められる労働者
(1) 要件を満たした育児休業の申出により労働者の労務の提供義務は消滅し、事業の繁忙や経営上の理由等により事業主が労働者の休業を妨げることはできません(法第6条第1項本文)。
(2) 「労使協定」とは、事業所の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、事業所の労働者の過半数で組織する労働組合がないときはその労働者の過半数を代表する者との書面による協定のことをいいます(法第6条第1項ただし書)。
(3) 「育児休業をすることができないとすることについて合理的な理由があると認められる労働者」とは、次のいずれかの場合をいいます(則第8条)。
① 育児休業申出の日から1年以内(27 ページで説明する1歳6か月まで及び2歳までの育児休業をする場合には、6か月以内)に雇用関係が終了することが明らかな労働者
② 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者


Ⅱ-4 育児休業の期間1-休業期間-
(第5条第1項、第3項、第4項、第5項、第6項)
○ 育児休業をすることができるのは、原則として子が出生した日から子が1歳に達する日(誕生日の前日)までの間で労働者が申し出た期間です。
○ 子が1歳に達する時点で、次のいずれにも該当する場合には、子が1歳に達する日の翌日から子が1歳6か月に達する日までの期間について、事業主に申し出ることにより、育児休業をすることができます。
① 育児休業に係る子が1歳に達する日において、労働者本人又は配偶者が育児休業をしている場合
② 保育所に入所できない等、1歳を超えても休業が特に必要と認められる
場合
※原則として子が1歳に達する日の翌日(1歳の誕生日)が育児休業開始予定日となります
○ 子が1歳6か月に達する時点で、次のいずれにも該当する場合には、子が1歳6か月に達する日の翌日から子が2歳に達する日までの期間について、事業主に申し出ることにより、育児休業をすることができます。
① 育児休業に係る子が1歳6か月に達する日において、労働者本人又は配偶者が育児休業をしている場合
② 保育所に入所できない等、1歳6か月を超えても休業が特に必要と認められる場合
※子の2歳までの休業は、1歳6か月到達時点で更に休業が必要な場合に限って申出可能となり、1歳時点で可能な育児休業期間は子が1歳6か月に達する日までとなります。また、原則として子が1歳6か月に達する日の翌日が育児休業開始予定日となります。

(1) 育児休業に係る子を出産した女性労働者は、労働基準法の規定により産後8週間の休業(産後休業)が認められているので、育児休業はその終了後から取得が可能となります。したがって、子が出生した日から育児休業をすることができるのは主に男性労働者ということになります
(2) 子が1歳(又は1歳6か月)以降の期間について休業することが雇用の継続のために特に必要と認められる場合には、子が1歳6か月(又は2歳)に達する日までを限度として、事業主に申し出ることにより、育児休業ができます。
子が1歳(又は1歳6か月)以降の期間について休業することが雇用の継続のために特に必要と認められる場合とは、次のいずれかに該当する場合をいいます(則第6条又は則第6条の2)。
① 保育所等(※1)における保育の利用を希望し、申込みを行っているが、1歳(又は1歳6か月)に達する日後の期間について、当面その実施が行われない場合(※2)。
② 常態として子の養育を行っている配偶者(育児休業に係る子のもう一人の親である者)であって1歳(又は1歳6か月)に達する日後の期間について常態として子の養育を行う予定であった者が死亡、負傷・疾病等、離婚等により子を養育することができなくなった場合

・・・
ポイント解説
★ 法改正により育児休業が最長2歳まで取得できることとなりますが、労働者のキャリア形成の観点からは、休業が長期間に及ぶことが労働者本人にとって望ましくない場合もあり、労使間で職場復帰のタイミングを話し合うこと等が想定されます。その点を踏まえ、事業主が労働者の事情やキャリアを考慮して、育児休業等からの早期の職場復帰を促す場合は、「育児休業等に関するハラスメントに該当しない」こととされます(育児休業等に関するハラスメントについては 85 ページ参照。詳しくは指針第2の 14。)。
※ただし、育児休業取得の要件を満たす限り、職場復帰のタイミングは労働者の選択に委ねられることに留意が必要です。

Ⅱ-5 育児休業の期間2-両親ともに育児休業をする場合(パパ・ママ育休プラス)の特例-(第9条の2、第9条の2第1項による読み替え後の 第5条第1項、第3項及び第6項並びに第9条第1項)
両親ともに育児休業する場合で、次のいずれにも該当する場合には、育児休業の対象となる子の年齢が、原則1歳に満たない子から原則1歳2か月に満たない子に延長されます
① 育児休業を取得しようとする労働者(以下「本人」)の配偶者が、子の1歳に達する日(1歳の誕生日の前日)以前において育児休業をしていること
② 本人の育児休業開始予定日が、子の1歳の誕生日以前であること
③ 本人の育児休業開始予定日が、配偶者がしている育児休業の初日以降であること
○ 育児休業が取得できる期間(出産した女性の場合は、出生日以後の産前・産後休業期間を含む。)は、これまでどおり1年間です。

Ⅱ-6 育児休業の期間3-申出期限- (第6条第3項、第4項)
○ 子が1歳に達するまでの育児休業については、労働者は、希望どおりの日から休業するためには、原則として育児休業を開始しようとする日の1か月前までに申し出ることが必要です。
○ 子が1歳6か月までの育児休業の場合は、育児休業開始予定日(1歳の誕生日、又は、パパ・ママ育休プラスの場合は終了予定日の翌日)の2週間前までに申し出ることが必要です。また、子が2歳までの育児休業の場合は育児休業開始予定日(1歳6か月に達する日の翌日)の2週間前までに申し出ることが必要です。これより遅れた場合、事業主は一定の範囲で休業を開始する日を指定することができます。
○ 期間を定めて雇用される労働者の育児休業の場合で、一の労働契約期間の末日まで休業した後、労働契約の更新に伴って更新後の労働契約期間の初日を育児休業開始予定日とする申出をする場合には、1か月前までに申出がなかった場合でも、事業主は開始日の指定をすることはできず、労働者は申出どおりの日から休業を開始できます。

(1) 子が1歳に達するまでの育児休業については、労働者は、希望どおりの日から休業するためには次の時期までに申し出ることが必要です。
① 原則は、休業を開始しようとする日の1か月前の日
申出がこれより遅れた場合、事業主は、労働者が休業を開始しようとする日以後申出の日の翌日から起算して1か月を経過する日(申出の日の属する月の翌月の応当日、例えば、申出の日が4月1日であれば5月1日)までの間で休業を開始する日を指定することができます。
② 次の特別の事情がある場合は、休業を開始しようとする日の1週間前の日(則第 10 条)
a 出産予定日より早く子が出生したとき
b 配偶者が死亡したとき
c 配偶者が病気又は負傷等育児休業申出に係る子を養育することが困難になったとき
d 配偶者が子と同居しないこととなったとき
e 子が負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害(※1)により2週間以上の期間にわたり世話を必要とする状態になったとき
f 保育所等における保育の利用を希望し、申込みを行っているが、当面その実施が行われないとき(※2)
申出がこれより遅れた場合、事業主は、労働者が休業を開始しようとする日以後申出の日の翌日から起算して1週間を経過する日(申出の日の属する週の翌週の応当日)までの間で休業を開始する日を指定することができます(則第 11 条)。

Ⅱ-7 育児休業の期間4-変更の申出等- (第7条)
○ 労働者は、一定の場合に1回に限り育児休業を開始する日を繰上げ変更することができます。
○ 労働者は、一定の時期までに申し出ることにより、事由を問わず、1回に限り育児休業を終了する日を繰下げ変更し、育児休業の期間を延長することができます。
○ 繰下げ変更は、子が1歳に達するまでの休業について1回、1歳から1歳6か月までの休業について1回、1歳6か月から2歳までの休業について1回することができます。
・・・
ポイント解説
★ この法律では、育児休業を開始する日の繰下げ変更や育児休業を終了する日の繰上げ変更のような休業期間の短縮等は、労働者の申出だけでは当然にはできません。このような場合は、短縮等を希望する労働者と事業主とでよく話し合ってどうするかを決めることになります。労働者が希望した場合には休業期間を変更できる旨の取決めやその手続等をあらかじめ就業規則等で明記しておくことが望ましいと考えられます。

Ⅱ-8 育児休業の期間5-期間の終了・申出の撤回等-(第8条、第9条)
○ 育児休業の期間は、労働者の意思にかかわらず次の場合に終了します。
① 子を養育しないこととなった場合
② 子が1歳に達した場合(1歳6か月まで及び2歳までの育児休業の場合は、子が当該年齢に達した場合)
③ 育児休業をしている労働者について産前産後休業、介護休業又は新たな育児休業が始まった場合
○ 育児休業の開始前に子を養育しないこととなった場合には、育児休業の申出はされなかったことになります。
○ 育児休業の開始の前日までであれば、労働者は育児休業の申出を撤回することができますが、その申出の対象となった子については、特別の事情がない限り再び育児休業の申出をすることができません。

(1) 「子を養育しないこととなった場合」とは、具体的に次の場合をいいます(則第 20 条、則第 21 条(⑥を除く))。
① 子の死亡
② 子が養子の場合の離縁や養子縁組の取消
③ 子が他人の養子となったこと等による同居の解消
④ 特別養子縁組の不成立等の場合
⑤ 労働者の負傷、疾病等により子が1歳に達するまでの間(1歳6か月まで及び2歳までの育児休業の場合は、子が当該年齢に達するまでの間)子を養育できない状態となったこと
⑥ パパ・ママ育休プラスの特例により1歳到達日の翌日以降育児休業をする場合で、労働者の配偶者が育児休業をしていないこと
(2) 子を養育しないこととなった場合は、労働者はその旨を事業主に通知しなければなりません(法第8条第3項、第9条第3項)。
(3) 労働者が育児休業の申出の撤回後再び育児休業の申出をすることができる特別の事情があると認められる場合は、次の場合です(則第 19 条)。
① 配偶者の死亡
② 配偶者が負傷、疾病等により子の養育が困難な状態となったこと
③ 離婚等により配偶者が子と同居しないこととなったこと
④ 子が負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害(※1)により、2週間以上の期間にわたり世話を必要とする状態になったとき
⑤ 子について、保育所等における保育の利用を希望し、申込みを行っているが、当面その実施が行われないとき(※2)

Ⅳ 子の看護休暇制度 (第16条の2、第16条の3)
○ 小学校就学前の子を養育する労働者は、事業主に申し出ることにより、1年度において5日(その養育する小学校就学の始期に達するまでの子が2人以上の場合にあっては、10日) を限度として、子の看護休暇を取得することができます。
○ 子の看護休暇は、1日単位又は半日単位(1日の所定労働時間の2分の1。労使協定によりこれと異なる時間数を半日と定めた場合には、その半日。)で取得することができます。
○ 「1年度において」の年度とは、事業主が特に定めをしない場合には、毎年4月1日から翌年3月31日となります。
○ 日々雇い入れられる者は除かれます。また、次のような労働者について子の看護休暇を取得することができないこととする労使協定があるときは、事業主は子の看護休暇の申出を拒むことができ、拒まれた労働者は子の看護休暇を取得することができません(ただし、③の労働者については、1日単位で子の看護休暇を取得することはできます。)。
① その事業主に継続して雇用された期間が6か月に満たない労働者
② 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
③ 半日単位で子の看護休暇を取得することが困難と認められる業務に従事する労働者
(指針第2の2(3))
○ 1日の所定労働時間が4時間以下の労働者は、半日単位での取得はできません(則第33条)。

(1) 子の看護休暇とは、負傷し、又は疾病にかかった子の世話又は疾病の予防を図るために必要な世話(則第 32 条)を行う労働者に対し与えられる休暇であり、労働基準法第 39 条の規定による年次有給休暇とは別に与える必要があります。子どもが病気やけがの際に休暇を取得しやすくし、子育てをしながら働き続けることができるようにするための権利として子の看護休暇が位置づけられています。
「疾病の予防を図るために必要な世話」とは、子に予防接種又は健康診断を受けさせることをいい、予防接種には、予防接種法に定める定期の予防接種以外のもの(インフルエンザ予防接種など)も含まれます。

育児介護休業法(その他)

Ⅸ 事業主が講ずべき措置
Ⅸ-1 育児休業及び介護休業に関連してあらかじめ定めるべき事項等 (第21条)
○ 事業主は、次の事項について、あらかじめ定め、これを周知するための措置を講ずるよう努力しなければなりません。
① 育児休業及び介護休業中の待遇に関する事項
② 育児休業及び介護休業後の賃金、配置その他の労働条件に関する事項
③ その他の事項
○ 事業主は、労働者もしくはその配偶者が妊娠・出産したことを知ったとき、又は労働者が対象家族を介護していることを知ったときに、関連する制度について個別に制度を周知するための措置を講ずるよう努力しなければなりません。
○ また、このような定めを個々の育児休業又は介護休業の申出をした労働者にあてはめた具体的な取扱いを明示するよう努力しなければなりません。

Ⅸ-3 所定労働時間の短縮措置(短時間勤務制度) (第23条第1項)
○ 事業主は、3歳に満たない子を養育する労働者について、労働者が希望すれば利用できる、所定労働時間を短縮することにより当該労働者が就業しつつ子を養育することを容易にするための措置(短時間勤務制度)を講じなければなりません
○ 短時間勤務制度の対象となる労働者は、次のすべてに該当する労働者です。
① 1日の所定労働時間が6時間以下でないこと
② 日々雇用される者でないこと
③ 短時間勤務制度が適用される期間に現に育児休業をしていないこと
④ 労使協定により適用除外とされた以下の労働者でないこと
ア その事業主に継続して雇用された期間が1年に満たない労働者
イ 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
ウ 業務の性質又は業務の実施体制に照らして、短時間勤務制度を講ずることが困難と認められる業務に従事する労働者(指針第2の9の(3))
○ 短時間勤務制度は、1日の所定労働時間を原則として6時間とする措置を含むものとしなければなりません(則第 74 条第1項)。

Ⅸ-4 3歳に満たない子を養育する労働者に関する代替措置 (第23条第2項)
○ 事業主は、短時間勤務制度について、「業務の性質又は業務の実施体制に照らして、所定労働時間の短縮措置を講ずることが困難と認められる業務に従事する労働者」として労使協定により適用除外とされた労働者に関して、育児休業に関する制度に準ずる措置又は「始業時刻変更等の措置」を講じなければなりません
○ 「始業時刻変更等の措置」としては、次のいずれかの措置があります(則第74条第2項)。
① フレックスタイムの制度
② 始業又は終業の時刻を繰り上げ又は繰り下げる制度(時差出勤の制度)
③ 労働者の3歳に満たない子に係る保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与
(1) 「その他これに準ずる便宜の供与」には、労働者からの委任を受けてベビーシッターを手配し、その費用を負担することなどが含まれます。

Ⅸ-6 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者に関する措置 (第24条第1項)
○ 事業主は、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者について、労働者の区分に応じて定める制度又は措置に準じて、必要な措置を講ずるよう努力しなければなりません
○ 事業主は、育児に関する目的で利用できる休暇制度(いわゆる配偶者出産休暇や、子の行事参加のための休暇など)を設けるよう努力しなければなりません。
(1) 労働者の区分及び区分に応じた必要な措置は以下のとおりです。
① 1歳に満たない子を養育する労働者で育児休業をしていない労働者
a 始業時刻変更等の措置(※1)
② 1歳から3歳に達するまでの子を養育する労働者
a 育児休業に関する制度
b 始業時刻変更等の措置
③ 3歳から小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者
a 育児休業に関する制度
b 所定外労働の制限に関する制度
c 短時間勤務制度
d 始業時刻変更等の措置

Ⅸ-9 労働者の配置に関する配慮 (第26条)
○ 事業主は、労働者を転勤させようとする場合には、その育児又は介護の状況に配慮しなければなりません。
(1) 事業主は、その雇用する労働者の配置の変更で就業の場所の変更を伴う転勤をさせようとする場合において、当該労働者の育児や介護の状況に配慮し、労働者が育児や介護を行うことが困難とならないよう意を用いなければなりません。
(2) 配慮することの内容としては、例えば、
① その労働者の子の養育又は家族の介護の状況を把握すること。
② 労働者本人の意向を斟酌すること。
就業場所の変更を行う場合は、子の養育又は家族の介護の代替手段の有無の確認を行うこと等が考えられます(指針第2の 15)が、これらはあくまでも配慮することの内容の例示であり、他にも様々な配慮が考えられます。

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