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夜の徘徊

最近しあわせなことが多かったから、と構えてはいたものの、とんでもないダメージを、それも、視界が真っ暗で火花が散るくらいの特大を食らってしまって、泣きながら部屋を飛び出した。

飛び出した先は綺麗なあかりが灯った大通りで、まばらに歩くひとは皆なにかを抱えながらもしあわせそうに見えて、でもそんなことはないのかもしれなくて、夜の匂いが鼻の奥をついて、涙を夜風の下へ誘い出そうとする。

身体中の血を全部抜いて、おんなじ血液型の人の血を入れたら、私は別人になれますか、自由になれますか、好きに文章を書いて生きていけますか。この願いはくだらないんですか、こんなに切実だというのに、窓口で言ったら笑われますか。

しあわせを願った、私も、私のまわりにいてくれる人も、しあわせであるといいと願った。私の足跡なんて誰かがすぐに掻き消して、今日泣いていたことなんか思い出さないくらい、ゆるやかに死んでいけたらいいと思った。

路上の電話ボックスがひどく愛しくて、好きだよと言った。でも言葉が通じないからたぶん伝わらなかった。
それでいいや、それで。言えなかった「好きだよ」の蓄積でできた星がここだよ。地球が守られないなら愛に何の意味がある。

この星でしか生きられないくせに、どうせどこにも行けないくせに、誰かを待っているような顔をして誰も待っていなかったりして、くだらないくだらないくだらない。

ありがとう、大好きだったよ、から始まる小説にろくなものはない、と誰かが言って、その通りかもしれない、と誰かが言った、この世はろくでもないんだから、皆クッキーでも齧って黄昏れていればいいのに、とまた誰かが言って、全部私の妄想でした。

永遠なんてないのだから、このくるしみにも永遠なんてないのだから。

あなたもだよ しあわせになれよ (銃口)

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