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東京の夢を見た

東京の夢を見た。

上野駅の地下にあった喫茶店、渋谷センター街の隠れ家本屋、池袋の行かなかったプラネタリウム、太宰治のお墓がある三鷹、新橋駅近くのケーキ屋さん、一度だけ髪を切った表参道、何度もひとりで黄昏れた東京駅丸ノ内中央口、何度も空を仰いだ新宿駅。

私はひとりだった、ひとりで、どうしようもなくさみしくて、それを悟られてはいけないと思っていた。神保町の路地裏に並んでた本。夕暮れに沈む後楽園。吉祥寺の居酒屋、西荻のカラオケボックス。

私は23歳だった。23歳にしては絶望を知っている方だと思っていたけれど、絶望には果てがないと知った。死にたいと泣く夜より、死にたくなくて泣く夜の方が何倍も悲劇的だった。助けてくれと送ろうとして送れなかった文字が心の中に沈殿し、夏の夜と飽和していく。愛とか永遠とかそういうのってなんだっけ、人を好きでいてはいけない、人から好かれてはいけない、私は幸せになってはならないと呪いをかけ始めたのはいつからだったっけ。

忘れよう、忘れよう、でも一体なにを忘れよう。忘れたくないことだってたくさんあったはずだ、でも今は忘れよう、いつまで不幸に浸ってんの、ひとは寂しいけどひとと一緒に生きていいんじゃないの、だめなの、私はいつからひとじゃなくなったことになってんの、Wikipedia上では神なんですか?

書くことが本業になれば小説も詩も書きたくなくなるんじゃないかと思ったけどそんなことはなくて、ひとつ大事なことが増えるともうひとつの大事なものをなくすなんてことなくて、大事なものがふたつになるだけでした。

にしても、あまりにもいろんなことがありすぎた。休む暇もなかったし余裕もなかった。無理しないでね、という言葉は無責任だ、無理していないとやってこられなかった、とてもじゃないけど生きていられなかった。でも無理しないでと伝えてくれたひとたちには救われた。ありがとう。どうか抱えきれない無理はしないでね。

誰宛の何文かもわからなくなっちゃったの、でもただ書きたかったの、わかりやすくもなければ起承転結もない、それこそ去年の夏に書き綴っていたような散文を書きたくなっちゃったの。ごめんなさい。

私いまの街が好きだよ。
東京も好きだったよ。

東京にも好きな人がたくさんいて、いまの街にも好きな人がたくさんいるよ。すこし足を伸ばせば信じられないくらい星が見える場所があるの、綺麗なものを私はまだ、綺麗だと思えるの。大切なことは全部、気づかせてもらってばかりだ。

だから
ありがとう。

私は言葉が大好きで時々大嫌いで、でもどうしようもなく大切です。

おやすみなさい、またね。

眠れない夜のための詩を、そっとつくります。