マガジンのカバー画像

短編小説

17
noteで書いた物語たち 傷も記憶も嘘もぜんぶ ほんとうの文学にする
運営しているクリエイター

#小説

世界が終わる夢

「明日大きな嵐がきて、世界は悲惨に終わるらしい」と、誰かが言った。ある局はそれを大々的に…

恋文

春未満の今日、きみを攫いにいく #小牧幸助文学賞

【短編小説】朝と夜のフラミンゴ

物心ついたころから私は、2人分の人生を背負っていた。 100年続く、由緒正しき名家。私はその…

「夜のコンビニへ、何をしに来たんですか」

***** PM9:12 28歳女性 購入品:500mlパックのイチゴ牛乳 ***** 「見たら分かるでしょう、…

【2000字短編】グラデーション

「東京の夕焼けって何色なのかな」  穏やかな孤独に侵食された駅のホームで、私たちは1時間…

うつろい

―春― 「恋って罪悪だね」 カウンター席の一番端。 私たちのいつもの席。 ゆわゆわした微笑…

新月の女の子の記憶

あるところに、 図書館と雨の日と水やり当番が好きな、小さな女の子がいました。 ある日女の子は、 クラスの人気者の男の子から告白されました。 好きだよ、俺と付き合おう。 女の子は、沢山沢山考えました。 考えたけれど、ごめんなさい、と答えました。 その翌日から、女の子は、 クラスの全員に無視されるようになりました。 〇〇くんを振るなんてひどい、最低。 身の程を知れよ。 大好きな本に「死ね」と書かれているのを見たとき、女の子は悟りました。 向けられた好意には応えない

13℃

涙は宝石になると知ったのは、春一番が歌いやまない三月の夜。 地面に崩れ落ちて泣きながら、…

ある少女の日記

―――――――――― 泣きたい時は、押入れの中で泣いていた。 そこでなら、泣き声が外に漏…

ちいさなさみしい女の子

ある森の奥に、ちいさな女の子がいました。 女の子はいつも明るくいつも優しく、森の動物たち…

雨の日の屋上

ずっと、大丈夫なふりをして生きてきた。   無理して笑って楽しい話をして冗談を言ってこのひ…

旅人の手記

帰りたい。 早くどこかに帰りたい。 街の音も人の声も、雑音にしか聞こえない。 私はちゃん…

拝啓、バレンタイン殿

こんなはずじゃなかった、こんなはずじゃなかった、と口ずさみながら駅前を歩く。 ひとひとひ…

病院の待合室

「これはね、刺しても病気がよくならない注射のあと」  病院の待合室で、小さな男の子が看護師さんに話しかけていた。 細い腕に散らばった無数の注射の跡が、少し離れた私の所からも色鮮やかに見えた。 「そんなことないよ、きっと良くなるよ」 若い看護師さんは、泣いているような笑顔で男の子の頭を撫でた。 「うそつくのはだめなんだよ」 男の子は無邪気に笑いながら、小さな足をぱたぱたさせていた。その隣で母親らしき女性は、夕暮れのように穏やかな微笑みを浮かべていた。 身体が弱い私は