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髙岡福信さんの酒饅頭

御菓子司・髙岡福信たかおかふくのぶ
看板には「浪花なにわで最古の創業」
大阪や大坂ではなく「浪花」というのが風流です。


御菓子司おんかしつかさ髙岡福信たかおかふくのぶさん

和菓子屋さんに多い、専門職という意味の「司」
老舗の屋号は、創業者の名前が多いので格式高く、なんとなく入りづらいような雰囲気が。
大丈夫です、和菓子屋さんなら。

御菓子司 髙岡福信さん
大阪市中央区道修町どしょうまち4-5-23

場所は大阪の中心部。高層ビルが立ち並ぶオフィス。
薬の街として有名です。
そのなかで、普通のお家のような、お店のような建物があります。
二階建て、クリーム色。
ひし形の窓、古銭がついてます。
これだけ。
素っ気ない、アピールの欠片もない建物。


近づいてみると看板の文字にビックリ。


浪花最古の創業
名代の酒饅頭 御菓子司 髙岡福信

創業は、いつなのか? 気になります。
白地に黒文字。飾り気のない、縦長のシンプルな看板。


お店に近づくと、壁にガイドブックのような一文が書いてありました。



創業1624年

古すぎて、わかりません。
寛永元年 (1624)大阪で髙岡福信が創業。
わたしは、100年ぐらい前だと想像していました。えらいことです。
思わず店を覗きます。


「酒饅頭 今を去る 参百八拾壱年前……」
達筆な筆と漢数字です。早々に読むのをリタイヤして、お店に入ります。


ふすまの下のへこんだスペースに、横棒が渡してあるのは「ヒモ掛け」
巻いた紐が、2つ掛けてあります。
正式な名前は知りません。懐かしい。


進物にするとき、箱を包装してからひもをクルクルと、十字に巻きます。菓子折りのヒモ。
和菓子屋さんには、よくあります。
カラカラと手際よくいい音で。

今なら、リボンかけでしょうか。
洋菓子屋さんに行ったら、リボンがどうなって掛かっているのか見てみよう。
やっぱり壁に掛かっているのかしら。

酒饅頭は、食べたことがありますか?


白い生地で、あんこが入った、おまんじゅう。
ほんのり、お酒風味。あんこは、こしあん。
わたしは、スーパーで売っているセロハンに包まれた「酒まんじゅう」しか食べたことはないのです……


なぜか、店番が誰もいません。
声をかけます。
ゆるりと店主さんが出てきました。
いかにも職人さんの白衣姿で。


建物と同じく素っ気ない……

よく見れば、商品説明がすべて手書き。
商品説明なんて言葉も軽々しく言えません。お品書きとか、そんな雰囲気です。
木目調の落ち着いた店内。暖簾も茶色。菓子箱が無造作に積まれています。

きっとオフィス街なので、お土産に重宝されているのかと思います。
あまりガチャガチャした、いかにも大阪という風情でもありません。

可愛い温蔵庫

丸カーブの温蔵庫が、ちょこん。
ちっちゃくてレトロです。
なんか、可愛いですね。
これも古いでしょう。特注品かも。


髙岡福信さんの酒饅頭は、あったかいタイプなのですね。
冬限定で、夏は本わらび餅が有名です。
なんと、黒い色だそうです。
スーパーのわらび餅はデンプンでしたっけ。また楽しみが増えました。


ご主人は、静かに酒饅頭を包んでくださいました。
この場で食べたいところをこらえ、持って帰りました。


さりげなく寛永通寳

寛永元年なので、硬貨の寛永通寳。
1624年を調べてみると、
江戸幕府・二代目将軍の徳川秀忠の時代。


1615年・江戸幕府成立。
1612年・徳川家康死去。
1615年・大坂夏の陣。豊臣氏滅亡。


御菓子司 髙岡福信さんの創業、それから9年経った1624年。
浪花最古の創業……気が遠くなります。
それで御菓子司髙岡福信さんの建物や包装紙に寛永通寳が、描かれているのですね。


来年2024年は、創業四百年!



酒饅頭

自宅用に酒饅頭ふたつ。
乾燥防止にラップしてありました。
重たいです。あんこもたっぷり。
つやつや、ぷっくり。

ちょっと固くなっています。
切るのも緊張……。

皮が厚い。しっかりとした生地です。
温蔵庫に入れるのでUFOのようなフォルム。底に紙などは付いていません。かしても型くずれしないように作られているのですね。


なめらかな、こしあん。
うっとりします。お酒の味はしない。
そういえば、
「餅米と糀と備中小豆餡との調和の風味」
と書いてあった。


調和。調和の風味。
どぎつい味に慣れてしまって……
浪花の、やわらかさ。やさしさ。


窓のような菱餅があるかも。
楽しみ。
桃の節句に、また来ます。



毎週水曜には
「建物エッセイ」の日


いつもこころにうるおいを。
水分補給もわすれずに。


最後までお読みくださり、ありがとうございます。

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