見出し画像

金ピカみつあみ・タイムマシン

今ならわかる「フリンジ」「金モール」
小学生になったわたしは、「金ピカ!みつあみ!」と勝手に名づけ。
ビロードカーテンのピカピカ縁飾り、入学式の講堂で。


喫茶むらかみさん

大阪市東成区ひがしなりく。クラシカルな商店街が東西に長く通っています。
東の端は神路かみじ商店街。神の道? この商店街は「神の道」なるタイムマシンかもしれない……。

アーケードを入ると、まもなく大きな暖簾。
藍よりも青く、紫より青く。
白ヌキ文字で迫力の「喫茶むらかみ」!

喫茶むらかみさん
大阪市東成区


暖簾の下は黄色だけど金色に見えるフリンジ。
おそれ多くも、こんなゴージャスな縁飾りのついた喫茶店、他にはありますまい。


ここは、小さいころ通っただけの喫茶店。大人のつどい、コーヒーを飲むところと教えられ。


小学校の講堂のカーテンについている「金ピカのみつあみ」!
旗とかお相撲さんとかに付いている「金ピカみつあみ」!
それぐらい特別で誇らしい学校のような、わたしにとって「金ピカ・みつあみ」喫茶店なのです。


大阪市東成区ひがしなりく

大阪市東成区ひがしなりく
現在は大阪の小さな区です。
むかしの大阪は、東成ひがしなり西成にしなりという地区に分かれていました。おおざっぱに大きく東と西。


1925年・大正時代の終わりに、大阪市が誕生。
そして「東成区」「西成区」「住吉区すみよしく」三つの区に。
そんな歴史ある東成区です。むかしながらの町並み。


森下仁丹の住居標示板も残ります。
正装したキャラクターの服にも「金ピカみつあみ」がついています。


そして東成区から、たくさんの区が独立し、ここは小さな区になりました。
西成区もそうです、小さくなりました。



そうそう、東成区といえば、この会社。
皆さまが学校で、一度はお世話になっている文具メーカーの本社がありますよ。


コクヨさん。1905年創業・帳簿の製造から始まる。
「国のほまれ」を掲げ商標を「国誉」に。
1934年から東成区に移転。
社名にも歴史あり「コクヨ」さん。

地下に大阪メトロ・千日前線せんにちまえせん新深江しんふかえ駅があります。防空壕ぼうくうごうではありませんよ。
喫茶むらかみさんの最寄り駅でもあります。

喫茶・創世記

そんな「金ピカみつあみ」喫茶店の、むらかみさん。
昭和レトロなカフェは数あれど、それより、もっともっと前の喫茶店。


むかしのお家は、木とガラスと土壁でできていた。
そんな時代の質感だ。
床屋・花屋・うどん屋・寿司屋……
お店の床は、丈夫で掃除しやすいタイル。
造りは、小学校のように似たり寄ったり・お揃いではなかったか。

まだ庶民の生活で洋風の建物やデザインが一般的でなく、看板や暖簾で判別みたいな。
喫茶店の先祖・喫茶創世記のようなお店……足が震えます。
艶のある木の開き戸に手も震えます。

金ピカみつあみ・タイムマシン発動します。


いちばん高いメニューは?

現在、カーテン・ブラインドの普及で、柄ガラスや曇りガラスすら貴重な時代。
ほぼ、全面ガラスに屋号。なんと素晴らしい!
「村上喫茶店」


むかしの床屋さんもこうでしたね。
わたしの通っていた眼医者さんも、こんな縦筋ガラスでした。
(ガラスの正式な名前は、わかりません)


映画のセット、すぐに撮影できそうです。
メニューは、いちばん高いのが「ぜんざい四百八十円
コーヒーは三百円
「コーヒフロート」の発音どおりの表記「コーヒ」に、思わずニャッとしますよ、大阪人。

喫茶・創世記価格……ママさん、経営は大丈夫なのでしょうか……。


「いらっしゃいませ。寒いので足元のヒータ入れますね」


火鉢がありそうだが……あった。「くず入れ」になっていた。


常連さんも、静かながら楽しくコーヒを味わっています。
床は総タイルなのに、あったかい。
壁は土壁ではなかった。

テレビのスペース。ブラウン管・白黒テレビの時代に、力道山のプロレス観戦をしていたのでしょうね。
この店に、窓際族はいませんが、ガラスの採光で彩光もシルエットも良い。
南向きのガラス効果、商店街を行き交う人の目安にも。

天井には、扇風機・プロペラの跡。
トレンディ-・ドラマは、「君の名は」
ちっちゃいテーブルは飽食の前時代。高度成長期はこれからだ。


ぜんざい山盛り

ママさんがにこやかに運んでくる「ぜんざい」
お椀を開けてビックリ!まるで食事の量。
むかしの大阪のお店や問屋街には、ごほうび甘味を食べる奉公人のため「ぜんざい屋」がたくさんあったそうです。

塩昆布しおこぶも多い。
お餅の上にもそれでもかと小豆餡あずきあん

おいし~い!お婆ちゃんの家で食べるぜんざい!
こころが、あったまる……じんわり白金はっきんカイロ。
おそるべし、「金ピカみつあみ・タイムマシン」!


お菓子でるでる

絶妙なタイミングで緑茶が登場する。
ママさんは、常連さんと歓談しながらも接客の目は鈍らない。

茶托に座る瑞鳥のお湯のみ。
シルバーのお砂糖入れ。
赤いフタの食卓塩。
可愛いシクラメンのかほり。
うるうるしていると、お菓子が。

ここは、むかしの喫茶店。座っている時間に比例して、お菓子が出てくるのだ。
常連さんの持ちより・お土産が振る舞われる。


小学校の金ピカ・みつあみ卒業式でも、こんなにお菓子は出てこない。
入学式・卒業式の紅白まんじゅうも廃止になって久しい。


「お茶のおかわり、どうですか?」
「ありがとうございます。いただきます」


居心地が良すぎて泣けてくる。
「金ピカみつあみ・タイムマシン」そろそろ戻ろう。
ママさんの絶妙なタイミング攻撃は、スペシュウム光線のようだ。
ピコンピコン、わたしの胸のタイムランプが点灯しはじめた。
帰りはウルトラマンみたいに飛んで帰ろう。

令和の宇宙まで。


四百八十円。ご馳走さまでした。
未来の500円玉をママさんに渡します。


ママさんからのおつりの十円玉硬貨は
ずっと未来も、おんなじですね。


金ピカッ!
みつあみタイムマシンの時間切れ。
わたしは、おんなじ硬貨を握りしめるのだった。



毎週月曜日は
「コーヒー・喫茶店」の日


いつもこころにうるおいを。
水分補給もわすれずに。


最後までお読みくださり、
ありがとうございます。

この記事が参加している募集

#おいしいお店

17,868件

#この街がすき

44,138件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?