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シンママの娘(17)お食い初め

孫娘は生後3ヶ月。これから可愛くなるから大丈夫。育児も、何もかもぶっつけ本番、体当たりの娘。
旦那さまの両親は……


はしゃぐ高砂人形たかさごにんぎょう

わたしとオットは、5駅向こうの娘の新居に通う。
孫娘の沐浴などの育児の手伝い。
娘の旦那さまは、なんと実家ぐらし。ありえない家族…

旦那さまの実家。自営業で70代の両親も働いている。
息子が結婚して赤ちゃんも生まれたのに、実家に入り浸り。
注意も指導もしないのか?


「あの高砂人形たかさごにんぎょうめ」


だんだんと、わたしのなかに怒りが。
矛先ほこさきが、あちらの両親へ。

高砂人形とは何ぞや?
いまや絶滅しただろう縁起物です。
 ♪ 高砂や~
…知る人もない昨今、本編とは関係ありませんが、すこし記しておきます。

高砂人形


結納ゆいのうを思い出す

約30年前、正確には28年前。
昭和時代は終わり、平成のはじめ。
わたしが結婚する時に、略式ですが結納ゆいのうをすることになりました。

結納って令和の時代にあるのでしょうか?
結婚前の「約束式」のようなものです。
この儀式は地域により違い、結納金(現金)・お祝の品などを両家が交わします。


すべてゴミになる、華麗な熨斗袋のしぶくろ・宝船や松などのクラフト製品。高価な縁起物。
昭和の街かどに結納用品店もありました。

結納用品店
やはり文具との兼業
和菓子屋さんとセットの結納用品店
ちょっと高級昆布



見栄を張るのじゃよ


わが家にオットと両親が挨拶に。
部屋に結納用品・縁起物を飾り、両家が揃って挨拶と食事…のような流れでした。


紅白のお饅頭を和菓子屋さんに予約したのはいいが、オットの家族は和菓子のあんが嫌い。
それなら、わたしが食べたのにぃ。
もったいない、無駄無駄イベントでした。


高砂や…手からのり

そして、オットの母が作ってくれたのが「高砂人形」!
日本人形は、若き雛人形や幼児の五月人形だけではない。

白髪のお爺さんとお婆さんのペア人  形

「ふたりとも白髪が生えるまで、なかよく添い遂げてね~知らんけど」
みたいな…

じょう・おじいさん
髭がすごい


市販の手作りキット。
むかしの主婦たるもの、洋裁・編み物・手芸などは「花嫁(スキル)道具」だったのですよ。

困った。お肌が、つやつや陶器肌。
あちこちの継ぎ目が乱れている。
首や、手から、のりが…はみ出している!

したたる糊
ねっとり


ヒーローになる時、それは今

頭の中に「ヒーロー・ショー」が浮かぶ。
昭和、その頃デパートの屋上では、テレビ番組や映画の着ぐるみショーをよくやっていた。


厚手のゴム製・全身スーツの正義の味方が、これまた暑苦しい着ぶくれ悪役を投げ飛ばす劇。


正義の味方が「ジャッ!」と空手チョップ。
決めポースのたびに、ヒーローの手袋の隙間から汗が、ジャバァ!

まさにこれです。「夫婦の着ぐるみ」
今風にいえば「スーツアクター」
夫と妻の着ぐるみを来て、ふたり仲よく暮らしているが、夫婦ゲンカやいさかいなどトラブルは絶えない。


何とか夫婦を演じる、着ぐるみの中は酸欠や金欠、呼吸困難。
ゼイゼイ、ハアハア、カラータイマーは赤。何年も。
そう、苦しいけど、子どもが喜んでくれるから……


アクションのたびに、手袋の隙間から汗が、ジャバ~ッ!!
「これこそが、しあわせ」


オットの母がくれた高砂人形は、ケミカルでコミカルすぎた。
夫婦って、こんなんやろな、実際。
ともに白髪が生えるまで。
一生、夫婦のスーツアクター。

うば・おばあさん


じぶんにとって、おもしろい教訓人形。
捨てずに家にあるのです。
高齢夫婦を見ると、ついつい。
いや、なんとなく高砂人形に見えるのです。


旦那さまの両親も立派な高砂人形。
40歳目前でやっと結婚と初孫。
 ♪ 高砂や~  聞こえる。
お食い初め・100日祝いも嬉しさが袖口や襟元から、じゅわじゅわと。
指先から、したたり落ちています。

人形も人間も経年劣化します。



そしてお食い初め

お誘いは結構です!と言いたいところを、ぐっとGOOD こらえ出席しました。
新居マンションに、高砂人形が揃えたのは、祝い膳。
お正月の重箱さながらの。テーブルの脚も折れよと手作りの料理が並ぶ。
くやしいが美味しそうだ。
自営業なのに、いつの間に作ったのか?

「もっといい菓子折りを持って来るんだった」


孫娘は赤ちゃんラックのような椅子に。便利なグッズが、うらやましい令和元年生まれ。
娘も高砂人形(うば)と料理を取り分けたり嫁っぽいことをしています。


また旦那さまが、いない。
わたしとオットの目が合った。お宮参りの時も。わたしたちの胸のカラータイマーは黄色に。

のそっとヘラヘラと。やっと登場した旦那さま。また太ったんじゃないか? ダブルワークの仕事を、ひとつに減らし身も心もユルんだか。40歳前、危険な状況だ。なんですか、その蒸し暑い着ぐるみは。


これじゃあ、倒すべき怪獣ではないか。わたしたちはヒーローか。娘と孫を救うためにやって来た。
なんて思っていたら菓子折りをベリベリと開けています。
そして、着ぐるみの第一声は、

「どうぞ、食べてください」

「いえいえ…」

なんや、せっかく開けたのにっ!


それは、わたしが持ってきたお菓子やで。食事前に、いらんわ…

これで、わかりました。
娘に、いつもこのような言葉を使っているのですね。吐いているのですね。この着ぐるみ怪獣は。

知らんぷりをして、お料理をいただき帰路に着きました。

高砂人形は、着ぐるみ怪獣の機嫌取りをしているように思えます。
いつも、いいなりではないかと。


あら、オットも眉間にシワが。聞けば、

「たまには、遊びに来てくださいね」

高砂人形(じょう)に言われたらしい。


「俺ら毎日のように行ってるのに。
……知らないんやな」

確かに。知っていたら、お食い初めだの食事だの、とても言えないはず。
知らないのだ、高砂人形は。
人形だからさ。ぼうやだからさ。


知らない幸せというのもある。



毎週金曜日は
「シンママの娘」


いつも こころに うるおいを。
水分補給も わすれずに。


最後までお読みくださり、
ありがとうございます。

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