見出し画像

天上のバレエ・地上のダンス(39) 本番のあとさき

先生に召集され舞台袖に集合する。
さぁ本番。いつもの光景。武者ぶるい。
わたし以外の中高年3人はヒップホップ初舞台。
若手3人と先生に混じっての初陣は?


しっかりダウンして

ひとつ前のチームが踊りだす。舞台袖ぶたいそでに待機する、わたしたち。
重たくもあり華やかな音だ。本番の音と照明と。


みんなカラダを動かす。
ウォーミングアップとかなんとか。
前のチームの本番の音を借りて。
急には動けない。中高年になるとなおさら。

「しっかりダウンして!」

先生の強い、ひとこと。
これは倒れることではないです。
カラダの重心を下げる。足先で浮わついてフワフワしないように。
おへそのしたの丹田たんでんを意識。


腹を据える。腹を決める。
ぶれないボディ。体幹。軸。
みじかく、じぶんに指令する。
でないと本番でうごきが、うわずるのだ。
うわっつらを、なでるだけの踊りに。


本番の音と宇宙遊泳

前のチーム終了。拍手。ライブハウスはお客さまが、とても近い。
息せき切って、わらわらと退場してくる女の子たち。


入れ替わりに、お疲れさまでした。ありがとうございます。
みんな拍手と声をかけあう。


舞台は暗くなる。チームの紹介アナウンスが聞こえる。
円陣。
試合がはじまるみたいだ。きゃ。
楽しもうね。よっしゃ~。さあ行こか。
それぞれ入れるスイッチ。


えがお! 先生が叫ぶ。


音楽だ。いつも練習してきた、おと。
音が先に出る。本番の音。泣いても笑っても最後の一回。


本番も一回だけ。出しきる。
中高年は知っている。
若いメンバーは、これからもダンスの本番はある。


われわれ中高年は、
舞台は最初で最後かもしれない。


あしたケガするかもしれないし。
親が元気だとは、かぎらない。
しごとの変更や移動があるかも。
ダンスができるとは、かぎらない。


人生に保証はない。
だから、いまを楽しむ。
スポットライトをあびて。
宇宙遊泳。キラキラ。
ターンするミラーボール。


あっという間の本番

たのしい……もうダンスのおわり。
工藤くんもミライさんも、麻宮サギさんも。さいごまでダンス。
たのしい時間は終わるもの。
わたしは客席の全体を見まわし、ダンスをあじわっておどった。


やはり手足が、ういてしまった。
できてない。満足なダンスではなかった。
発表会は5年ぶり……これがバレエだったらよかったのに……無重力のダンスの。
天上のバレエ・地上のヒップホップダンス。


まだまだ、やめれんな。


本番が終わって、試合終了!
舞台裏に退場。
ありがとうございました。
先生・チーム・主催・スタッフさん……すべての皆さまのおかげです。


みんなのえがお。
若手と先生は普通の呼吸。息きれてない。


「 初舞台 どうだった? 」
先生の声だ。記念すべきインタビュー。
中高年のみんなは、ぜぇぜぇ……



「安西先生、ダンスがしたいです」
……工藤くん、いいこという!
たぷたぷたぷ。タプタプタプ。
それぞれ自分のお腹を、ゆすって答えた。

「ミッチーって、堀江美都子ほりえみつこやんな」
工藤くん、若手4人は知りませんよ。

すがすがしく打ち上げをきめる。
なにもかも終わった、土曜の夜はパラダイス。
いまだけ、いまだけ。いまのうち。
そう中高年は知っている。


筋肉痛がくるのは、月曜日



毎週木曜日は
「バレエ・ダンスの日」


いつもこころにうるおいを
水分補給も わすれずに


最後までお読みくださり、
ありがとうございます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?