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この家どうするの?(43)葬儀屋さん今昔・23「宇宙塵」

 葬祭屋・社長さんに案内され炉のまえに。わたしひとりで父を送る。親族とも交流がないから、これでいい。
つらくなるかたは、お読みにならないでください。
(1121文字)



白い大理石の神殿

火葬炉が一直線にならぶ。高い天井から白くつるんと陶器のような石壁が下へ流れる。床も大理石。マーブル模様が、それぞれの人生のひだに見える。先人の涙のあとかもしれない。


洋風、なんだか神殿のようだ。祖母とはちがう斎場で明るく新しい。火葬炉は30基ほど。ぽつん、ぽつんと3組ほどいる、間隔をあけて。


テーブルの高さの線路、レールが、両手にひらいた扉の中までのびる。手前に列車のような棺桶が停車中。乗っているのは父だけ。
扉のむこうは暗い火葬炉。行き先は、まるで宇宙……。
斎場の職員さんが立っている。


ニュースの真偽

「火葬まち・1週間・首都圏」
そんなネットニュースを見て、わたしは、こわくてあせっていた。
父を自宅(実家)で1週間も安置するなんて、わたしにはムリ。そう思って葬祭屋さんに泊めてもらったのに。


うそ? ガラガラやんか。
火葬場、どこが渋滞? どこが火葬まちやねん。
社長さんのチカラで火葬場を押さえたんと違うのか。はじめから空いてるんやわ。


これは家族葬がおおい昨今、お部屋代とか、お花代とか、客単価を上げるために流してるニュースかもしれん。
葬儀屋さんから「1週間火葬まち」と言われたら信じるし、どうしようもないもんね……。


今後の教訓としておこう。
つぎは、わたしか、オットか。
見積もりで「火葬まち」なんて言われても、うのみにしてはいけないな。斎場に直接電話して確認してもいいぐらい。不審な問い合わせには答えないにしても。


そんなことを考えてたら
斎場の職員さんが車掌さんに見えてきた。つきそいの社長さんはメーテル。わたしは鉄郎。
機械のカラダなんてない。父を乗せた木の列車は音もなく発車した。宇宙で、こなごなに燃えつきるため。
車掌さんは、この世の重い扉を閉じた。




ひとり大広間ですわる

「長女さん、2時間後にまた来ます」
社長さんは退場。大広間の待合室にひとりになった。自販機で缶ジュースを買って座る。

それにしても、となりの火葬炉。と、いってもかなり離れていたが。遺族はふたりで、炉の前に棺桶。お坊さんが読経していた。
なにもこんなトコまで、と思ったが諸事情あるのだろう。


がらんがらんの斎場・待合室。
おしゃべりする人はいない。


わたしは、もうひとりぼっちだ。

この2時間も

そしてこれからも

ぱらぱら きらきら
なにか降ってきた


   こころのなかに ふりつもる



(つづきます)

毎週金曜日は
「親の持ち家の日」

いつも こころに うるおいを
水分補給も わすれずに


さいごまでお読みくださりありがとうございます。

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