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この家どうするの? (12)悲しい色やね


リサイクル品とお礼

また婦人服を、もらってきた父。
社交ダンスを習っている父のお土産。圧倒的に女性が多い場所。
父に友だちや、彼女みたいな人もいるだろう。父は独身だし。


新品ではない婦人服・食べ物・小物類……
しまいにはダンスのレオタード(練習着)までもらってくる。
いい加減、断ってほしい!
お土産のたびに、いつも無愛想な父が懇願する。
「彼女うるさいねん、電話で、お礼を言ってくれ」

電話の相手のAさん、ホントに世話好きなのだろう。
品物を頂いておいて失礼だが、
「父子家庭の娘さんって、気のきいたもの買ってもらったことないよねぇ」
といわんばかり。


「着て頂戴、使ってちょうだい、おほほっ…」
なにかが見え隠れ。そんなにイイ人と思われたい?
それとも、やりくり上手でしょアピール?


いまなら、フードロス・古着・リサイクルが根づいているが、バブル時代の前ぐらいのこと。
既に社会人のわたしは給料で好きなものを買える身分でした。

人から、何かをしてもらったら嬉しいはずなのに……悲しい。
いっぱい服があるのが悲しい。
ひねくれた、わたしがいちばん悲しい。



バブル・アリとキリギリス

肩パットのスーツやチャイナ服、羽の付いたバカでかい扇子。
だんだん疲れてきたころに狂乱のバブルは消えた……

もちろん、いつの世もリアル「アリとキリギリス」
結婚して出産・育児組のアリさん。
手堅く公務員に転職したアリさんや、宅建など資格を取るアリさんもいた。


転職のことを
フランス語の「とらばーゆ」って言ってましたね。
懐かしいです。
アリもキリギリスも、いまより夢や希望はあったのだと思います。

わたしはキリギリス。お立ち台から、永久就職先を探したけれど。
いちおう探したふり。
お化粧して着飾って今は綺麗だが、所詮は……それだけ。


バブルはじけて日が暮れて

結婚は地味な日常。
働きづめで歳をとる。男も女も。
晩年は足腰衰えて家からも出れない、祖母のように。
独り身だったら趣味がないと誰からも相手にされない。
父のように。


祖母と父をみていると、
この先どうするのだろう。
住む家はあるけれど……
わたしは、どうしたらいいのだろう……


やりたいこと、好きな仕事もなく、ただのバイトのフリーター。
今まで好き勝手した20代。
若さも泡のように消えた。
あと少しで……30歳。


なんかもう遊び尽くした、やり尽くした。若さも底をついた。
なんにも積み上げなかったし、
同然なにひとつとして残らなかった。


祖母も父も何も言わなかった。
誰ひとり、わたしと関わり、
心配する家族ですらなかった。
住む家はあるけれど……


ひとりなんだなぁ。
何もかも泡と消えた。
あとは若さが減ってくだけ。


大阪湾に、みんな悲しさを捨てに来るから……大阪の海は悲しい色。
なんて、そんなヒット曲もありました。
わたしは悲しいのか寂しいのか、何だかわからなくなりました。
バブルも終わり、なぜかとても疲れた。


けど……
何もかもなくなって、なんかスッキリした。

わたしは、ほどなく


独身最後の砦を返上しました。



毎週金曜日は
「親の持ち家」の日

いつも こころに うるおいを。水分補給も わすれずに。

最後までお読みくださり、
ありがとうございます。

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