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今年は友チョコ

 告白騒ぎのほとぼりも冷めないうちに、バレンタインデーがやってきた。クラスのモテモテ男子・ハマザキくんが好きな女の子たちは、競ってチョコレートをあげたようだ。

 娘は好きな男の子にあげるそぶりは見られなかった。パパとじーじのほか、今年は仲の良い女の子同士でチョコレートを交換し合う「友チョコ」が新たに加わっただけ。今年もまた、「手作りする」と言うのだが、結局はこちらが手伝わされるので、かなり迷惑だ。高校卒業後は一切バレンタインデーに関わりを持ってこなかったのに、なんで40過ぎてから、チョコを作らなければいけないんだろうと思う。しかも、友チョコ。「○○くんへの告白はどうなったの。どうせならあげたら」と言うと、「あげない」。「友チョコなんて、チョコレート会社とかお店がチョコが売れるように考え出したものなんだと思うよ。そういうのに乗るのはやめなさい」と言うと、「乗りたい」と答える。

 とにかく、今は友達との関係が大事なのだろう。最近は自分や友達の趣味や好きな食べ物などを書き込むプロフィール帳という小さなノートも持ち歩いている。それには「これまで告白された回数」「告白した回数」を書き込む欄もあって、娘は「告白された回数3」「告白した回数0」と書いていた。一体どの子のことがカウントされているのかさっぱりわからない。

 「デートの時に行きたい場所」には「毎」と書いてあった。「親が毎日新聞に勤めているから行ってみたいのか。かわいいなぁ」と思って聞いてみたら、「海」と書いたつもりが、さんずいを忘れていただけだった。

 ともあれ、バレンタインデーの前日、悪戦苦闘しながら、板チョコを溶かして直径10センチほどの円盤状に固め、焼き鳥の串を刺した棒あめみたいなチョコレートを15個ほど完成させた。翌日、入院しているじーじに届けに行ったら、一度に2本も食べてくれたのが、私には一番うれしかった。娘ももちろん、ご満悦の顔だった。

2011年2月27日

☆2009年から2012年まで子ども向けの新聞につづった連載を改編したものです。


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