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やる気の見られない旗振り係

 「PTA今年度お手伝い」をした。

 わが家は旗振り係。春と秋、交通安全週間の登校時間に通学路に立ち、旗を振って児童の安全を見守る役だ。

 お知らせを読むと、旗を振る時に着る黄色い上着と旗を、前日までにPTA役員室まで取りにくることとなっていたため、夫は前日、出社の前に取りに行った。そのまま黄色い旗を会社に持って行くのは恥ずかしかったのか、いったん家に持ち帰っていた。

 当日、娘が家を出るよりも前に、夫は出かけていった。しばらくして戻ってきた夫に「どうだった?」と聞くと、「別に何ということはなかった」という返事だった。

 夕方、娘に「パパ、ちゃんと旗振りしてた?」と聞くと、娘は眉間にしわを寄せて首をふった。

 「ううん。ガードレールに座ってた」

 「えっ、旗は振らないで?」

 「振ってない」

 「やる気なさそうに?」

 「うん。もう、パパってホントにいやだよ。みくちゃんに『おはようございますって言わないとここを通さないよ』とか言うしさ。恥ずかしかったよ」

 確かに、いつも娘と一緒に登校するみくちゃんは、家の前で私が声をかけても挨拶してくれない。「みくちゃんに通せんぼしたんだって?」と再び夫に聞くと、「小さな声だったけど、一応、『おはようございます』って言ったからほめてあげた。ほめられて結構うれしそうだった」とすました顔で答えていた。

 他の旗振り係の人たちはどうしていたかというと、夫の班の他の2人は5分ほど遅刻して現れたそう。それぞれ離れて立っていたので、会話もないまま解散したとか。やる気の見られない旗振り係たちなのだった。

2009年10月11日

☆2009年から2012年まで子ども向けの新聞につづった連載を改編したものです。

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