2023年ラスト投稿記念【妄想小説】君を幸せにする大予言

ある居酒屋で男女が飲んでいる。
「先輩、聞いてくださいよ、私、また振られちゃったんですよ～」と女性が嘆く。
「また～？」と呆れる男性。
「そうなんですよ、確かに私にはもったいないくらい素敵な人で、釣り合わないなって心配してたんですけど。一体、何がいけないんですかね…？」
「うーんそうだな…君にだけ問題がある訳ではないと思うんだよね。」男性がビールを飲んで答える。
「釣り合う、釣り合わないじゃない。お似合いだね、って言われるくらい、二人で時間と努力を重ねるんだよ」
「む～ず～か～しい～私は一人でいる時間も大切にしたいだけなのに、『君の気持ちがわからなくなった、別れよう』って言われて終わっちゃうんですよね」
「あとさ、予言の自己成就って知ってる？」
「は？」
「君は自分で自分に呪いをかけているんだよ。自分でかけた呪いは自分にしか解けないから厄介だ。」
「予言なんだか呪いなんだか、よくわかりません。」
「自己成就的予言だよ。『私は試験に不合格になる』って考えることで不安になり、勉強が手に付かなくなって、結果予言通りに不合格になってしまう、とか。」
「ノストラダムスの大予言なら聞いたことありますけど。」
「古くない？人類が滅びる話じゃなくて。君の予言が君を泣かせているんじゃないかってことだよ。」
「何かの用語ですか？」
「社会学。他にも『銀行が倒産して預金が引き出せなくなる』っていう噂が広まって、たくさんの預金者が倒産の前に預金を引き出そうとした結果、取り付け騒ぎになり、噂通りに倒産した、とか。」
「それが私の振られる理由と関係ありますか？」
「君は自分が魅力的な女性ではないと思っている。その負のオーラが君を幸せな恋愛から遠ざける。君は充分、そのままで魅力的なのにね。ほら、まるで自分に呪いをかけてるみたいじゃん？」
「私のこと魅力的って、まさか口説いてるんですか？」
「違うけど、君がポジティブに自分のことを捉えられるなら、そう受け取ってもらってもかまわない。とにかく君は『自分はうまく恋愛ができない』という予言を捨てなきゃ。君が幸せな恋愛をしたいなら、『自分は幸せな恋愛をする価値のある人間だ』という予言を信じて行動しないと。」
「さらっと口説いてるって認めてますけど。あと、お節介ですね。」
「振られる度に居酒屋に呼び出されてグチを聞かされてるうちに、俺だったら君を泣かせるようなことしないのにな、って思うようになったんだ。いや、別にグチ聞きたくないわけじゃなくて、頼られて嬉しいし、いくらでも聞くけど。」
「そんなの信じられません。期待して、裏切られるくらいなら、いっそ最初から期待しない方がいいです。」
「期待と希望の違い、スマホで調べてみて」
『期待…望ましい状態や結果をあてにして、その実現を心待ちにすること。』『希望…①こうあってほしいとのぞみ願うこと。また、その願い。②将来に対する明るい見通し』（明鏡国語辞典　第二版）
「これが？」
「期待っていう言葉は時期を待つと書く。基本他人に対して、心待ちにすることだ。『いつか王子様が迎えに来てくれないかしら』みたいなこと。」
「はい、先生。」
「真面目に話してるんだから、茶化さないで。対して、希望は望みだから、実現のために行動することもある。君には期待じゃなくて、希望を抱いて行動して欲しいんだよ。」
「きぼう。」初めてその単語を聞いたかのようなつぶやき。
「自分を信じられないなら、俺を信じて。周りの人を信じて。君は魅力的な人間だ。」
「先輩は私のこと…その…」
「好きだよ。もちろん女性として。でも今付き合ったとしてと、たぶん歴代の男たちと同じような末路を辿るだろ」
「そんなことないですよ…」
「自信なさげじゃん。どうせ君のことだから、『先輩の優しさに対して何も返せてない』って思って一人で悩んでぐるぐるしちゃうのが目に見えてるよ。俺が優しくするのは、そうしたいからだから、返そうとなんてしなくていい。ありのままの君でいて欲しい。一人でぐるぐるしてないで、きちんと話して欲しい。」
「先輩…」
「俺が君を幸せにする、ノストラダムスに誓って予言するよ」
その後、ふたりがどうなったかは、ご想像にお任せします。

2023.3.15
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～あとがきという名の言い訳～
完璧主義がゆえに、何か書き物をしても満足できず完成できずそのまま飽きてしまう、私の悪い癖。なので、ある程度満足した状態で公開しようと思います。でもこれは稚拙なまま公開することへの予防線です。気が向いたら加筆修正します。
頭でっかちなだけで、現実に即していない、ただの妄想です。現実には、こんなこと起こらない。起こらないからこそ、みんな憧れるのでしょう。ただ、いつも頭で考えていることを、こうやって文章にできた。それだけでも前進したことにします。