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連載企画-弐 花鼕論-蕾ひらく心

ドイツの詩人であるゲーテは言った。
「バラの季節過ぎたる今にして初めて知る、バラのつぼみの何たるかを。」と。
そして、こう続けている。
「遅れ咲きの茎に輝けるただ一輪、千紫万紅をつぐないて余れり。」

どういう訳だか、高校時代のある時期からヨーロッパ文学の名著に惹かれ読み耽っていた。
中でも、ゲーテは格別だった。
声に出しても黙読しても、朝に読んでも夜に開いても、どこか割れたような美しい音色を奏でていた。

カフカもトルストイも、ヘミングウェイにも一巡、人並みに慧眼したけれど、ゲーテだけは生命科学としての人間の醜悪をも含んだ自然界を相手にしていたせいか、不思議と納得できるものがあった。

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