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なぜジャイアントパンダの野生化訓練をしなければならないの?

「野生パンダの遺伝子を活性化させるため」

中国の有名な通信社・新華社のアプリでは「パンダ100問」という、一般から質問を募りそれに専門家が答えるコーナーが定期的に掲載される。

中にはすでに多くの人が知っているような質問もあるが、今回は「なぜ野生化訓練を行わなければいけないのか」という質問があったので紹介したい(動画)。

答えているのは中国パンダ保護研究センターの呉代福さん。呉さんによれば、パンダはみんな基地で飼育されているのではないかと思う人もいるが、それはパンダを保護する一つの方法に過ぎない。野生化訓練は野生パンダの遺伝子を活性化させるために必要と答えている。

そして現在では母親同伴方式が採用されていて、子どもは生まれた時から母親と一緒に生活し、生きるための多くの術を学ぶという。

ここで紹介されている「淘淘」(タオタオ)は、母親同伴方式の第一号。中国パンダ保護研究センターでは、2010年に母親同伴の野生化訓練方式が提出され、その7月に事業が始まった。8月3日に母親の「草草」(ツァオツァオ)が出産。2012年秋、その子ども・淘淘は野生化訓練基地で野生に戻った。

呉さんの回答は簡潔で的を得ているが、そもそも日本では野生化訓練についての情報が少ない。以下でその経緯や現状を紹介し、課題について考えたい。

野生化訓練はどのように始まったの?


野生化訓練の構想は、中国パンダ保護研究センターでは早くも1996年にあったが実現しなかった。2000年頃、飼育パンダの数が増えて再検討されることになる。

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