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野生パンダ研究は、ジャイアントパンダの正常な繁殖能力を明らかに

『パンダ棚』No.20 (2020-9-21)


「雷雷」の最後の日々

【あらまし】追悼「雷雷」:1992年冬、四川省涼山州雷波県で片手に竹が刺さった状態で民家に侵入し、保護される。当時の臥龍保護区で治療を受け、片手を切断。性格は非常に温和。不妊治療後、2000年に初めて出産。育児中は片手で子供を抱き、餌は飼育員に食べさせてもらう。2005年までに5頭の子供を産む(そのうちの1頭が現在台北にいる「円円」)。子孫は外国に住み、ファンは彼女を「雷ばあば」と呼んだ。2019年12月、中国パンダ保護研究センターに戻る。初めてのてんかんの発作後、飼育員は毎日栄養食を作った。8月以降てんかんの回数が増え、(転倒により)身体に複数の傷ができた。8月12日、同センターは「雷雷、がんばれ!…」という一文を微博に投稿。奇跡は起こらず、9月9日、てんかんによる呼吸器不全のため永眠。
【コメント】原文は以前同センターで「雷雷」の飼育を担当し、今回11年ぶりに再び担当となり、看取った飼育員の劉さんの回想を中心に語られています。それまで高齢のパンダが病気になったり亡くなるのに立ち会ったことはなかったそうです。
【パンダの名前】「雷雷」(Léi léi/レイレイ)…1989年生まれの雌。

「邁邁」と「霊岩」が河南省の竹海野生動物園へ

【あらまし】9月15日、雄パンダ「邁邁」「霊岩」(共に3歳)が中国パンダ保護研究センターの碧峰峡基地から河南省の竹海野生動物園へ入居予定。全国54箇所の応募の中から選ばれ、1週間後に公開予定。当地の気候は四川省に近く、竹さえ確保できればパンダが住むのに問題はない。パンダの導入は河南放送が県や同園と計画したもの。
【コメント】原文の"jio"は「脚」(「足」の意)の四川方言読みです(標準語のピンインは"jiao")。邁邁が足を噛むという動画はおそらくこちらです。同園ウェブサイトによると、パンダ館は9月22日に開館予定。
【パンダの名前】「邁邁」(迈迈/Mài mài/マイマイ)・「霊岩」(灵岩/Líng yán/リンイエン)…いずれも2017年生まれの雄。
【パンダ施設】竹海野生動物園は2016年5月1日、伏牛山アムール虎園として開園。

中国パンダ保護研究センター2019年生まれパンダの誕生日会

【あらまし】9月16日、中国パンダ保護研究センター神樹坪基地では2019年生まれのパンダの1歳の誕生日会。「汶汶」「山竹」「安安」「四海」と「林氷」の第二子が参加。2019年、同センターでは32頭のパンダ(そのうち双子が10組)が出生。2020年生まれのパンダたちは来年の春節前に公開予定。
【コメント】同基地では昨年末からiPanda上でライブカメラが導入され、ほぼ毎日拝見していたのはこの子たちでしょうか。本当に大きくなりました。写真はこちら()もどうぞ。
【パンダの名前】「汶汶」(Wèn wèn/ウェンウェン)・「山竹」(Shānzhú/シャンジュー)・「安安」(Ān'ān/アンアン)・「四海」(Sìhǎi/スーハイ)…いずれも2019年生まれ。「林氷」(林冰/Lín bīng/リンビン)…2009年タイ生まれの雌。

野生パンダ研究は、ジャイアントパンダの正常な繁殖能力を明らかに

【あらまし】1986年1月、『四川日報』紙上でパンダの繁殖能力の低さが論じられてから35年。最新の研究では、パンダの繁殖能力は他のクマ科の動物と同等であること、野生環境でパンダは複雄複雌の交配を行い、成年後は100%繁殖行為を行うこと、赤ちゃんの生存率は70-90%であることが明らかになった。飼育下ではお見合いしかできないため、自然本来の行為ではない。近年中国パンダ保護研究センターでも飼育環境を改善したところ、雌の発情率が90%以上に達した。野生環境でも、生息地が分断されることによる近親繁殖の問題がある。今後「ジャイアントパンダ国家公園」プロジェクトにより、野生パンダの個体群の保護地が整備されることが期待される。
【コメント】1986年に指摘された現象は、飼育パンダの繁殖率が1/5以下であること、野外観察の結果、雄の二次性徴が不明で、雌への求愛に無関心であることでした。パンダが「性的に冷淡」とは現在の通説でもあるように思います。1986年当時は最初のパンダ基地が設立されてからまだ数年しか経っていませんので、本格的な研究も始まったばかりだったと推測されます。本来の環境に近づけることで、パンダが本来の行動を取り戻し、その結果従来のパンダのイメージが覆るのであれば、大歓迎ですね。動物園や基地でパンダを見られる現状は、本来あるべき環境への、通過点にすぎないのかもしれません。

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