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桜に想いをはせる

 「桜の香り」を謳う商品が続々と発売されるこの時期は、結構好きだったりする。
 好きだから、今家には「桜の香り」が溢れている。
 芳香剤に柔軟剤、香水まで。
 この刹那的な空気を肺に満たして、ため息をつく。
 
 春は嫌いだった。
 ただ、昔から、春の夜の空気だけは大好きだった。
 何だか、異世界に迷い込んだような気持ちにさせる、あのざわめき。
 来てはいけないところに来てしまったような背徳感と高揚感。
 
 もう一度、ため息をつく。
 窓の外に広がるのは、まだ冬の冷たい空気を含んだ夜。
 冬の夜も、何なら秋の夜も夏の夜も好きだけども・・・

 あの夜が待ち遠しい。


栃木県下野市

ご覧いただきありがとうございました。
またお会いできることを楽しみにしています。 緑川