下を向いて歩こう
私の癖。
上を向いて歩くこと。
「上を向いて歩く」は、「顔を上げて」という意味ではなくて、言葉どおり本当に上(斜め上)を見ていて、
いつから始まった癖だかわからないけれど、気づいた時には上を向いて歩いていた。
あっちをキョロキョロ、こっちをキョロキョロ・・・
年甲斐もなく落ち着きのない奴だと思われているかもしれない。
まぁ、気にしたことなんてないのだけれど。
きっと、空色の移ろいや木々の囁き、肌を撫でていく風が心地よくて、声にならない声を出しながら顔を上げ始めたのがキッカケだったように思う。
上に広がる世界は美しい。
心に潜む憧憬も手伝って、より一層眩しく見えることもある。
切なさが滲むことも、自分の無力さを突きつけられることもある。
だけど、足元に広がる世界も負けていないと気づいたのは、写真を撮るようになってからだ。
地球が生み出す燻銀のような世界。
生を終えたものが生み出す侘びの世界。
達観したものが見せる力強い世界。
息を呑み、思わず地面に手を伸ばし触れたくなる世界が広がっている。
たまには下を向いて歩いてみよう。
想像もしなかった、思わずしゃがみ込んで没頭したくなる世界が待っている、かもしれない。
ご覧いただきありがとうございました。 緑川