波の彼方に

夜空に瞬く星たちが、我の頬を照らしている。
金城の赤木はそこに居て、明日の安寧を語っている。
僕たちの暮らしは素朴でも、海は宝で満ちている。
その岸に見える我が家には、家族が笑顔で待っている。
だから必ず忘れない、今日の感謝を忘れない。

雲の彼方の今帰仁(ナキジン)の、遥か古代の王たちは、夢見る力を持っていた。
中夏の人と日の本の人、それを紡ぐ城(グスク)には、穏やかな陽が射していた。
今は帰らぬ人びとの、静かな想いが沈む場所。
傍らで祈りを奉ずる老婦が、静かにそれを伝えていた。

空に浮かぶ昼の月が、右を向いて笑っている。
風はいつも南から吹いて、うーじの畑も笑っている。
遠い邦から来た人は、隣の村のかなさんと、夫婦になって住むと云う。
今ではその邦人は、同じさばにで友となり、今日の命を支えあう。
だから必ず忘れない、信じる心を忘れない。

海の彼方にあると言う、萬世の国の人たちへ。
今私たちは、ここで生きています。

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