#3【変化と、覚悟と。】

私はおばあちゃんっ子だ。
 
 
母親が嫉妬するぐらい、
おばあちゃんのことが大好きだった。
 
 
ほぼ毎日連絡を取っていた。
  
 
でも、胃癌だということを聞いてから
連絡ができなくなってしまった。
 
 
自分の中で、事実が事実として理解できていなくて
胃癌、余命3ヶ月、という”音”だけが
脳内をプカプカしていて
 
 
その響きの絶望感に押しつぶされて
 
 
言葉が出て来なかったからだ。
 
 
しかし、ほぼ毎日連絡を取っていて
いきなり電話をしなくなったら
そりゃ心配もされるわけで
 
 
4日後ぐらいに、唐突に
電話がかかってきた。
 
 
「ちなつ、元気か〜?」
 
 
いつものその声を聞いて
何かが吹っ切れた
「おばあちゃんが一番元気やないのに
そんな能天気に元気かーとかゆうたらあかんやん」
 
 
そのあとは、ケラケラ笑いながら
いつものようにたわいもない会話をして
電話を切った。
 
 
でも、電話の最中に
なんども鼻をすすっていたのは
私だけではなかった。
 
 
お風呂の中で
声を押し殺して、泣いた。
 
 
先ほどまで頭の中をプカプカ浮いていた
“胃癌”、”余命3ヶ月”という言葉が
ついに脳内で着地して
急に現実のものになって
逃げられなくて、苦しかったからだ。
 
 
ただ、その日から
夜は寝れるようになったし
おばあちゃんと、あと3ヶ月
一緒にどう生きるのかを考え
できることをしようと思えるようになった。
 
 
だから、やっぱり
おばあちゃんの、あの能天気な声は好きだし、
おばあちゃんが大好きなんだ。

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