1on1ミーティングで育成・教育を行うために必要なこと

1on1ミーティングの狙いのひとつに部下の成長を促すことがあります。
僕がはじめてエンジニアリングマネージャー(EM)になった時、「1on1ミーティングを通して教育・育成をどう行えばいいのか?」が分かりませんでした。

今回は僕が1on1ミーティングを実践する中で学んだ「教育・育成を考える上で土台となる考え方」や「実際の1on1ミーティング運用方法」を紹介していきたいと思います。

自分の経験を振り返り、考えさせる

経営コンサルタントのマイケル・ロンバルドとロバート・アイチンガーの研究で、「70:20:10モデル」があります。
成功したリーダーの学習に影響を与えた割合を定義づけたもので、

70_20_10モデル
  • 7割を仕事上の経験から学びます。

  • 2割を先輩・上司や顧客など他者からの助言やフィードバックから学びます。

  • 1割を書籍・研修などのトレーニングから学びます。

学習に影響を与えたもので最も大きいものは、仕事上の経験からの学び。次に他者からのフィードバック、残りを研修等トレーニングから得たと言われています。
自分の経験を活用して学ぶことが多く、そのほかのやり方を補助的に活用して学びにつなげているということです。

つまり、経験したものをうまく学習に繋げるかということが教育・育成を考える上で大切ということです。

では経験をどうすればうまく学びに繋がるかを考えたいと思います。
こちらは、組織行動学者デイビッド・コルブの「経験学習モデル」で説明できます。
コルブの経験学習理論は、4段階からなる学習サイクルの理論です。


コルブの経験学習理論
  1. 「具体的な経験」は、仕事などを通して具体的な経験をすることです。

  2. 「内省的な観察」は、具体的な経験をさまざまな観点から振り返ることです。

  3. 「抽象的な概念化」は、経験を一般化・概念化・抽象化して、ほかの状況でも応用可能な知識・ルール・スキーマやルーチンなど自分理論化することです。

  4. 「積極的な実験」は、経験を通して構築された自分理論を実践する。その結果から生まれる経験や内省によってさらに洗練される。

つまり、経験したことを振り返り、今後も使えるように抽象化し理論化する。そして構築された理論を実施し、得られた結果を振り返るというサイクルを回すことで自分の経験から学習し能力として伸ばせるということです。

経験学習を活性化するためにサポートする

教育・育成を促進するためには、部下の経験学習サイクルを回すことが肝要ということがわかりました。

経験学習サイクルを回すためにできることは大きく2つあります。
まずは、部下自身が経験学習サイクルを意識して振り返りを行うことです。

部下ができること

しかし、経験学習サイクルを回すこと自体が難しいものです。自身で振り返りをして学ぶ習慣や経験を抽象的な概念化する思考力や技術がないとサイクルを回すこと自体ができなかったりします。

振り返りをする習慣を身につけるためには、振り返るためのトリガーを決めることで習慣化しやすくなります。
例えば、4半期ごとなど時期で決める場合や怒りや悲しみなど感情が大きく動いたタイミングで振り返るなどです。特に、自分の感情が大きく動くときは、壁にあたった時や現状のスキルでは突破できないタイミングなことが多いので、振り返り学習するタイミングとしては最適です。

振り返り方は、YWT・KPT・KPTA・LAMDAなどの方法で最初は言語化してみると振り返りがしやすくなります。

1on1ミーティングを活用して振り返りを促進させる

経験から学び成長するためには、自分が経験したことを振り返り、一般化して自分理論を作りそれを実践することでした。
しかし経験学習サイクルの各ステップを回すこと自体が難しいという課題がありました。

そこで上司ができることは、部下の経験学習サイクルを回すことのサポートです。

上司ができること

具体的には、新しい経験が積めるような仕事のアサインと部下の振り返りのサポートです。
部下が新しい経験を積むためには、どんな仕事に興味・関心があるのか?の把握や今やっている仕事内容、性格適性などを普段の会話などから把握しておくことが大切になります。

振り返りのサポートでは、今経験していることの言語化や明確化を実施します。
例えば、今の仕事でどんな経験をしているかを傾聴することや上司からどう見えているかなどのフィードバックを重ねることで、経験したことの輪郭をはっきりさせます。そして部下自身が振り返れるように言語化の手伝いをします。

振り返りには、落ち着いて考えられる雰囲気と時間が必要です。
定期的に行っている1on1ミーティングで部下から話したいトピックがない時にはこのようなサポートをしてみたり、時間が取れない場合は、4半期ごとや評価のタイミングなどで時間を取ります。

できることまとめ

参考資料

書籍

記事

論文

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