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おかえりアリス さよならパライソ

もしこの世に楽園があるとしたら、それは自分の持っている一番美しい過去の記憶だと思う。おかえりアリスを読んで、そう思った。自分も他人も男も女も知らなかった頃の、ただ目の前にあるものを楽しんでいるだけでよかった頃の記憶。でも、そこにずっと留まることはできないし、もし仮にできたとしても出会えなかった人や見れない景色があることをもう知ってしまった。過去を美化しすぎていることは充分わかっているのに、現実は時にとても窮屈で、もう戻れないことがわかっていても、それでも帰りたい。性別も、年齢も、学歴も、職業も、全て無かった頃に戻れたら、自分がただ自分として認められて生きられていた過去に戻れたら、そこから真っ直ぐ延長線を引くように何も間違えずに生きてこれたら、私たちは綺麗なままでいられた?悩まずに済んだ?おかえりアリスは、そんな三人の苦しみを実直に描いて、傷つきながら、転びながら、でも、確かに現実に蹴りをつける話だと思う。読んでいてずっと、彗ちゃんが心配だった。人一倍悩んで、苦しいはずなのにいつも綺麗な顔をしてたから。でも、ずっと自分の苦しみや自分の理想に真っ直ぐでカッコよかったな。私は、三人の出した答えを信じたいと思った。間違いでも正解でもいいから、三人が美しいと思える自分の形のまま生きていてほしいと思いました。

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