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松活の半年

初めて自分で松をつんだのは2021年6月9日。ロックの日ならぬ記念すべき松の日になりました。

今日12月9日で松活(松の活動を略してこう言っている)を始めて6ヶ月経った。毎日松葉を目にしている。手にしている。日に日にありがとうの気持が増している。

最初は、ヒマラヤ杉との出会い。パンデミック下で散歩が増えて、野草を摘んで染物も少しずつ始めていた。包丁で短く切って刻み、熱湯を入れて飲んだ。不思議な味でも、からだが喜んでいるのか元気になってくる。

SNSで松の愛好家の方のページを見つける。二葉でも三葉でもない、束なので、松なのかどうかわからず、問い合わせしたのだ。誰からも回答がなかった。後日、近所の公営の緑化センターで、植物博士のおじさんのところに持っていたら、分厚い百科事典を開きながら優しく教えてくれた。日本では杉cidarというけれど、外国ではcidarは松の仲間なんだよ。

それから、松を探す旅(近所ですが)を始める。お庭にありとあらゆる植物がある知人に聞いてみたけど、松はないとのこと。立派なお屋敷のお庭の背の高い松、美麗に剪定されていて、文字通り、手が届かない。敷居が高く、神々しく、触ると痛いし。今では、家から歩ける範囲であれば、どこにどんな松の木が植わっているのか、頭に入っている。

夏から本格的に草木染めをするようになったが、松はそんなことで高貴な存在なので、なかなか組み合おうと思えない。ひとまず、和紙で染めてみることにした。いつも古代文字を書いている半紙で二枚重ねて染める。なかなかシックで素敵な色になる。布は難しそうだし、分量も必要になる。松葉茶にした後に残った松葉を、燃して煤にしてみようと思い立つ(染物に使う予定で、これはまだ実験中です)。

それからふと自転車で足を伸ばした、浜側のプロムナードで、黒松を見つけた。防風林としてよく使われるようだ。青い松ぼっくりに大興奮。景観を壊さない程度に少し頂いて、松ぼっくりのジャムを作ってみる。ロシア人の動画のレシピで作った。ものすごい味が濃い。たくさん食べられない。独特の香りもある。お湯で薄めて飲んだりもした。松脂(やに)がとてつもない。使ったまな板や鍋などはオレンジ色がついたり、ザラザラしたり、松専用におろすことに決める。

それから、Pine Jamというタイトルで、ピアノで書く詩、と称してカセットのアルバムを作る。まだ届いてないけど、フランスの友人にフランスでポピュラーだという松のキャンディを送ってもらうように頼んだ。SNSの松のファンサイトに、松に詳しい松博士のような方々もおられて、投稿もさかんで、これまでとても勉強にお世話になった。わたしも時々、松活報告の投稿をした。最後に掲載している写真はその一部。

松葉と松ぼっくりを入れてお米を炊く。醗酵させて発泡させて松葉サイダーに。松葉ジュースの後に水を入れて「還元水」なるものを作り、いろんな料理に使って応用。葉っぱ療法と言って痛みに葉を当てる民間療法を松葉で試してみる。松葉を入れて豆乳ヨーグルト。わたしは湯たんぽから起こした種で長年継いでいる豆乳ヨーグルトに加える形で続けている。酸味が爽やかで、口当たりも柔らかくて、美味しい。ほとんどSNSで教えてもらったものである。

そして、自分で実験し始めた。松葉煙草。かつてスモーカーだったことがあるが、その時はローラーだった。周りは喫煙者が多かったし、たばこへのおもいも色々ある。気管支が弱いのでどうかなと思ったが、蓬(よもぎ)の煙草を吸っていた韓国人の友人のことを思い出して、松葉と蓬とを乾燥させてブレンドし、残っていた昔の紙でオーガニックのヘンプのがあったので、それで巻いてみる。

燃す。なんともいい香り。吸ってみる。肺に入れると、からだがすごく楽になる。それを投稿してみた。たくさんの方が注目して質問やコメントをくださり、嬉しい。98%は男性のファンで成り立っている特殊な音楽ファンページにわたしが書き込んだときくらいしかこういうことは起こらなかった。意識の高い個性的な女性の方々と交流できて嬉しくなる。近所の人にもらった日本薄荷(ハッカ)の乾燥したものを入れるとメンソールの風味になり、美味しい!

松葉煙草の実験は止まらなくて、もともと巻くのが好きなこともあり。ファンページの松博士の方はキセルを使っていることを知り、とても憧れるけど、わたしは紙にこだわる。喫煙者に戻ったが、依存性がないので、吸っても吸わなくてもいい感じ。ハーブを焚いている感じにも似ている。試したものは、モリンガ、金柑の実、桑の実と葉、ビワの葉、全て乾燥させたものだ。松葉との量や、松の種類によっても、香りや風味が違っている。

それからは、松のご縁が繋がっていく。次第に松が寄ってくるというか、わたしが松に寄っていってるのか。山に入ると松葉が大量に落ちている場所を見つけたり。いつもの散歩道の公園に今まで見たことがないくらい背の高い大きな松があったことに気づいたり。薬の巻かれていない貴重な赤松を、今は剪定と称していつでも頂ける立場となった。ありがたい。

そして、そういう境遇が落ち着いた頃、再び、松で布を染めたい欲望に駆られた。夏にぴったりの爽やかな色の松葉ジュースで絹に挑戦しようと思いついた。いろんな実験を地道に重ねていたが、これまで松にはなかなか手が出せないでいた。材料の確保ができて、藍で染めるために準備していた絹ののこりが出て、色んなことが整い、叶った。

シルクのスカーフは、松の透明感と絹の光沢のコラボで、首に巻くともう二度と離せなくなるくらい気持がいい。色は薄いが品があり眩しい白。手作りの媒染液を使って、少しシックな色にも仕上げられる。みんなに知ってもらいたくて、オンラインでワークショップも開催した。友人や知人にもプレゼントする。小さなサイズは心臓のある箇所や下丹田の場所に入れている。肌と下着や肌と服の間で滑りもよい。絹は和装に使われる、肌に優しい羽二重を選んでいる。

ここまで来た。わたしにとっての松活、もう頂点か。と思っていた頃に、また実験課題が出てくる。今は、松の全てを使って、身近な綿を染めようと、日々精進している。多忙な日常でも、仕事の終わりに、カレーパンと松葉水の小ピクニックを楽しむ。枝を頂いたら、魔除けにしたり。松葉と竹の皮も入れて、初めて作った梅干し。松葉で炊いたご飯は翌日の冷やご飯も美味しく、とりわけ焼きおにぎりが気に入っている。松竹梅干しと共に最強の薬になる。

そして、松活の途上でやってきた、現在生活を共にしている小動物が松葉に目がない。めざとく袋から見つけてむしゃむしゃ食べていたり。当初あまり水分を摂らなくて心配していたけど、還元水を薄めたお水を入れたら、よく飲むようになって安心している。動物は本能的に知っているのだろう。

夜寝る前にゆっくりぬるめの松葉湯に入る。源泉かけ流しの銭湯に行かれなくなって長い、とてもたすかる。気道が開いてきたのか、松が持っているという多種多様なアミノ酸のおかげか、からだが元気になってきた。そして、きっとこころも。最近は、松の枝や葉を入れて煮出すチャイやコーヒーにもはまっている。まろやかになり、もう普通の飲み物に戻られない。

これからも松活を続けて実験もしていきたい。なにより松が好きな人と繋がれるのが楽しいから。

*もし音楽に興味持ってくださった方おられましたら、こちらで試聴できます。わたしの松への愛を表現しています。https://noriko8.bandcamp.com/album/pine-jam

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