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「大人になったら、」重い恋愛小説

 ちょっと疲れてきたので軽い恋愛小説が読みたい、と思ったら案外重い気持ちになりました。
 主人公は35歳独身、チェーン系カフェの副店長をやっているメイ。
 この人がまたしょっちゅう「もう、若くはない」「若い時のような恋愛はできない」みたいなことを考えている。
 彼女より10ほど年上で未婚の自分は「なんか、すみません」という気持ちになる。

 さらに追い打ちをかけるのは「みっちゃん」という親友がいるのだが、この人がなんというか絶対友達になれないタイプだ。
「(婚活を)考えるだけじゃ駄目なの。行動しないと。あっという間に、四十歳にになっちゃうよ」
などと言う。
 すみません。なんだか40を過ぎたどころか大分経ってしまいました、ごめんなさい、という気持ちになる。
 こういう「自分の考えていることが絶対正しい」と信じて疑わない、そして人に押し付ける人は苦手だ。

 「あとがき」にもあったが「お仕事小説」として読むと本当に面白い。35歳正社員の女性がどんな働き方をしているのか、どんな葛藤があるのかが粒さに描かれている。
 1番「ええ!」と思ったのが「店長試験」。
 今は形式が変わったものの、少し前までは「相手の悪いところを言い合う」みたいな自己啓発系のことをさせられたり、突然知らない家に「掃除させてください」と言ったり、など「こんなことをやらないと会社員として認められないのか!」と吐きそうな気持ちでいっぱいになった。
 デリケートな人は社会では生き残れない。
 でも、こんなことを潜り抜けてきた人が今、出世してるんだろうな。
 偉い人ってなんなんだろうね。

 恋愛小説としてみると、よく読めば、メイさんの周りには魅力的な男性がたくさんいる。
 毎日同じ時間にカフェに来る純朴な羽鳥先生、入社したての生意気な杉本君、いじめられっ子のオーラを持ちながらも仕事で成功しタワーマンションに住んでいる幼馴染の大ちゃん、クリエーターで女慣れしてそうな常連さんの鯨岡さんなどなど。
 まるで、恋愛シミレーションゲームのように選びたい放題ではないか。

 しかし、8年前に別れた・・・もう結婚すると思っていたふーちゃんのことがどこかで心の中にあり、そこで主人公の心の情動のようなものがストップしてしまっている。
 
 そして、ゆっくりゆっくりと進むメイの恋。
 その進み方は、中学生の初恋のように進みが遅くそしてとてもピュアだ。
 
 その人のタイミングというものがあるので、いくになってもピュアな恋愛をして良いのではなかろうか。
 しかし、それは客観的に見てるから言えることであって、30代だと「早く結婚しないと高齢出産になる」などの焦りもあるだろう。
 ただ、色々な「焦り」のせいで「大切なもの」を見逃してしまうのは勿体ないよね。

 たくさん本を読んでいるからと言って「上手な恋愛」ができるわけではないけど、今、焦っていたり、考えていることが愚かしいかも?と見直すきっかけにはなると思う。
 
 

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