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埼玉県虐待禁止条例騒動で感じた違和感の正体

埼玉県で「留守番は虐待」なる条例が可決されそうになるという、子育て世代界隈でザワついたあの出来事、とても現実離れした内容に強烈な違和感を感じて、最終的には取り下げられたと聞いて心からホッとした…

この違和感の正体はなに?

世間でいろいろと語られているが、私はたまたま同時期に受講した労働安全衛生に関する講習会で「あー!そうか!」とすっきり腹落ちする考え方に出会えたためこちらでアウトプットしたい。

安全対策には正しい順序がある

出来事の概要

埼玉県で以下のような条例案が可決寸前で取り下げられた。

「子どもの留守番は放置で児童虐待だ」とする虐待禁止条例の改正案が、埼玉県議会に提出され、6日委員会で可決しました。
(中略)
罰則規定はないものの、子どもを「放置」することを児童虐待と位置づけて禁止しています。

具体的には、保護者などに対して小学3年生以下の子どもについて「放置」の禁止を義務づけ、小学4年生から6年生までは努力義務としています。

この「放置」について埼玉県議会自由民主党議員団は、これまでの取材の中で、子育て家庭ならよくある「子どもを自宅に留守番させて外出すること」や「子どもだけで公園で遊ぶこと」もあたると説明していました。

埼玉県議会「子ども放置禁止」条例の波紋 留守番は虐待?反対意見相次ぐ 議論の経緯は(NHK)

安全対策の優先順位

私は最初、SNSで条例可決に反対する発信が流れてきたことでこの出来事を知った。

前述の通り強烈な違和感を感じたが「そもそもこの発信が大げさだったり、報道も切り取りじゃないの?」といろいろ情報を集めたりした。

結果、違和感は強まるばかり。(全然大げさでも、切り取りでもなく、そのまんまだった…)

そういえば…と、先日受講した安全衛生推進者(常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業場において選任が法律で義務付けられている)講習会で学んだ「リスク低減措置の優先順位」にこの出来事を当てはめて考えてみたら違和感の正体見えてきた。

職場の安全サイト(厚生労働省)

ここで重要なことは、対策をステップ1~4の順番で適用しなければならないということです。ステップ1やステップ2を飛ばして、ステップ3を実施してもリスク低減対策を実施したとはいえません。

“備えあれば憂いなし” リスクアセスメントをやってみよう(茨城産業保健総合支援センター)

私の違和感の正体

子供が被害に遭う事件・事故をリスクとして今回の条例案を、上記に当てはめるとステップ3(管理的対策)に当たると思う。もしくは、社会全体や地域・共同体ではなく、「各家庭でちゃんとしてね」ともとれる物言いは、ステップ4(個人用保護具の使用)の括りともとれる。

強烈な違和感の正体は「順番が違う!!!」に尽きるなと思った。

たぶんステップ1.2をやり尽くしたと感じる人が多ければ、また、ステップ3にしても、もう少し共助・公助の考え方が入っていたら、世論の反応も少しは違ったんじゃないかなと思う。

まとめ

確かに子供が大人の都合や不注意で置き去りにされ犠牲になる痛ましい事件・事故は立て続けに起こっている。それに対して、何等か対策を講じなければという意図は理解できる。

でも、あるべき姿はこの労働安全衛生の分野で言われる正しい順序で対策を進めること(特に行政は)だと思うので、ステップ1(危険性の除去)や、ステップ2(工学的対策)の施策を優先して進めるのがよいと思う。さらに次のステップに進めるにしても、子育て世代や子供のことをしっかり知ったうえで、各家庭に負担を押し付けるのではなく、土台となる仕組みや環境づくりから取り組むべきだと思う。

何か偉そうな文章になってしまったが、いちワーママで、職場の安全衛生推進者としても、自分にできることを引き続き考えていきたいと思った。


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