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透明な太陽発電パネルをお家で自作しよう:①Richard Lunt教授の革命

太陽光発電パネル以外でも小川があればオフグリッド

私はヨーロッパ在中なのでアパートの外観が変わるような変更(太陽光発電パネル、風力発電の塔)は景観の保全から京都市みたいに厳禁なので許可がめんどい。それでも、オフグリッドな電力って好きで、ここ数年は暇を見つけては趣味として自宅に設置する究極の発電システムの選定をしようと色んな技術を見て回った。

上のビデオのAndyさんみたいに、近くに小さな小川が流れている場合、洗濯機を改造すれば一家の電気を賄うくらいは結構簡単そうだ。勇気をもらう。

透明な太陽光発電パネル

しかし、上の水力発電は都市部で賃貸の場合なかなか難しい。キャンプで必要な程度でいいなら適当なポータブルな太陽光発電パネルの製品とYetiのリチウム電池でも買えば済むが、スケールできてアパートの外観をあまり変えないような方法は?

そこで昔から注目していたのが透明な太陽光発電パネルの技術。これなら窓ガラスをそのままパネルにしちゃえばいい。普通は半導体としてシリコンを使い、可視光を吸収する都合、どうしてもパネルは黒くなる。

ここを改善する可能性があるのがいわゆる有機系太陽光発電パネルOrganic solar cellと呼ばれるタイプで研究がされていたが、2018年にミシガン州立大学のリチャード・ラント教授のチームが主に赤外線をエネルギー源とする素材COi8DFICを使った透明な太陽発電パネルの試作に成功し、シリコン系の最高変換率25%に迫る22%を達成した。以下の記事に詳しい。

赤外線をエネルギー源とする素材COi8DFIC

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これはLuft教授の論文からとった図なんだけど、COi8DFICは有機化合物で結構複雑な形をしているのが分かる(B)。これはコンピュータのシミュレーションでどんな構造だと赤外線を吸収してエレクトロンドナーが発生するのかを計算してから合成した特別な有機化合物なのだ。(C)を見てもらうと可視光はあまり吸収しないのが分かる。だから透明なパネルで電力が作れるんだね。

商品はたぶん一生待っても来ない

この手の技術のスタートアップ企業は多数あるが、なかなか商業ベースに持ってくるのが難しい。技術よりも既得権益との戦いと思う。

例えば上の記事の最後にも経緯が書かれているけども、カリフォルニア州サンタバーバラにNext Energy Technologiesという会社があり、政府も支援して製品化を目指していたがその資金でこの会社が達成できた変換効率は7%と残念な結果。それが2018年だが、2021年の段階でも市場にはまだなにも出ていない。ホームページに製品があるか確認してみてね。

じゃ、問題は技術じゃん?いえCOi8DFICを使えば22%なのが2018年に分かってるのになぜ2021年の今でも製品化に失敗しているのかを考えてみましょう。

私は他にも数社期待していたのがあって数年見守ったんだけど、製品化は全部失敗か音沙汰なし。そもそも太陽光発電パネルの市場というのは中国の独壇場であり、その市場を脅かすような技術はダンピングされて価格競争で難しい。

挿絵に使った写真はScience Magazineという一般向けの有名科学雑誌。分かる人に分かるように書くと、透明なパネルの後ろにピラミッドが見えるでしょ?1%はこの技術を制御下に置いたから安心しろというDSの仲間向けのメッセージなのよ。

自作はできま〜す!!

そんな訳で「じゃ、有機系透明太陽光発電パネルを自作したろうやないか!」というのが本シリーズである。趣味だ。

まずは法的な面。如何に特許で守られていようが自宅で趣味として使うのなら違法ではない。製品つくってビジネスしてはいけないというだけだ。DIYには特許は手を出せない。個人の権利を知っておきましょう。

技術面は昨日今日とリサーチを重ねてあてをつけたんだけども、少なくとも黒いパネルの自作してるビデオはいっぱいユーチューブに上がっている。

第二回に酸化チタンをつかった色素増感太陽電池の自作例を紹介する予定なので、身近な素材で太陽発電パネルが自作が可能なのは分かると思います。

酸化チタンって化粧品の美白とかサンスクリーンに使われるので安全性も高く、普通にeBayなどで購入できる。だから色素増感太陽電池なら一般の家庭でも余裕で作れるよ。でも、これは透明ではなくチタンで白く曇った感じが限界かもしれない。

現時点での私のターゲットは上のLunt教授の赤外線吸収の太陽光発電パネルなので22%を目指す。透明なパネルを作れるかは素材COi8DFICの入手の可否次第と思う。シグマアルドリッチで販売してるので、COi8DFICを個人として購入できれば普通に22%達成できそう。しかし、個人には売ってくれない場合は代替案としてだれでも入手可能で赤外線を電気に変換するポリマーなどをリサーチする事になる。