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イクラと僕

ご来場ありがとうございますハルヤギです。

他愛もないお話です。

皆さんも嫌いな食べ物のひとつやふたつありますよね。

僕はイクラが嫌いです。

いや、嫌いではないけど、苦手です。

何が苦手かというと「生臭さ」です。

よく、
「いいやつ(新鮮なイクラ)食えばほとんど臭くないよ」
とイクラを好きな人がアドバイスをくれます。

しかしながら地元で評判の"回らない"お寿司屋さんに行き、「上」のなかに紛れているイクラを食べるのですが、どうにも臭い気がするのです。

こりゃイクラの味自体が苦手なのか?

そんな考えも浮かびました。

また、
「一気にバクッと食べた方がいいよ」
というアドバイスもイクラを好きな人が教えてくれます。

というのも、僕はイクラを1粒か2粒を口に入れて味を確かめるからです。

いいおっさんがイクラをチマチマおちょぼ口で食べている姿も笑えますね。

そんな僕にとってのイクラチャレンジは、年に1度か2度行われます

そうして10年ほど経過した昨年、転機が訪れました。

それは意外にも、自宅近所の民宿へと食事をしに行った時のことでした。

いつもであれば、うどんセットか天ぷらセットあたりを注文するのですが、その日はなぜか海鮮丼に気持ちが向いたのでした。

注文するのは初めてです。

(イクラはあるのかなぁ)
待っている間、期待と不安がよぎります

そしてやや大きめのうつわが登場し、僕は一気にフタを開けました。

するとそこにはコロコロとしたイクラが散りばめられていました。

(ち!ち!ち!散らかってるやん!!)

今まで見た多くのイクラは、粒同士が割とひっついていることが多く、その時見たコロコロ転がるイクラは、ハリのあるタピオカのようにも見えました。

「これはいけそうだ!」

根拠のない自信が僕を駆り立てます。

コロコロ転がるイクラは、それまでのイクラチャレンジとは違い、僕に食べられまいと箸から逃げまどっています。

そしてついに、二粒の張りのあるイクラが僕の歯と歯の間でプツンと弾け、薄しょっぱい味がフワッと口の中に広がりました。

と、いつもならそこで生臭さも一緒に感じるのですが、一向にやってきません、後味も特に問題ない。

(ま、まさか、、普通に食えた!?)



僕はテーブルを囲んでいる家族をぐるりと見回し、興奮気味に声を発しました。

「よぉ、食えたっ」

一同は、(あー、はいはい)という表情を見せます。

僕にとっては、はじめて口笛が吹けた時のような、そんな意表を突かれた喜びでした。

もうちょっとリアクションしてくれてもいいのになぁ、と思いつつ僕は箸を進めます。

方々に転がるイクラを気にもとめず、ボリューミーな海鮮丼を最後まで頂くことができました。

何度も何度も挑戦し続けただけあって、イクラを制すことのできた感動はしばらく続きました。

食えた、イクラが食えた。
臭くなかったぞ、普通に食えた。
普通食えたんだ!
イクラを普通に食えたぞ!!
・・普通に食えた?
普通に?
ふつう?
ふつう・・・

そうなんです。
気づいてしまったんです。

普通に食っただけで、美味しくはなかったんです。

プラマイゼロ。

あくまでも普通に食えただけなんです。

調子に乗ってしまった自分が恥ずかしくなりました。

いつか、いつかイクラ丼を頬張って喰らっている姿をインスタ映えしてやる!

意味があるようで意味のない戦いは続くのです。


〈あとがき〉
「苦手なら食べないで他の人にあげればそれでいいじゃん」はい、読者サマの言う通りです。しかしながら皆が目の色を変えて食べたがっています。だからほんとは美味しいはずなんです。それを僕がおかしいばかりに損をしている。そんなチンケな理由でイクラでも挑戦し続けているのです。

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