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建築士試験の知識でマスターする木造構造計算3 層せん断力係数を求め地震力を出してみよう

第1回 地震力(このページ)
第2回 地震用の重量Wiの算出
第3回 層せん断力係数を求め地震力を出してみよう(このページです)
第4回 地震力から必要壁量を出して建物が安全か確認しよう
第5回 風圧力から必要壁量を出して建物が安全か確認しよう 見つけ面積編
第6回 風圧力から必要壁量を出して建物が安全か確認しよう 計算編
第7回 風圧力から必要壁量を出して建物が安全か確認しよう 検討編


前回の予告通りCiを求めてみましょう。

Qi=Wi×Ci

地震力は前回求めたWi(地震力用の重量)とCiを掛け合わせてせん断力として求めます。Ciは層せん断力係数です。地震で建物が揺れる場合、高さが高いほど揺れそうなのは感覚的にわかりますね?高層ビルが壊れないけど長周期地震動で大きな揺れが発生する、とか聞いたことがあると思います。そういう現象を数式化して層せん断力係数としてまとめたのがCiです。ただし揺れの影響は地盤とか地域とかも密接に関わってくるので、Ciはその傾向を簡単に数式化して求めるようになっています。

Ci=ZxRtxAixC0

という有名な数式がそれです。

今回はどうかというと、
Z=1.0
Rt=1.0
A1=1.0 A2=1.352
C0=0.2

となります。低層だと非常に単純です。では1つずつ見ていきましょう。

Zは地震地域係数で、過去の地震記録に基づいて地域毎に設定される係数です。0.7~1が定められています。Ciの式は大きいほど地震力が強くなりますので、Zも大きいほど地震力が大きくなります。地震が多くて被害が多い東京等は1.0で、沖縄は0.7です。調べればわかります。もちろん安全側に0.7の地域でも1.0で計算することは構いません。静岡県はH29より、独自のZsを条例で定め1.2としています。今回は東京と仮定しZ=1.0とします。

Rtは、建築物の振動特性です。T(設計用一次固有周期)とTc(基礎地盤の種別に応じた数値)で決まります。つまり建物の固有周期と地盤によって、建物の揺れ方を数値化した係数ということになります。Zと同じく大きいほど地震力が大きくなります。計算式はここでは省略します。どこでも解説ありますからね。しかも構造計算ソフトでは、自動計算されますので、特に考える必要はありません(高度な構造計算は除く)。
ただ、大きいほど地震力が大きくなる。木造住宅の場合、Rtが1が多いこと、くらいは覚えておいた方が良いでしょう。今回もRt=1.0です。

Aiは、地震層せん断力係数の高さ方向の分布で、高さ関連の地震力の補正するための係数です。なので各層ごとに求めます。iは各層の数字です。今回は2階建てなのでA2(2階というより2階天井面付近)とA1(2階床面)を求める必要があります。こちらも詳しい計算式は省きますが、一般的に高さが高いほどAiは大きくなります。今回も1階は1.0 2階は1.352です。

C0は、標準せん断力係数です。正直よく分からないのですが、過去の地震を分析した結果、地震力は建物の重量×0.2(または0.3)程度であると結論づけたようです。この数字を標準せん断力係数と呼びます。0.2は中規模の地震(一次設計用)、0.3とするのは靭性を期待しない建物用です。大地震時は1.0(2次設計時)となります。木造住宅の構造計算では、0.2を採用します。

耐震等級などを計算するとき、等級2では1.25倍、等級3では1.5倍の地震力がかかることになります(建物の強さが1.25倍、1.5倍というわけではない)。なので、設計するときはC0を調整します。具体的には、0.2に上記倍率をかけ算します。耐震等級2では0.25、耐震等級3では0.3となります。この力に耐えなければならないので、耐震等級2,3は普通の建物に比べて強いとされるのです。

こうやってみていくと木造2階建ての場合、
Zは地域で固定(通常は1)
Rtは木造では通常1
Aiは1階は1,2階は計算で異なるが1階より大きい
C0は0.2

なので今回は、Aiの2階以上を計算すればCiは出ますね。C1とC2で異なるのは、A1とA2の違いだけということになります。

C1=1×1×1×0.2=0.2
C2=1×1×1.352×0.2=0.2704

となります。前回、W1は61.6kN、W2は20kNとだしていますので、地震力Qiを出すには、各階のCとWをかけ算すればよいです。

Q1=61.6×0.2=12.32kN
Q2=20×0.2704=5.408kN

となります。ここで重要なのは、重量Wは下階ほど重い、層せん断力係数Cは、上階ほど大きいのです。建物は重いほど揺れやすく、高いほど揺れやすい、ただ、重さの方が優先されることが多いので、一般に下階ほど強く作らなければならない。このことを頭に入れておきましょう。

はい。数式だらけで意味がわかりませんね?次回はこのQを使って、この建物の壁量がどれくらい必要かを見ていきましょう。

次回の記事はこちら(第4回)

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