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カウンセリングの目的とは

こんにちは。白目みさえです。
臨床心理士/公認心理師として精神科で勤務しながら漫画家やってます。
漫画家活動はこちらにありますのでよろしければ遊びにきてくださいね。


さてよく質問いただくので簡単にお答えします。
信じられへんと思うけど「いつも」書き出しは「簡単にお答えしよう」と思っているのに最終的に全部すごいボリュームになってるので、今回こそ「短編集」に入れたい。


カウンセリングの目的

カウンセリングとは、依頼者の抱える問題・悩みなどに対し、専門的な知識や技術を用いて行われる相談援助のことである。カウンセリングを行う者をカウンセラー、相談員などと呼び、カウンセリングを受ける者をクライエント、カウンセリー、相談者/来談者などと呼ぶ。 ウィキペディア

クライエントのことカウンセリーって言うんや。知らんかった。


これみて「なるほどな!」って思える人は少ないんちゃうかと思います。
私も言葉で賢そうに説明せえって言われたらこうなるんですけど。

もうちょっと言うと「困りごとを解決するためにお助け」することです。
そしてその「困りごと」は「心理的なこと」に限ります。

例えば「裁判で訴えられそう」とか「会社が経営で傾いている」とかは無理です。それはそれの専門家がいるのでそちらにってなります。

また「眠れない」ので「眠らせてください」は無理です。
睡眠薬とかは医師じゃないと処方できないので。
「眠れない」ので「原因について考えたい」」やったらできます。
「眠れない」ので「眠らせる」のではなく、「眠れない」ので「眠れるためにはどうしたらいいかを考えたい」ならカウンセリングで一緒に考えられます。

「学校に行けない」ので「学校に連れて行ってください」も無理です。
「学校に行けない」ので「自分が学校に行くためにどうしたらいいかを考えたい」ならお付き合いできます。


結局カウンセリングってなにする場所なん?って言われると。

その人が自分を使って自分の問題を解決していくためにはどうしたらいいのかを一緒に考えていく場所です。


考え方も捉え方も行動も結局「自分」がすることなので、心理士が直接的に、もしくは代わりに何かあげるのではなく、「自分」という素材を使ってどうにかしてもらうしかありません。

カウンセリングの時間で少し何かが楽になったとて、その後日々の生活を過ごしていくのは「自分」なのです。私が付きまとってどうにかできることではありません。(来て欲しくないでしょうし)

でもだからこそ、相談者様が「自分」を理解し「自分」の能力をどう使うかを考えて「自分」でやっていくための手助けをするのがカウンセリングです。

(もう長くなってきたで?)


よく使われる例え話ですが。

あなたが「魚が釣れない」と悩んでいたとしても。
カウンセラーが魚を釣ってあげることはできません。
釣竿を買ってあげることもできません。
そしてこの例え話では多くの場合
「釣ってあげるのではなく釣り方を教えてあげるのが大事」
と言いますが、カウンセリングの場合
実際に見て「釣り方」を教えていくというよりも
あなたに「自分の釣り方」を振り返ってもらうことになります。

どんな状況だったのか
自分ではどのように考えていてどう釣っているのか
自分では何が問題だと思うのか
今まではどうやってきたのか
「釣れない」時と「釣れる」時に何か違いはあるか
「釣れない」ことであなたにとって何がどう困るのか
「釣れない」時にどんな思いになり、それがどうあなたを苦しめるのか

などを聞いていきます。


「カウンセラーはふんふん話を聞いているだけ」と言われることがありますが、基本的には相談者様に話してもらわないとこちらも何もわからないからそうなるよね?というのがひとつ。

そしてこちらが釣り方を教えてその通りするよりも、話している内に「あれ?もしかしたらこれが問題かな?」とか「それは試してなかったかも」と自分で気付く方が絶対に効果があります。(白目比)

それくらい人のパワーと言うものはすごいのです。こっちがどれだけ良さげなアドバイスをするよりも、ご自身で話をまとめながらはたと気づいたことの方がその人にとって必要なものなのです。

ちなみに答えを知ってるのにわざと教えないのではありません。心は釣りのように目に見えないので何が問題なのか、どうしたらいいのかはわからないのでこっちは聞くしかないんです。

答えにつながる材料は相談者様本人が持っているはずなので、こちらも答えを探りながら質問をしています。どちらかというと、答えを知っているはずの相談者様が「わざと教えてくれていないのではないか」とこちらが思うほどもどかしい時間でもあります(笑)

ただそれは仕方のないことでもあって。相談者様の心の中に「当たり前」にあるものが実は「特別」なものだったり「原因」だったりすることがあるのですが、相談者様にとっては「当たり前」なので、それがまさか原因だとは思っていないのです。

たとえば「全然魚が釣れないんです!」と言うので、当然市販の釣竿や餌を使って釣っているのだと思いながら話を進めていると、実は相談者様にとっては竿ではなく木の枝で釣るのが当たり前だと思っていたことが判明した場合。現場を周りの人が見れば「いやもう原因それやん」ってなりますけど、相談者様にとっては「当たり前」なので自分では気づきにくいのです。

でも自分の中では「当たり前」なので特に注目していなかったとしても、他人に話すとなると「必要ないだろうけど」「それはどうでもいいだろうけど」と思いながら話すことがあると思います。

それを心理士が指摘することもあれば、自分で話しながら矛盾に気づいたり、状況が整理できたりして、「あ、あとは大丈夫だわ」と自分で修正工夫ができ、それだけで良くなっていく人もいます。


何がなんでも助言しないわけではありません。状況や相談内容によってはこちらが助言をする場合もあります。たとえば「釣れないと子どもが殺されてしまう(どんな状況)」とか、「明日だけでも釣れたらもう一生釣りはしない」という場合であれば、とりあえずその場を乗り切ることができるようなアドバイスや方法を一緒に考えるでしょう。

でもその通りやって上手く行ったとしても「なんで上手く行ったのか?」がわからないと、まだスランプに陥った時に同じような悩みが生じます。

相談者様のお悩みが「そこだけ乗り切ることが必要」なのか「これからも課題になっていくこと」なのかによってカウンセリングの目標や進め方は変わってきます。


カウンセリングは「自分は何もするつもりはないのでなんとかしてください」という場所ではありません。

100%受け身では多分あまり効果がありません。

あなたの困りごとをエスパーで受け取って最善の方法を提示してくれと言われても無理なのです。


ただ「何もするつもりはない」というのは、しっかり家でもやってこい!自分でも考えてこい!という意味ではありません。

「カウンセリングに来てくれた」というのがそもそも「問題解決のために自分でどうにかしようと思った」ということなので、こちらはお手伝いできます。


そしてこう言うと「カウンセリングが上手く進まないのは自分が問題解決に必要な情報を出せていないからだ」と思う人もいるかもしれません。

でもそうではないので。

問題解決に必要なものは、大体心の奥で複雑に絡み合っています。

カウンセリングの中でそれを少しずつ解いていくのも、「自分でなんとかしよう」としていることです。

私たちカウンセラーは、相談者様が楽になるような「自分の生き方」を見つけ出すためのサポートをさせてもらうのです。


「誰かに話して楽になりたい」というのも絡み合っているものをほぐす作業です。まず自分のコンディションが整わないと、気付くもクソもありません。


そして「気付く」ためには自分のありのままの気持ちや考えを出す必要があります。「こう言っておいた方がいいだろう」と思うことを話していても、あまり「気づき」には辿り着けません。

だからこそカウンセリングの最初には「なんでも話していいのです」「守秘義務がありますので」と伝えて、相談者様の言うことを否定することなく聞きながら、相談者様が加工しなくても思いの丈を話せるような空間にしていきます。


カウンセリングの目的は「自己成長を促す」という言い方をすることもあります。

それは「こうすれば成長するよ!」ということを心理士が教えるのではありません。

ご自分でご自分の悩みについて考える時間を作り、なんらかの気づきを経て問題を乗り越えた、もしくは乗り越えた後になんらかの気づきを経た、という体験をしてもらうことそのものが「自己成長」であり、カウンセリングをする一番の目的かなと私は思います。


あーやっぱり長い。これ短編集ちゃうやんね。ごめんなさいね。

次こそがんばります。


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