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東京鬼リピうまい店 vol.1 快不快のせめぎ合い「馬賊」

かつて編集の先輩からレストラン紹介の記事では「うまい」「おいしい」といった個人的な感想を書かないよう厳しく指導された。
しかし、これはわたしの私的な日記なので、言葉使いのいい加減さはどうかご勘弁いただきたい。

かわりにといってはなんだが、このシリーズでは、実際にわたしが気に入って鬼リピしている、または鬼リピしたいと思うお気に入りのお店だけを紹介しようと思う。

芸能人ファンも多い「馬賊」

浅草・雷門通りの浅草一丁目交差点から駒形方面へ向かい、徒歩約5分にあるラーメン屋「馬賊」。店内にはサイン色紙がずらっと並ぶ、芸能人のファンも多い言わずと知れた人気店である。
マツコデラックスがおすすめしたことでも有名なようだ。

ハッと目を引く中華な店構え

まず、何が良いかと言えば、店名が良い。
わたしは、ラーメン屋ならば、少しとっつきにくいくらいの名前の方が、店に譲れないこだわりがあるんじゃないかと勝手に勘繰って、それだけでうまそうに思えるのだ。
何それと言われるかもしれないが、仮に、海にちなんだ名称をラーメン屋の店名とするなら、「ホワイトヘブンビーチ」より「巌門」の方がおいしそうに感じないだろうか。

また、盗賊でも海賊でも山賊でもなく、「馬賊」なのが良い。
荒くれ者のイメージは持ちつつも、前者3つより極悪感が薄いのだ。
「馬賊」か…悪そうだけど、具体的活動はよく分からんな…という具合で、悪カッコ良さだけが心に残るのである。

快不快のせめぎ合いですする手打ち麺

そろそろ食べ物の話をしよう。
かつて浅草橋で働いていた時に訪れて以来、時たま無性に食べたくなるのが、ここ馬賊の坦々つけ麺である。

2か月に1回食べずにはいられない中毒症状あり

麺はその場で打つ自家製麺だ。

満席の店内で見ず知らずの客と肩を寄せ合って麺をすすっていると、突然「ダーーンッ」という爆音が聞こえてくる。
初めて来た客は、何ごとかと腰を抜かすことだろう。
店舗が小さいため、麺打ちの音が客席に丸聞こえなのだ。
しかも、一回や二回ではなく、長々と何度も「ダーーンッ」が繰り返されるので、客たちは食べている間、とても心中穏やかではいられない。

おそらくは皆(うるさい…)と思いつつ、その対価としてこんなにうまい麺が食べられているのだという事実に脳内論議を繰り返し、やがては店に対して深い感謝の念を抱き、結果、文句を言う者が誰一人いないという構図なのだと思う。
この音はまさしく、「打ちたて茹でたてをお客さんに」という店主の心意気なのだ。
よって、どんなに不快な大きい音であっても、馬賊にはそれに勝るこだわりと快(喜び)があり、客たちはただMに徹して黙々と麺をすするのである。

そして、この渾身の「ダーーンッ」によって産み出された麺こそが、モッチモチでコシがあり、絶品なのだ。

麺の表面はなめらかで平打ちに近く、食感だけで言うなら讃岐うどんに似ているかもしれない。
ただ、讃岐うどんよりはモチモチ感が強く、つけ麺に使用する麺としては、極めて理想的な食感だ。

誰にも見せられない食べ姿

馬賊の麺が素晴らしい麺であることに間違いないのだが、ひとつだけ注意が必要なのは、1本1本が異常に長いことである。

終わりの見えない長い麺

麺をタレにつけて口に含もうとしても、🚄こまち(またはのぞみ)で、現在位置3号車から16号車の指定席を目指すかのごとく、一向に終わりが見えない。

そのため、麺を乗せたざるのすぐ脇につけダレを置き、つけダレの延長線上に自分の顔をセットして口に運ぶという、人には決して見られたくない、ベルトコンベア式の食べ方を採用する必要がある。 

友人から送られてきた、すくう量を見誤った失敗例

また、欲張って一度にすくう量を見誤ると、このようにぐちゃぐちゃになってしまうため、必ず控えめに適量を取るようにしよう。

つけダレはゴマの風味豊かで甘じょっぱく、辛味はほとんどなし。
タレの中にはチャーシューを粉砕したものが入っていて、味わいにコクと厚みがあり、太麺との相性がこの上なく良い。

麺打ちの爆音を恐れぬ強靭なハートを持ち、終わりの見えない極長麺と格闘する覚悟がある、もちもちの太麺好きはぜひお試しあれ🍜

馬賊浅草店
東京都台東区雷門2-7-6 豊田ビル 1F
営業時間 11:15 - 20:30 予約不可

つづく

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