🇨🇳#26 海南島・海口でビーチボーイズに出会う
わたしは、人から不意に声をかけられるのが苦手だ。
道を聞かれたらなるべく教えてあげたいとは思うのだが、勧誘かなんかの場合、どうやって対応したら失礼なく断れるか悩んでしまう。
だから、少しでも誰かが声をかけそうな素振りをしたら、気づかないふりをして高速で立ち去るようにしている。
この人見知り具合でデパートの洋服屋を訪れると、店員さんに声をかけられるのが怖いので、商品を吟味することなく高速で店の中をぐるぐると移動し、結局何も買わないで出てしまう。
自分でも一体何がしたくてデパートへ行ったのかわからない。
しかし中国にいる時は、明らかな客引き以外には基本対応するようにしている。
話を聞いてやっぱり勧誘だったり、面倒くさいことになった場合、「わたしは外国人だから分からない」といえば、みんな諦めて去っていくからだ。
それまでまあまあ流暢な中国語で話していたとしても、途端に話せない外国人キャラになる違和感はさておき。
前置きが長くなったが、今日は海南島のビーチでメンズ二人に声をかけられた、いつも通りのしょーもない話である。
成都で前歯を折り、麗江で殺傷事件現場から逃げ出したわたしは、広西チワン族自治区・南寧を経由して、中国のハワイと呼ばれる海南島にやって来た。
気温36℃。
副交感神経がオーバーヒートしている。
がんばれわたしの神経、がんばれわたしの辛うじてくっ付いてる前歯。
騎楼老街を歩く
ヨーロッパの植民地が活発だった頃、インド、マレー半島などではヨーロッパ建築の建物が急増した。
海南島はそれらの国々とも近く、ここ海口は中国と諸外国との重要な貿易港だったため、このようなヨーロッパ建築が盛んに建てられたそうだ。
ちなみにこのエリア、地元の男性は、半分以上が半裸である。
寝ぼけてか故意にかパンツのまま家から出てきてしまったような人もいる。
完全には観光地化されていなくて、地元の人の普通の暮らしが垣間見れるのが楽しい。
西秀ビーチに到着
相変わらず固形物には恐怖心があるので、ヤシの実を10元(200円)で買って飲んだ。
上海に着く頃、わたしはやつれきっているだろう。
ビーチでは真っ黒に焼けたサーファーが、腕立て伏せをしている。
彼は自分の黒い皮膚と隆起した肩筋肉に相当なこだわりがありそうだ。
すると、その様子を観察していたわたしと目が合い、彼が話しかけてきた。
サーファー「お姉さん、ひとり? 波乗りしない?」
わたし「いや、それは…」
サーファー「ヨットは? 楽しいよ」
わたし「水怖いんで、いいです…」
サーファー「危ないとこはいかないよ。あ、水上バイクもあるよ」
わたし「わたし、海見てるだけなんで…」
サーファー「そんなの寂しいじゃん。じゃあ、あとで興味あったら、あの小屋(マリンスポーツ受付)に来て」
まあ、ナンパではなく、商売だってことは、ヨットあたりから気づいていたけど。
ひとりで海見てたら寂しい?
彼はきっと、中原中也の詩集を見ても、何も感じないのだろう。
わたしは腕立て伏せをしない(できない)し、彼は詩を読まない(と思う)。
みんな違って、それで良い。
少しすると、今度は爽やかなイケメンが声をかけてきた。
ビーチという場所は、人と人の距離が近いらしい。
男性「お姉さん、すみません」
わたし「はい?(お姉さんと呼ばれて地味に喜ぶ)」
中原中也のような大きな瞳の青年だ。
でもわたしは萩原朔太郎の方がタイプだ。
男性「その椰子の実、どこで買えました?」
わたし「あっちの売店です」
男性「ありがとうございます♪」
わたし「ど、どういたしまして…」
男性「おーい、あっちだってよー!」
可愛い女の子が現れ、二人で腕を組んで去っていく。
…なあに、ありふれたよく聞く小噺が自分の身にふりかかったに過ぎない。
ということで、海風に1時間吹かれてホテルに戻ってきた。
オトナのわたしは、折れた前歯がグラグラでも、ビーチで独りぼっちでも、自分で自分を楽しませる方法を知っているのだ。
海南スイーツパーティー🎉🍰🍨
手前のカップは、海南島のご当地スイーツ「清补凉(ひんやり栄養補給)」。
ココナッツミルク味のジュースの中にタピオカやゼリー、果物が入っている。
冷え冷えでおいしい。
それから新鮮なマンゴーを使ったミルクレープ。
海南島全然関係ないけど、ついでにティラミスも食べちゃおう。
わーい!
歯にも優しい♪
もぐもぐ。
…で、食べて三十分で腹痛に…。
(一晩くるしんだ)
ということで。
なんとか前歯を死守し、一晩中腹をくだしたげっそりした顔つきで深圳へと向かう。
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